最近見たもの、聴いたもの (64)


2004年1月10日アップロード


03.12.16.

三井先生の新著
金沢大学の三井徹先生に会いにいく。カーナビとETCを使ったドライブ は快適。富山から県外へのドライブがそもそも初めてだったが、全く問題なく金沢大学 に着くことができた。

三井先生の研究室では、朝ちょうど届いたとされる、新著『新着洋書紹介:ポピュラー音楽文献5000冊』(写真)を購入。主に『ミュージック・マガジン』 に書かれてい た書評を集大成したもので、英語による音楽文献目録となる貴重なものである。

ご専門がポピュラー音楽ということもあって、ジャズやロックに関する文献が多いが、広くポピュラー文化や音楽学、社会学など、学問研究に役立つと思われる 書籍・雑誌・学術論文が広く扱われており、私が自らの研究の視野を広めるのにも有効だ。

せっかくなので、こちらからは、私が7月に提出した博士論文を差し上げた。目次・要旨・文献目録の部分については、丁寧に見ていただき、その内容をこちら からご紹介した り、三井先生から有益なレスポンスもいただいた。また執筆のために集めた文献資料がアメリカに滞在しないと集められないものであることを認知していただい たのは、まことに光栄である。

そのほか、アメリカで購入したMichael Campbell and James Brody著の『Rock and Roll: An Introduction』というシャーマー・ブックスから出されたロック史の教科書や、フロリダ州立大学で「マイノリティーの音楽」のための授 業用資料として製本 された論文集を持ち込む。前者については、2・30年前には全く考えられないものだと感心されていた。また、こういう教科書の情報は日本にほとんど入って こないので、参考になるという。後者に関しては、この資料集の冒頭に付いていた音楽用語集に注目されていた。この用語集は授業を担当したMichael B. Bakanという先生によるオリジナル。三井先生はその中から、ポピュラー音楽を分析するパラメーターには何があるのかについて、特に関心をお持ちのよう だった。

「世界音楽」と「民族音楽学」という用語の問題にも若干触れることになった。彼が執筆をした共著の『はじめての世界音楽』(音楽之友社)というタイトルは 「民族音楽」とい う用語そのものに疑問を呈するものだ。そういえば、藤井知昭さんのは『民族音楽概論』(東京書籍)とかいったっけ。日本語の問題は、三井先生がご指摘にな るように「民族・音楽学」であるべきものが「民族音楽・学」となりがちであるということだろう。ご存じの通り「民族音楽学」に相当する英語は 「ethnomusicology」。これは、世界中のあらゆる音楽を人類学的視点で研究する学問。アメリカはとくにアラン・メリアムの影響が強いので (マントル・フッドやブルーノ・ネトルなどもそうなのかな?)、特にそうなのだろう。日本で80年代に流行った「ethnic music」という言葉は学問上、使われることがない。「World music」は「レパートリー」だということは私も教わったし、おそらくその訳語として「世界音楽」という言葉を定着させたいということなのだろう。

ただアメリカの現状をいえば、ジョセフ・カーマンが『Contemplating Music』で指摘しているように、historical musicologyは西洋芸術音楽(つまりクラシック)、ethnomusicologyはそれ以外のすべての音楽が研究対象になっている。やっぱり ethnomusic-ology??? もっともethnoはポピュラー音楽もやってるし。

不思議なもので、日本人の私に気さくに声をかけてきたのはethnoの学生だった。やっぱり、自然といろんな文化や価値観に広く関心が出てくるんだろうな あ。もっともhistoricalの学生の視野が狭いとはいえないけれど。彼らの多くもethnomusicologyやworld musicについては概略的なことをやってくる訳だし(博士課程に入るときの試験科目の一つがworld music)。

ところで先日若林忠宏著の『もっと知りたい世界の民族音楽』(東京堂出版)を経文堂新庄店で購入した。とても読みやすい本だ。ここでも「民族音楽」「民俗 音楽」 の議論がなされている(両方とも「ミンゾクオンガク」と読むのだから余計ややこしい)。用語一つとっても、いろんな考え方があるものだ。「民族」の枠組み を超えて広く存在する音楽はあるし、「民俗」は「folk」であ り、この社会階層以外から生み出されたものはどうなるのかという問題はある。私個人は「民族音楽」という用語はそれほど問題ないようにおもうけれど、 niftyでは「諸民族の音楽」という用語を提唱された方がいらっしゃった。

その他、日本の博士課程のシステム、タラハッシー在住のご友人(Dr. HoとLucyさん)の話題などで3時間があっという間だった。

2時から5時まで三井先生とご一緒させていただいたあと、ラッシュアワーの中、1時間かけて、最近郊外に引っ越した山畜を訪れる。ぱっと見た感じはレンタルビデオ屋さんみたい。右側に クラシック専門のお店があるほか、真ん中にはその他オール・ジャンルのお店。左側にはDVD・ビデオ専門の店舗と、3つもあるようだ。

山畜は香林坊にお店があった時代には海賊 盤をたくさん置いていたように記憶しているが、新しい店舗には全くなかった。それでもここは、おそらく北陸随一の品揃え。国内盤をメインにしながらも、輸 入盤も、新譜を 中心にそれなりに置いてある。安いボックスものが多いのは以前と同じ。

03.1.10.

アナ ログを語る会(西砺波郡福光町・ラモヴェール)会長の中山佳明さんから、うれしいお知らせ。最近見たもの、聴いたもの(62)で紹介した北朝鮮 のレコードのハングル文字を訳した方がおられるのだと言う。レコードのレーベル面をプリントアウトした紙の下方に、それぞれの曲のタイトルと演奏 団体が書 いてあるのだ。訳して下さったのは、以前この「アナログを語る会」に出席なさっていて、現在は韓国に在住の田矢守近さんという方だそうだ。非常にうれし い。田矢さん、ありがとうございます!

せっかくなので、その内容をここにお知らせしておきたい。

まず
A面の タイトルは以下の通り。なお名前についてはハングル文字をそのままお書きになっていた ので、ここではその部分を [ハングルのまま]と記しておく。

                朝鮮レコード

吹奏楽

1. 《受領しないで命令だけ下しなさい》作曲 [ハングルのまま]
2. 《包囲全滅の歌》作曲 [ハングルのまま]
3. 《海岸砲兵の歌》作曲 [ハングルのまま]
          演奏 1. 2. 3. 民族宝位性軍楽隊
4. 《敵の胸倉 チャングチャム拍子》
          作曲 [ハングルのまま]
          演奏 社会安全性軍楽団

                朝鮮・平壌

そしてB 面の内容は以下の通り。

                朝鮮レコード

吹奏楽

1. 《我々は、修羅の銀戦士だ》作曲 [ハングルのまま]
2. 《社会主義建設者円舞曲》作曲 [ハングルのまま]
3. 《千里馬 青年行進曲》作曲 [ハングルのまま]
         
演 奏 1. 2. 3. 民族宝位性軍楽隊
4. 《我々は青年突撃隊》作曲 [ハングルのまま]
          演奏 社会安全性軍楽団

                朝鮮・平壌

筆者がこの10インチLPを購入したのは、おそらく80年代の終わりから90年代の初頭あたり。新潟で学部生をやっていたころだったと思う。かつてお茶の 水のアパートの一室で細々とやっていたレコード店の新春福袋(10枚1000円)の中に入っていた。これらのタイトルを見ながら改めてこのレコードをかけ ると、もしかして曲の印象がガラっと変わるのだろうか。ノーテンキな行進曲とストレートに受け止められなくなるのだろうか?

一覧に戻る
メインのページに戻る