ファーディ・グローフェの音楽


グラン ド・キャニオン組曲

ファーディ・グローフェの現代アメリカ音楽
ヤン・シュトゥーレン指揮ボー・ハンクス
蘭Basta 30-9083-2
《夜のブロードウェイ》、《3つのブルーの影》、《メトロポリス》、《ミシシッピー組曲》

グローフェ作品の、オリジナル編成による演奏。おなじみの《ミシシッピー組曲》(下記参照)も、緩徐楽章はすっきりと透明な響きで、その他の楽章は、独特の荒削りの音で(演奏は、かなりこなれたものだが)、楽しく聴ける。筆者はやはり、サキソフォンやバンジョーの響きが好きだ。また、《マーディ・グラ》の最後にドラが一発「シャ〜ン」と入るのも、きっとオリジナルの楽譜にあるのだろう。

また、このCDには、他では聴けない作品も多く入っている。《夜のブロードウェイ》、《3つのブルーの影》、《メトロポリス》(ヴォーカル・アンサンブルあり)など、「自然」路線とは違った、ジャズの趣きたっぷりの作品だ。グローフェは「シンフォニック・ジャズ」のポール・ホワイトマン楽団のアレンジャーだった訳だが、その雰囲気が濃厚に伝わってくる。最後に、オマケとして《グランドキャニオン組曲》の終曲が収録されている。

グローフェを見直すこともできるこのCD、ぜひトライしてほしい。(01.12.5.)

ミシシッピー組曲
レコー ド、CD情報は解説のあとにあります。

<グランドキャニオン組曲>の次によく録音されているグローフェの管弦楽のための組曲。日本では、日本テレビ系のアメリカ横断ウルトラクイズのBGMとして使われていたために、ある世代以上の人間にとっては懐かしい曲である(勝ち抜きクイズなどで、勝者が決まり「○○行決定!!」という瞬間、第2曲の<ハックルベリーフィン>の一部か第4曲の<マーディグラ>の冒頭が流れる。)

もともとは《ミシシッピー:音による旅》と題されていたこの曲は、1925年10月11日、ポール・ホワイトマン楽団によって初演された(なお、この「ミシシッピー」とは州の名前ではなく、ミシシッピー河のこと)。このコンサートでは、レオ・ソワビーの<モノトニー>と、ジョン・アーデン・カーペンターの<ジャズの小品>という2曲も演奏されたそうだが、これらはすぐに忘れ去られてしまったようだ。

作曲者グローフェは、《ミシシッピー組曲》に含まれる各曲について、次のように述べている。

多彩な楽章につけられたタイトルがすべてを物語る。<水の神>は、河の上流を描いてい るし、 <ジハックルベリー・フィン>は、マーク・トウェインの有名な話に出てくるおちゃめな少年の出没する場所を表現している。そして<ジいにしえのクリオールの日々>は、黒人のおかあさんの子守歌・ゆりかご歌だ。クライマックスの<マーディ・グラ>は、音の旅の終わりに当たる。このニューオーリンズの祭の活気を描くことによって、この偉大なる河のいきいきとした描写を完結させるのだ。
なお、この曲のニューヨーク初演は、1925年12月29日、やはりポール・ホワイトマンによってなされたが、これは「現代音楽の実験」というコンサートシリーズの第2回目だった。このコンサートシリーズ、第1回では、ガーシュインの<ラプソディー・イン・ブルー>が初演されたモニュメンタルなものだったのだが、第2回でもホワイトマンはガーシュインに新曲を提供してもらいたかったらしい。しかしガーシュインは特にホワイトマンのために作曲する意思もなかったらしく、かわりにホワイトマンはミュージカル『ブルーマンデー』を再演することにした。このときグローフェは原曲をいくらかアレンジし、タイトルも『135番街』とされた。

ところで、当の<ミシシッピー組曲>自体はアメリカ的題材に根ざした気さくな描写音楽であり、ポップスコンサート向けの楽しい作品だ。ポール・ホワイトマンのキャラクターをうまく使った名アレンジャーならではの、うまみがある。(2015.2.13.改訂)
フェリックス・スラトキン指揮ハリウッド・ボウル交響楽団
米Angel 7243 5 66387 2 3
Naxos Music Library→ http://ml.naxos.jp/work/1350169
グローフェ作品集 (F. スラトキン)
大オーケストラによるグローフェ作品の演奏は重い演奏になりがちなのだが、この比較的小さな編成(に聴こえる)のオーケストラは、肩の力が抜けており、楽しく聴き通せる。おそらく上記『アメリカ横断ウルトラクイズ』で使用されたのも、この音源だろう。

カップリングとして《グランドキャニオン組曲》(おなじみのオーケストラ版)、《死の谷組曲》、そしてグローフェ指揮による《グランドキャニオン組曲》の終曲が収録されている。なお、フェリックス・スラトキンはレナード・スラトキンの父である。(1998.7.23.、98.12.16.、01.12.5.改訂、2015.2.13.改訂+NMLリンク追加)

大西洋横断
アントン・ドリン、エセル・ル・ヴェーン(ナレーター)
ファーディ・グローフェ指揮新交響楽団
米London LLP 277(LP)
Naxos Music Library→ http://ml.naxos.jp/work/202814
大西洋横断
《大西洋横断》というタイトルから、てっきり飛行機か船による冒険物語かと思っていたが(そういえば、ヒンデミットが《リンドバーグの飛行》という曲を書いてたっけ)、大ハズレ。ニューヨーク生まれの男性がパリとロンドンを訪れ、ピカデリー通りでフィラデルフィア出身の女性に出会い、素敵なヨーロッパ旅行をするという、他愛もないラジオ・ドラマ風な音楽物語(クレジットされていないが、ナレータの他にも声優が入っている。フランス語も聞こえてくる)。でもグローフェは、ここでムードいっぱいの音楽を書いており、作品自体は、合唱も入る、なかなかの力作なのかもしれない。おそらくゲイジュツ音楽としては一流とは言えないだろうが、そういう文脈で取らない方がいいのだろう。いずれにせよ、時代がかった響きであり、フォーマットであると思う。(2000.8.15.、01.12.5.、01.12.6.改訂、2015.2.13.リンク追加)


航空組曲
ヤン・シュトゥーレン指揮プロムナード・オーケストラ
米CBS Masterworks M39293(LP)
グローフェ 航空組曲
シュトーレン指揮によるグローフェの珍しい《航空組曲》。ダブルジャケットの内側には解説は全くないが、スポンサーとなった(?)飛行機会社の旅客機の写真が並べられている。カップリングは《ミシシッピー組曲》と《ハドソン河組曲》。(03.12.28.)
ファーディ・グローフェ指揮ハリウッド・スタジオ交響楽団
Naxos Classical Archives 9.80172
Naxos Music Library→http://ml.naxos.jp/work/201277
グローフェ 太平洋、航空
1946年、ハリウッドでの録音ということだそうだ。シュトーレン盤のとは楽譜が違う初期の楽譜を使っているようで、各曲のタイトルも曲そのものも若干違っている (2015.2.13.) 。





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