2001.10.24.
次に目を引いたのは、歴史的な蓄音機の数々。筒型レコードの中には、なんとエジソンの声を収録したものもあり、その内容が翻訳とともに展示してあった。このロール型のレコードは音質も、今日のスタンダードからすれば貧しいし、録音時間も3分あまりと極めて短いのだが、やはり古い録音ゆえに、歴史を持った貴重なものが多いということになるのだろう。左の写真は、そんな藤原さんの、ロール型のレコード・コレクションの陳列棚。 |
メディアとして珍しいと思ったのは、映画のフィルムをテープのようにして使ったこちらのもの。詳しいことは知らないのだが、このメディアはかなり珍しいのだそうで、音質が悪かったために、日本では、落語やお囃しの録音などに使われたのだという。藤原さんは貴重な音源もいくつか所有しておられて感心した。左右の写真は、レコードプレーヤーと一体になったマルチメディア的なものだが、ポータブルでこの種のテープのみを使う機械もあるそうで、その現存数はかなり少ないそうだ(もちろん、その1台は藤原さん所有)。お持ちの方は大切に保存していただきたいということなのだろう。 |
今回の訪問で一番音楽的に感銘を受けたのが、こちらの1928年のヴィクトローラ。アメリカの経済が絶好調だったころの素晴らしい蓄音機で、電気的な増幅がまったくなされていないのに、針で拾われた音を、箱の構造を工夫して効果的に共鳴させる。こんな音を聞かされると、今日のオーディオ装置の音響の素晴らしさというのは、ほとんど忘れてもいいのではないかとさえ思った。
いや、それはもちろんデジタル録音やステレオの音場を否定しようというものではないけれど、こういった豊かに響く「楽器」としてのオーディオ装置がかつて存在していたことが分かって、本当にうれしいのだ。もちろんリビングルームに置く家具としても美しく、音楽が家族で暖かく共有されていた時代のアメリカを思い起こさせるのだった。 本当にその音に感動してしまったので、私はついつい自分の驚きを言葉で次々と表してしまったのだが、藤原さんも、本当にこういう装置で楽しまれる音楽がお好きだそうで、ペレス・プラード楽団をはじめ、数枚のレコードを聴かせていただいた。良い装置できくと、SPレコードの録音の善し悪しも、はっきりと違いとして出てくるものだ。 こういう素晴らしい音を再体験するため、また、見切れなかった他の資料を見るため、このヴォイス・ミュージアムは改めて訪れてみたい場所だ。富山にもこんなところがあるんだなあ、と感慨深くして帰宅。場所を紹介し、連れていってくれた村山さんに、心から感謝。
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