メモ帳6

TONBOS

(1994年に書いたボストン便り)(98.4.14.アップロード)


以下の文章は、新潟大学教育学部・音楽科・横坂康彦研究室のニュースレター、『プリズム』第6号(1994.6.1.)のために書いた私の文章です。

日本から「プリズム」が送られてくるたび私も何書かなければと思っていたのですが、実際、書くとなると何を書こうかあれこれ迷ってしまいます。今回は思いつくまま書いてみようと思います。

私はボストン大学内の英語学校にいて、3学期英語を勉強しました。15人ほどのクラスでレベルに応じて授業が進められます。英会話教室というわけではないので、文法、リーディングもきっちりやります。語句はやや難しいものを覚えます。朝8時半から12時までがcore(「核」の意味)クラスで、リーディングに基づいたディスカッション、語句のテスト、そして週1回映画をつかったリスニング訓練など、その内容も多彩です。家では、それらの設備(注・原文のママ。自分でもどういう意味で書いたのか覚えていない!)と共に作文や文法の宿題が出ます。

午後はelectiveのクラスで、商業英作文、スラング、ニュースの英語、TOEFL、アメリカの小説など自分の興味に合ったコースが選べます。アメリカの大学に入りたい人が多いのか、TOEFLのコースは人気があったようです。conditional acceptanceといって、学業成績その他は問題がなく、TOEFLで550点以上を取れば入学できるという人もいました。

学生は世界各地から来ていますが、特にベネズエラやコロンビアなどの南米、日本や韓国を中心としたアジアの学生が多かったように思います。年齢層も18歳から40歳近くまで様々です。大学の機関ということもあって、大学の寮に他の普通の学生と住むことができます。私のルームメートは化学専攻の博士課程の学生で、クラシック好きだったので話が合いましたし、英語で話していていた分、勉強になったと思います。

大学図書館ももちろん使えます。ボストン大学には立派な音楽図書館があり、かなり量のLP、CD、テープ類を聴くことができます。音楽の学生は、課題としてレコードを聴くことが多く、午後はいつも混み合っています。私も時々図書館で好きな現代音楽を聴いたりしています。文献の数も総合大学とは思えないほど多く、初期音楽の楽譜や作曲家全集、大型楽譜などのあらゆる種類の楽譜が手にとって見れます。図書館は平日は夜中の12時まで開いているので、ゆっくり勉強することができます。

その他音楽に関していえば、なんといってもボストン交響楽団でしょうか。小沢征爾のほか今年はジェシー・ノーマンやヨーヨー・マなどのゲスト出演があり、素晴しい音楽を聴くことができました。またアバドとベルリン・フィル、アルバン・ベルク弦楽四重奏団、ポリーニなど大物アーチストも訪れました。ボストン・リリック・オペラはベッリーニの<清教徒>、ビゼーの<カルメン>などを上演しました(残念ながら行けませんでしたが。)

さて物価はというと、日本に比べてずっと安いです。例えば日本で65,000円するウォークマン・プロフェッショナルも、こちらでは347ドルです(最近290ドルで売っている店も見つけました)。ただし電化製品はやや型の古いものが多く、ちょっとがっかりします。その他CDの値段も15ドルぐらいが標準で、LPなどは中古屋で3ドルくらいです。地元志向が強いのかBSOのCDはよく売れているようですし、ローカル・アーチストのコーナーを設けているレコード店もあります。日本では全く無名なのにボストン周辺ではやたら有名なアーチストもいます。作曲家ではジョン・ハービソンがマサチューセッツ工科大学にいるためか(!?)最近、米国各地のオケで演奏されています。

公共交通機関も安く、地下鉄は均一で85セント、バスは60セントです。食べ物を例にとれば、牛乳2リットル・パックで1ドル、パンが一袋80セントぐらいです。しかし詳しい人によれば、ボストンの物価はすごく高いという話でした。

住居費は例外的に高く、いま住んでいる寮も月450ドルは払っています。アパート一人住まいなら650ドル前後はするでしょう。医療費も大変です。初診60ドル以上は覚悟しなければなりません。お金は一度全額医師に払い、それから保険金が返ってくるシステムです。私の友人などこの手続きが難航し、二重に医療費が請求されたり、保険金がなかなか払われなかったりと、苦労したようです。

本の値段もそれほど安くありません。ビジネス専攻なら1冊80ドル近い教科書を何冊も買うはめになるでしょう。ちなみにグラウトの『西洋音楽史』は45ドル95セントでした。楽譜は日本で売っている値段が異常に高いためか、若干安く感じます。アメリカの出版社(G. シャーマーなど)やブージーのものはこちらで買った方がぐっと安くなります。

次は食べ物についてです。ボストンでは世界各国の料理が楽しめます。私が行っただけでも、中国、韓国、ベトナム、インド、メキシコなどのレストランが数軒あります。日本料理店も多いのですが、値段が高いうえ味もイマイチなので、あまり行きません。ボストンに来られることがあったら私と一緒にあちこち食べにいきませんか? もちろんハンバーガーやシーフードも結構! 日本にようやく支店ができたファースト・フード店「バーガー・キング」などでは、4ドルで死ぬほど食べられます。

はて私は1年間何を勉強してきたのでしょう? TOEFLの点数こそ580点あるのですが、話すのはてんでダメです。「1年もアメリカにいたんだから英語ペラペラでしょう?」と言われるのが一番つらいです。……ではまたお便りします。皆さんお元気で!!


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