An American Celebration 第1巻、 CD4
New York Philharmonic Special Edition NYP 9902/9903

CDの4枚目は、ロイ・ハリスの第3交響曲で始まる。バーンスタインの指揮(1957年録音)。冒頭(「悲劇的」)のチェロが、コロンビア盤よりも幾分ゆったりとしたテンポで始まるのにはちょっと驚いたが、少しずつそのテンポは速められていく。オケの鳴らせ方も、後の録音に比べてしたたかであり、スムーズに曲を進めていく。「牧歌的」においても、相対的に地味な響きであり、ビブラフォンの打ち方は、この録音のように、オケのテクスチュアのなかに自然に混ざる方が、好感が持てる。「フーガ--劇的」は、重厚な音楽作りが印象的。ライブらしく多少突っ走りそうなところもあるが、力みすぎすにクライマックスにつながっていく。

この録音を含めて、バーンスタインの3つの録音を、私なりに整理してみると、やや荒削りながらも鮮やかで若々しいコロンビア盤、バーンスタイン節をより前面にだしたDG盤、真摯で味わいの深いNYP盤といったとこだろうか。あまりしつこくなく、肩の力が抜けているという点で、このNYP盤は意外な発見であった。

次はジョージ・セル指揮による、バーバーの<エッセイ第1番>(1950年録音)。冒頭チリチリというノイズが若干入るところもあり、全般的に音質はあまり良くない。しかしセルらしいタイトなオーケストラのコントロールは、やはり好感がもてる。バランスがよくまとめられており、同じ作曲家によるピアノ協奏曲でもすばらしいサポートをしていたのを思い出した(このコロンビアLPも、早くCDにしてくれたら、どんなにうれしいことだろう)。

バーナード・ハーマン作曲の<悪魔とダニエル・ウェブスター>組曲が続く(ストコフスキー指揮、1949年録音)。曲はスティーヴン・ヴィンセント・ベネットによる、同名の映画の音楽からとられたもの。ニュー・ハンプシャーの民謡がこの組曲を通して使われていると解説にはあるが、映画を観たほうが、そういった面白味が分かるのかもしれない、というのがとりあえずの感想である。

ストコフスキーは、大胆でメリハリのある音楽作りをする。ある時にはしなやかに弦楽器が旋律を奏で、ある時にはブラスがスピード感を持って登場する。

次は戦前のクラシック作曲家の中で、黒人代表ともいえる、ウィリアム・グラント・スティルの<古き良きカリフォルニア>(モントゥー指揮。1944年録音)。おそらく荒涼とした西部のフロンティアを描いたものなのだろう。トムトム・リズムを使用した「インディアン音楽」で始まり、スペインの入植者が登場、祭りとなる(マリアッチ風のステレオタイプ)。やがてイギリス系アメリカ人と闘いがはじまり、最後は全ての人種がるつぼの中で平和に暮らすという、白人中心的歴史物語に収まる。

スティルは、クラシックの作曲家であること以前に、ポール・ホワイトマン楽団やW. C. ハンディーらとも共に仕事をし、アレンジャーとしても腕があった。この標題音楽も、管弦楽の色彩豊かさや、鳴らせ方のうまさに感心させられる。一方物語も分かりやすく、一般受けもいいだろう。

モントゥーの鳴らせ方は、作品の性質からして、やや地味にも思えるが、音の立ち上がりはよく、劇的なフィナーレは(トランペットのピッチが気になったが)きっちりと締めくくられている。

次は、ハンソンの作品としては二つ目になるフルート・ハープ独奏と弦楽合奏のための<セレナーデ>で、これもストコフスキー指揮(1949年録音)。

窓の中の恋人に捧げる歌というよりは、妖精が空に楽しく舞うといった趣の作品で、想像力豊かな夜を過ごすのに向いた音楽といえそうだ。ハープはそれほど前に出てこないが、フルート・ソロを、うまくサポートし、ヴィルトーゾくささが出てこない。粋な仕上がりである。ただダイナミクスに、もっと変化が付けられたら、一時の物語にも、さりげないアクセントがついたかもしれない。

最後は、数少ないステレオ録音。1976年収録のコープランド、<リンカーンの肖像>。指揮はバーンスタイン。これまでよりも、オケの響きがずっとオープンになった印象をうけるし、オーケストラ団員の自発性も増している。これは、引き出し手としてのバーンスタインのうまさではあるのだろう。ナレーターが入るまでの音楽的ドラマはもう少し誇張されてもいいと思うのだが、これはクライマックスを計算してのことだろうか。PAを使ったナレーターは、演説調ではなく、ソフトな語り口。やや内省的すぎるようにも感じるが、しっとりとした情感が、心にじんとくるという人もいるかもしれない。解説の写真を見る限り、ナレーターはセリフを暗記しているようだが、音楽の流れもきちんと把握しているようだった。

(99.12.8.追記)何度かこの録音を聴き、他のものとも比較して、「ナレーターが入るまでの音楽的ドラマ」について再考した。結局は、これも一つのやり方であり、大げさにならず自然に進んでいく良さがあると思った。またその中でダイナミックに展開し、中間部などは、その荒々しい曲調に合っていると思う。ナレーション(ウィリアム・ワーフィールド)についても、おとなしく話しているようだが、要所要所で激情するところがあり、実はうまく計算されたものではないかと思うようになった(コープランド自演盤のヘンリー・フォンダやアブラヴァネル盤のチャールトン・ヘストンはさらに平板だ。特に前者はあえて無感動な表現に徹しているようにさえ聞こえる)。歌手ということもあって(彼はコープランドの<アメリカの古い歌>で名唱を聴かせている)、音楽に対しても、とても敏感に反応している。なお、古い録音(クーゼヴィツキー盤やスタインバーグ盤など)では、かなりどなったような感じになっている。

総合的にいってこの演奏は、当曲のベストの内に入るだろう。

また、これはアメリカ国外での唯一の録音である(ロンドンのロイヤル・アルバート・ホール)。NYPがヨーロッパ・ツアーした時の録音であり、バーンスタインは、このツアーに先立ち、フランスではフランス語で、オーストリアではドイツ語でナレーションをいれることを提唱したという。



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