音の日記


<赤とんぼ>か「ドンガラガッチャン」か?(11/12/96)


アメリカに長く住んでいると、いろいろな面でカルチャー・ショックを受ける。それ は人と接触する時だけではなく、物を食べるときも、街を何気なく歩くときにも起こる。私がフロリダに住むようになって受けたカルチャー・ショックは、深夜から早朝に起こった。それは、何とごみ清掃車の音だった。私が以前住んだことのある、新潟市や東京の小金井市では、かならず電子音による『赤とんぼ』を鳴らしてやってくる。あの音を聴くと、「しまった、ゴミ出すの、忘れた、急がなくっちゃ」となるわけだ。しかしどうしてあの歌が、季節を問わず朝ながされるのかと考えると、なかなか妙ではである。一方、現在住んでいるフロリダではどうかというと、まずゴミは、分別せずにすべて鉄製の大きなゴミ箱に入れられる。お風呂を2倍くらい深くしたような大きさだろうか。清掃車は、その大きなゴミ箱を箱ごともちあげ、車の半ばまで持っていき、そこにある口めがけて箱をひっくり返すのである。この過程はすべて車の中で操作されるのだが、ものすごい騒音がする。「ウンガー、ガーーーー、ドンガラガッチャン」と言う感じだ。私は大学の寮の近くに住んでいるが、この作業が3時半くらいから始まるため、睡眠が著しく妨害される。「なんでこんなに朝早くやる必要があるのか?」と常々疑問に思っているのだが、アメリカ人にも、文句をつけたという前例がないようだ。実は、実際にこの作業を偶然見るまでは、てっきり工事でもしているのかと思っていた。「アメリカ人は、こんなに朝早くから、木でも切り倒しているのだろうか?大変だなぁ」などと思っていたのである。真実を知って愕然とした。この音は週2、3回は聞くことができる。たぶん生涯忘れることのできない、フロリダの音の思い出になるだろう。



内容一覧に戻る
メインのページに戻る