ノーマン・デロ=ジョイオ(1913-)は、ジュリアード、そしてイェー ル大学で作曲を学び、特にヒンデミットのもとで学んだことが、彼の 音楽に決定的な影響を与えたと自身が述べています。作曲での受賞 歴・奨学金等の実績も非常に多く、ニューヨーク批評家協会賞を2度 受け、1957年には弦楽のための「Meditation on Ecclesiastes」でピ ューリッツアー賞を受賞しています。特に舞台音楽に優れ、歌劇やバ レエ音楽が高く評価されています。作風は、極めて保守的ながら(ヒ ンデミットは彼に「流行に惑わされずに、ありのままに作曲するよう に。」と指示していたようです。彼の音楽はイタリアオペラ、教会音 楽、ジャズに根元があります。)、師匠ゆずりの精緻な対位法、それ に魅力的なメロディ(イタリア系の人に多いんですが)を特長として います。
さて、デロ=ジョイオは、吹奏楽の曲は50歳近くになって、初めて 「中世の旋律による変奏曲」を書いたのですが、その後は続々と書く ようになり、JWPEPPER調べると、14曲(実際にはまだある)もの作品 があることがわかります。(まだ存命なので、もっと増える可能性も あります)そのなかで、最も人気が高いのが標題の作品で、米国では 定番の1つとして定着し、最近は音源も増えてきたようです。そのわ りに、日本での知名度は今一つのような気もしますので、あえて取り 上げてみました。
彼は、映画音楽だけでなく、テレビ番組の音楽を手がけることも多 く、そういう音楽を元にして、交響組曲や交響詩(Tone Poem)などを 編むことも多いようです(例えば、「Air Power」や「From Every Horizon」など)。そんな中で、1964年、NBCテレビのドキュメンタリ ー番組「ザ・ルーブル」の音楽が非常にすばらしく、エミー賞(映画 のアカデミー賞(オスカー)のTV版と考えて下さい。)を受賞してい ます。もともとは弦楽、金管、オーボエ、オルガンという編成の音楽 だったのですが、それを、吹奏楽のための組曲に編曲したのが標題の 作品で、1966/3/13にBaldwin Wallace S.B./作曲者自身の指揮で初 演されています。
曲は「The Portals」「Children's Gallery」「The Kings of France」「The Nativity Painting」「Finale」の5曲からなり、演奏 時間約13分、それぞれは古い歌曲(Airs)やキャロルに基づいていま す。第1曲は、チャイムを伴う荘厳な音楽、第2曲はお馴染みのキャ ロルによる楽しい音楽(この曲だけは、オリジナルスコアから改編し たのではなく、新しく作曲されました)、第3曲は金管群のサウンド が素敵な格調高い音楽、第4曲は彼の「中世の主題による...」でも主 題になっている「イン・デュルチ・ジュビロ」による暖かい音楽、第 5曲は壮麗な終曲(この曲には、彼がヒンデミットの追悼として書い た、オルガンと管弦楽のための「Antiphonal Fantasy on a theme of Vincenzo Albrici」からの引用がみられます。)。全体に、彼の古典へ の深い愛情を感じます。Margolisの「テレプシコーレ」のような派手 さはないのですが、そのぶん味わいが深く、やはりエミー賞だけの価 値はあるのではないかと思っています。クリスマスコンサート等のフ ィナーレにも使える、グレード4(Instrumentalistより)の作品で す。なお米国の(吹奏楽)雑誌「Instrumentalist」の1998,FebにJohn Wojcik氏による7ページにわたるこの作品の極めて詳細な楽曲分析が出 ています。簡単には見れない雑誌かもしれませんが、ご参考までに。 余計な補足かもしれませんが、今後の「(自身の)〜から編曲され た」「(自身で)〜へ編曲した」「(自作の)〜から引用された」等 という情報は、その裏に「作曲者が自信をもっているところである」 (単に、横着してるだけかもしれませんが....(^_^;;)か、少なくと も「作曲者自身がそれなりに満足しているところである」という意味 があると解釈して下さい。
私は、初めてこの曲を聴いたときは、演奏が下手だったこともあっ て、まあ平凡な編曲モノかと思っていたのですが、米某軍楽隊の演奏 を聴いてから、もう「常に手の届くところへ置いておきたい曲」にな ってしまいました(第3曲が特に好きなんだあ)。爾来、15年くらい 頻繁に聴いてきてるわけですが、同じ様な傾向のG. ジェイコブの「ウ ィリアム・バード組曲」がすぐ飽きたのに対し、この曲は不思議と飽 きが来ません。私の印象としては、木管群を抑え気味に演奏する方が 良いと思います(これは、上述のオリジナルの編成に起因しているの かもしれません)。最近のCDの録音は聴いていないのですが、どれか お薦めはありますか。
デロ=ジョイオは、「From Every Horizon--Tone poem」「Songs of Abelard」「Satiric Dances」等まだまだ紹介したいものが沢山あるの で(国内盤がある「中世の主題による変奏曲」「ハイドンの主題によ る幻想曲」はパスします)今後も続ける予定です。(99.1.4.アップロード)