サミュエル・バーバー:交響曲第1番、第2番
マーリン・アルソップ指揮ロイヤル・スコットランド国立管弦楽団(Naxos 8.559024)盤をめぐって、
トロンボーン吹きによるクラシックの嗜好・掲示板での議論を再録します。

相手は「プチ君」です。


投稿時間:00/06/21(Wed) 12:36
投稿者名:谷口昭弘
Eメール:ataniguc@mailer.fsu.edu
URL :http://mailer.fsu.edu/‾ataniguc/index-j.html
タイトル:Re: Naxos のバーバー交響曲集 

バー2の話題で盛り上がる掲示板っつうのは稀じゃないかと思い
ながらも、せっかくなので、バーバー自演盤LPを聴きながら、ア
ルソップ(オーソップ?)CDを再考してみます。

> とにかく目的は第2番だった訳ですが、期待が大きすぎたせいか、 > 満足できるほどの演奏ではありませんでした。といっても既存盤 > のなかでは最も優れた演奏とは思います。 こんなこと言うと怒られるかもしれませんが、どうも私はこの第 2交響曲という作品自体が、あまり成功した作品ではないと思う ようになってきました。ですから、このNaxos盤を聴くまで、当作 品を繰り返して聴くということがなかったのではないかと思うん です。

> そこまでのロマン性は表現し切れてないと思います。 私は、基本的には第1ほどのロマン性は、第2には求められない と思います。アルソップは、比較的作品の良さを取り出すことに 成功しているという点で、私は良いと思いますが、これが「第2 の理想の姿」なのかどうかについては、とりあえず保留していま す。

>肝心な部分がさらっと流されてしまうのでドラマチックであ > るべき展開も散文調に思えます。 作品自体の問題もあると思います。思わせぶりなフレーズが多く あるにもかかわらず、それらが完全燃焼せずに次へいってしまう というのが、この第2(特に両端楽章)の問題ではないかと思う のです。ただ、自演盤の第1楽章など、改めて聴いてみると、な かなかスリリングなところもあるんですね。CDになってもらいた い。

> それ以前にオーケストラを揃える > ことに拘泥し、表現の余裕が無いようにも聞こえます。アンサンブ > ルとしては1番の方が良くできていて、2番と比較して聴くと同じ > オケとは思えないほどです。2番は確かに難しいのですが、最高級 > のアマオケ並みです。 私が聴いた感じ、特に第1・第2を通して、オケのレベルに差 があるとは思いません。自演の方が、まだ消化不足の感があり ます。作品の性質の違いから来る、接近法には違いがあってし かるべきでしょう。

> 1番などはドラマ性は良く出ている方だと思いますが、やはり振幅 > が少ない。 「振幅」というのは、例えばダイナミクスのことでしょうか。 それでしたら、それほど問題だとは思いません。コントラスト でしょうか。それでしたら、もう少しはっきりできる可能性は あったと思います。

> 谷口君の言うとおりオケの鳴りの良さに助けられている > 面が強く、指揮者はそんなにカッチリした曲作りをしてないと思え > ます。 私は、彼女はそれなりに曲作りをしていると考えますが、やや 「浸り過ぎる」きらいがあると思っています。

>「グラモフォン」誌ではバーンスタインを思わせる演奏とあっ > て期待したのですが、師匠を超えるのは難しいようです。 バーンスタインとの関連性は、単なる宣伝文句だと思います。無視し てもいいでしょう。

>それが 1,000 円弱で買えるのですからそこまで考えれば、超お薦め >盤と言っていいでしょう。 これに関しては、全く同感です。アメリカ音楽シリーズの中でも 良質なCDだと思います。


投稿時間:00/06/24(Sat) 12:22
投稿者名:谷口昭弘
Eメール:ataniguc@mailer.fsu.edu
URL :http://mailer.fsu.edu/‾ataniguc/index-j.html
タイトル:Re^3: Naxos のバーバー交響曲集 

せっかくですから、もう少し議論を続けましょう。

> まあ、作曲者本人も破棄しようとした作品(だよね)な訳だし、比べて > しまえば1番ほどは成功してないのは確かでしょうね。ロマンチシズ > ムと純粋交響曲が中途半端に同居しているせいではないかと考えます > が。 後期作品でも、ピアノ協奏曲のように、割とバランス良くまとまって いる作品もあるので、どういった形式観で書くかということもそうで すが、どちらかというと、それをどう生かすのかという所がうまくい っていないのではないかと思います。

> 私も匹敵するとは書きましたがそれは同等以下という意味で、作品自 > 体を比較すれば第2は第1よりロマン性は確かに低い。しかしアルソッ > プの演奏では、まだまだ作品の持ってるロマン性ドラマ性を描ききっ > てないと私は考えます。 バーバーの自演を改めて聴いての感想ですが、オーソップのように鋭 角に形式観を作り上げようとせず、かえってさらりとかわした方が成 功するのかもしれません。案外第1と同じ問題なのかな、と思うよう になりました。

> 主題があまり展開できてないんですよね。展開するとかと思うと忘れ > さられていく主題もありますし。主題自体展開しにくいものを作った > というべきか。 第1楽章がソナタ形式だというのは、アルソップの演奏で初めて分か りました。そういう点では、彼女は、とりあえず交通整理をきちんと していると思うんですよね。もちろん、プチ君の求めているのがそれ 以上であることは確かなんですが。

> 自演盤 > それ聴いてみたいですね。 米ロンドンから発売され、後にエヴェレストから疑似ステレオ盤とし て再発売されたようです。私が持っているのは前者。

> 録音の差もありますが、私には第2は特に弦楽器のピッチが合って > なすぎと聞こえるのですが(シェンク盤よりは良いですが)。第1は > そんなに目立ちません。曲としてもそういう粗が目立ちやすいとい > う面はあるでしょう。 アンサンブルが難しい曲であると思います。特に弦楽器など、きちんと 鳴らしながら、あの跳躍の多い旋律を演奏するのが、しんどいのではな いかと思います。いずれにせよ、もっと豊かな響きが必要でしょうね。

> コントラストです。その中でも緩急の幅です。でも早いか遅いかだけ > だと昔のバレンボイムになるので (^^; 階調度(説得力ある変化)も良 > くないといけません。 点として、強調する箇所は見えていると思うのですが、ある程度のかた まりとして捉えるべきところが見えてこないと思いました。やはり数多 くの動機をどのように整理し料理するのかが難しいのでしょう。

> やっぱりバーンスタインのバーバーが聴きたい。 <<弦楽のためのアダージョ>>はあるんですけどね (^_^;;

> 書き忘れてたんだけど、あの CD の問題は第1交響曲のトラック割が > 3つなこと。どうせ割るんなら4つでしょ。 基本的には4つの部分がありますからね。おそらく、緩徐楽章の部分と パッサカリアの部分を一つの展開として捉えてほしいということなので しょう。分からなくもないです。私も第3部から最後まで通して聴くこ とが多いので。

> # アメリカ音楽だとさすが意見が厳しいね。多分アルソップの演奏 > から感じていることは僕とそんなに違いは無いと思うんだけど>谷口君 いや、プチ君が、どうもアルソップに対して厳しすぎるように感じた ので、それに抵抗を試みただけです。

(2000.6.28.アップロード)


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