ノーマン・デロ=ジョイオ (1913-2008) の音楽

空軍の力(交響組曲)
ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団
Albany TROY 250
Naxos Music Library→http://ml.naxos.jp/work/607050

このCDの演奏は、組曲の作曲を依頼したオーマンディ自身の指揮ということもあってか、どの曲の演奏にも、作品への共感と真摯な態度が感じ取れる。アメリカの作品が、これだけ恵まれた環境で録音された例がどれくらいあるのだろうか。

テレビ番組の方は、現在ビデオにより入手が可能で、それらを見ると、歴史の物語・映像の展開・音楽の効果がより細密に分かるかもしれない。音楽を聴きながら、崇高なもの、深遠なものを求めるということは、曲の性質上・機能上、それほど望むことはできないかもしれないが、一流の職人作曲家が作ったアメリカの歴史的遺産として鑑賞することはできると思う。

なお、第3楽章には、<日本人の勝利への祈り>というエピソードからの一節がある。

以下、YouTube動画へのリンクを貼っておく (CD発売元のAlbanyのアカウントから) 。なおこの動画は第1楽章<イントロダクション> (メイン・テーマ)と第2楽章<空の任務>(@02:27) のみがアップロードされているようだ。
(97.12.3.、97.12.4、2001.1.20.、2001.3.29.改訂、2015.4.3.NMLへのリンク追加、2019.1.4. YouTube動画リンクの追加)
デヴィド・エイモス指揮クラコー・フィルハーモニー管弦楽団
Koch International Classics 3-7020-2H1

アンサンブルには不安なところもあるが、上記オーマンディの復刻音源が出るまでは、これが唯一聴ける音源だったように記憶している。 (2019.1.4.、2023年4月30日 YouYubeリンクの追加)


管弦楽のためのセレナーデ (1975).
ハンス・スワロフスキー指揮ウイーン交響楽団
米Desto D-413(LP)
Naxos Music Library→http://ml.naxos.jp/work/2452805

ジャケットではDで始まるのはモノラルとある。しかしなぜかレコード盤の方の番号はDC-413となっている。もう一度ジャケットを見ると、ステレオ盤(疑似ステレオ)はDCではなく、DST-6413となっている。あれ? ではLPは、ジャケの情報に従えばステレオ盤ではないということ? でも、なぜ盤本体の番号がDCとなっているのか分からない。要するにミスということか。さすがアメリカのレコード会社(最近はこういうちゃっちいミスは、少なくなった)。

作曲年代を見ると、明確に戦後なのだが、作風はむしろ19世紀後半から20世紀前半のロマン派の流れを組むもの(明確なアメリカニズムはないが)。セレナーデというが、決してしずかに漂うような音楽ではなく、なかなかドラマチックな作品。国民楽派の影響のある管弦楽法も見事だ。ただ決して大げさなところがないところが、セレナーデらしいところなのかもしれない。デロ=ジョイオの作品のなかでも、比較的良く書けていると思う。

なお、この2枚組LPは、メインがホレイショ・パーカー(アイヴズのイエール大学での先生)の《ホラ・ノヴィッシマ(審判の時)》(3面分を占める大作)。ネブラスカの団体がいれたAlbanyのCDをラジオでかけたことがあるが、この録音は古いし、いま一つ盛り上がりにも欠ける。わざわざ探して買うほどのものでもなさそうだ(デロ=ジョイオは、CDになっているのだろうか?)。(2000.7.20.、2015.4.3.NMLへのリンク追加、2019.01.04.訂正、2023年4月30日 YouTubeへのリンク)


ヴァイオリンとピアノのための変奏曲とカプリッチョ
パトリシア・トラヴァース(ヴァイオリン)、ノーマン・デロ=ジョイオ(ピアノ)
米Columbia ML 4845 (LP)

Naxos Music Library→http://ml.naxos.jp/work/1381936

簡素なスタイルで書かれた変奏曲。しかし(作曲者によるオリジナルの)主題の提示はピアノの前奏と無伴奏のヴァイオリンというユニークな構成。変奏のための和声的な枠組みはピアノが行い、ヴァイオリンは寄想曲な性格を出しているようだ。また、変奏も四角四面的ではなく、あちこち自由にたゆたうようであり、そういう面からも「寄想曲的」なのかもしれない。作曲者のデロ=ジョイオは、この作品は「簡素で歌いやすい構想で書かれており、叙情的でもある」とし、「この作品は、テクスチュア的には軽く、和声的には簡素で、形式的にはシンプル(と受け取ってもらえるといいのだが)である」としている。一筋縄に古典的作品として味わえないところもあるが、現代的センスを生かした、しとやかで爽快な作品であるとは思う。(99.7.9.、99.9.11.アップデート、2012.9.12.情報追加、2015.4.3.NMLへのリンク追加)


ハイドンの主題による幻想曲 (Fantasies on a Theme by Haydn)
ローウェル・グレアム (Lowell Graham) 指揮アメリカ空軍ヘリテージ・オブ・アメリカ・バンド (United States Air Force Heritage of America Band)
Klavier KCD-11175 (アルバム『Proclamations』)
Naxos Music Library → http://ml.naxos.jp/work/370765

「幻想曲」というタイトルにすると、ゆっくりとしたテンポで、文字通り幻想的な場面を想像するのだけれど、冒頭からやたら元気がよくてびっくりする。(2019.01.04.)

ドキュメンタリー番組『黄金の牢獄〜ルーヴル美術館』

デロ=ジョイオが音楽を担当したNBCのドキュメンタリー番組『黄金の牢獄〜ルーヴル美術館 (A Golden Prison: The Louvre)』 (1964) の動画。この音楽をもとに、吹奏楽作品《ルーヴルからの風景》が作られたはずだ。(2023年4月29日執筆)


ノーマン・デロ=ジョイオ:《ルーブルからの風景》:リハーサル風景と通し演奏
ケネス・スナップ指揮バールドウィン=ウォーレス大学・カレッジ・シンフォニック・バンド
ノーマン・デロ・ジョイオ (リハーサル・コメント)
Century Records 25856 (10インチ盤)

吹奏楽曲《ルーブルからの風景》は、アメリカのネットワーク・テレビ局NBCが1964年に放送したルーブル美術館を題材にした番組の音楽を演奏会用の組曲にしたものである (上記参照)。バールドウィン=ウォーレス大学バンドとその指揮者ケネス・スナップによって委嘱されたが、レーベル記載の演奏者のクレジットから、この録音は、その委嘱者たち=初演者たちによるものといえそうだ。

10インチなのでリハーサルもそれほど長い間収録されていないが、作曲者の立会いのもとで行われているため、内容そのものは、非常に濃いものになっている。またデロ・ジョイオ自身がコメントをした内容が分かるように最低限のリハーサル演奏が収められている。大学のバンドは技術的には安定しており、とても聴きやすい(ティンパニーは、本番でも、なかなか指示通りに強打できなかったようだが…)。

作品自体は少なくとも本国アメリカでは人気があるのか、それなりに録音もあるが、やはり初演者ということと、作曲者の肉声と、演奏上のアドバイスが収録されているのが貴重といえるだろうか。

なお当方が入手したレコードにジャケットは付いていなかった (2023年4月30日)。


作曲家リストに戻る
メインのページに戻る