音楽雑記帳(31)



ヴォイス・ミュージアム(富山県小矢部市)訪問記(1)

2001.9.8.、01.10.24.追加

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8月の第1週、富山では暑い日が続いていたが、相互リンクさせていただいている村山一雄さんのご紹介により、小矢部市のヴォイス・ミュージアムを訪問することとなった。ヴォイス・ミュージアムは、藤原幸雄さんという方が、お仕事の傍集められた音を鳴らす装置の膨大なコレクションを一般に公開しているもので、そのアメリカから持ち込まれた蓄音機やラジオ、テープレコーダーや映写機が、牛舎を改築して作られたという展示スペースに所狭しと並べられている。

近年高級な蓄音機を並べた公共の博物館が金沢市に作られ、ニュースでも紹介されているために、そちらは広く知られている。しかしこの小矢部のコレクションは、13年前に出来たにもかかわらず、あまり知られていないようで、「穴場」と言える。また、藤原さんご自身による手入れも抜群で、コレクションのほとんどは実際に鳴らすことができる。そして村山さんによると、所蔵資料の多彩さでは、こちらのミュージアムの方が圧倒的なのだそうだ。

今回はそんなヴォイス・ミュージアムに陳列された歴史的遺産のいくつかを、写真を使って紹介させていただきたい。


まずはテープレコーダーから。オープンリールのテープレコーダーも、現在では一部のファンの宝となりつつあるが、左にあるのは、まだ磁気による記憶装置がテープではなく、ワイヤー(細い綱)のようなものでなされていたもの。ワイヤーレコーダーというのだそうだ。このワイヤーに磁気が塗ってあるために録音ができるそうなのだが、後にソニーが紙を使ってテープ上の録音テープを開発する、その前のもののようであり、とても興味深く拝見させていただいた。

材質的にはワイヤーというのは丈夫そうで、きゃしゃなカセットテープに比べると、力強い印象もあるのだが、やはり音質に問題があったのだろうか? この機械による録音を聴いたのかどうか、ちょっと記憶に残っていない。

なお、音楽之友社刊の『作曲の20世紀I』の229ページには、おそらくこのワイヤーレコーダーと同型の機械を使ってハンガリー民謡を採集するコダーイの写真がある。
 
 


テープレコーダーの形態として面白かったのは、右の写真のもの。レコードをまわすモーターをそのまま使うというのは、発想として自然だと思うのだが、ターンテーブルの上に、こういう風にリールテープを置くというのは、ひどくストレートで、ある意味グロテスクでさえある。何となく近未来的というか、科学に対する当時の人の嗜好を見るようで面白い。
 

次は最も古いラジオ受信機の一つ。この頃のラジオは、2つのツマミを上手に組み合わせて合わせないと、自分の聴きたい放送局が受信できないのだそうだ。藤原さんは巧みに2つのツマミを合わせて、NHK第1放送を聞かせてくれた。

こういう装置を見ながら、この装置の作られた時代、ラジオというのは、家族みんなでゆったりとニュースやエンタテーメントを楽しむというのではなく、テクノロジー開発の最先端であり、実験室にあるシロモノだったのだという印象を強く持った。

一方で、それはまだ実験段階であり、商業主義にまみれた大量生産とは違った、素朴で個人的な楽しみとしての実験だったのではないかという想像もしてみた。
 
 
 
 

→この項つづく

 



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