ポール・クレストン:交響曲第2番 作品35

クレストンはイタリア人の血を持ち、5歳の時、父親に連れていってもらったシシリアの印象を大事にして育ったという。音楽は小さな時に中古のピアノを無理して買ってもらったのがそもそもの始まりだった。しかし本格的に作曲家を志したのは26歳の時。すでに結婚して5年経っていた。

小さい頃からいろんな本を読み漁るのが好きだったというクレストンだが、作曲に関しても徹底的に本から学んだ。当時入手できる作曲法、和声や対位法、音楽理論など、ニューヨークの図書館にあるものを片っ端から学習したらしい。その他音楽の講演会やコンサートにも積極的に出かけ、マンハッタンの地の利を活かした独学をした。

そのうち友人が、クレストンに作品を出版してみないかと持ちかけた。最初は乗り気がなかったクレストンだが、一気奮闘して<ピアノのための7つのテーゼ>を新音楽出版社に持ち込む。当時この出版社の編集を担当していたのが、あのヘンリー・カウエルだったのだが、カウエルはクレストンの才能を即座に見抜き、作品出版を快く引き受けたという。カウエルは、その後もクレストンの作曲を常に励ましていたらしい。

2楽章形式の第2交響曲は1944年の作品だが、クレストンは同曲を「全ての音楽を代表する2つの基礎--歌と踊り--の賛歌」だとしている。確かに第1楽章にみられる美しく叙情的な旋律は魅力的であり、感情の自然な起伏を大切に、素朴に歌い上げている。おそらくピアノの使用が、ハープでは表現できない、この素朴さにつながっているのだろう。第2楽章は激しいパッセージがレチタティーヴォ風に流れ出す部分と、白熱したダンスの部分で成り立っている。自然に体が乗り出してくるような音楽だ。

クレストンは1970年代の雑誌記事で、近年の作曲家はテクニックの習得に囚われすぎて魂の抜けた作品ばかり作っていると言っているが、アカデミズムと自然に距離を保つことが出来たクレストンならではのこのような発想が、力強い第2交響曲の原動力になっていると思う。


(4)テオドール・クチャール指揮ウクライナ国立交響楽団 Naxos 8.559034

演奏としては「無難」という印象が強いが、一緒に収められた第1交響曲が貴重だし、値段の安いのが魅力であろう。3番には、ミッチェル盤LPとジェラード・シュワーツ盤CD(米デロス)がある。後半の3つの交響曲が録音される計画もあるとのこと。(2000.12.9.)

(3)ピエール・モントゥー指揮ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団
An American Celebration 第1巻、 CD5を参照(2000.12.9.)

(2)ネーメ・ヤルヴィ指揮デトロイト交響楽団 Chandos CHAN 9390
ミッチェル盤ほどの重厚さはないが、ぐいぐいと曲を押し進め、それでいてすっきりとまとめる秀演。録音的にも、ミッチェル盤よりは聴きやすい。カップリングはアイヴスの第2交響曲。(1998.9.3.)
 
(1)ハワード・ミッチェル指揮ナショナル交響楽団 Westminster W-9708(LP)、XWN 18456(LP)

おそらくこの作品の初録音だが、筆者には強烈な印象を残している。モノラル録音で、あまりクリアーな音でもないが、力強さ、響きの厚さなど、効き応え充分の演奏。第1楽章のゆったりと旋律、第2楽章どっしりとした迫力が素晴しい。ぜひCD化して欲しい音源だが、ボストンの中古屋では3度見かけたことがある。なお、後にオレンジ色のジャケットで再発売もされている。カップリングは第3交響曲。(2001.2.19..改訂)



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