アメリカで歯医者さんにかかるには:体験談(その1)

私の現在いる学校には健康センターがあり、(病気かな?)と思ったら予約をして誰かに診察をしてもらうことができる。2年前自転車から転げ落ちた時は、受付の人が傷だらけの私の顔をみて、すぐ韓国人の先生を案内してくれた。その韓国人の先生は、同じアジア人ということだったからか、とても丁寧に診てくれたので助かったことを覚えている。薬にしても、きちんとした処方箋を書いてくれたので治るのが速かったと思う。

アメリカに来て4年になるが、歯が痛くなったことは一度もなかった。歯磨きもきちんとしていたつもりだったので、治療代が高いと言われているアメリカの歯科医に行かずとも、日本に一時帰国した時に検診でもしてもらえばいいだろうと思っていた。

しかし、最近左上奥歯に水がしみるのを感じるようになり、やばいと思うようになった。ところがこの時は、以前にも歯ぐきが弱くなってしみることがあったので、きっとしばらくしてから痛みが消えるだろうとおもっていた。実際しばらくのあいだは、それで大丈夫だった。

数日後、今度はアメリカに来て以来の歯痛にみまわれた。昼食のピザが、歯の痛みのために食べられなかったのである。(これは間違いなくムシ歯だ)と思った。

食後すぐ、学校にある健康センターへと向かった。2階の予約コーナーに向かうと、歯科の予約は4階だというので、4階に上った。歯科のクリニックのオフィスがあったが、閉まっていたので、その向かい側の窓口に尋ねてみた。数人の看護婦らしき人がだべっていた。

「すいません、歯医者の予約をしたいんですが」と言うと、(あんた一体誰?)というような顔つきで「歯医者の予約はここではしていませんよ。歯科クリニックは開いていませんか」と答えてきた。(開いているか閉まっているかって…、向かいだから見たらすぐ閉まっているって分かるじゃね〜)と思いながらも、わざわざドアを確かめて、「確かに閉まっています」と言った。そうすると、ダベっていた人たちの一人が「それじゃ歯科医に電話してください。先生は外部から学校にいらしているので」と答えた。(なるほど、学校にいつもいる訳じゃないのね)と半分納得しながら、「じゃあ電話番号を教えてください」と尋ねた。

すると驚いたことに、「知りません。電話帳で調べてください」という。(おいおい、向かいにいるくせに何でそんなことも知らないの? しかもオレみたいなヤツは他にもいるだろうから、電話のメモくらい持ってろよな)と思いながらも、そこにたまたまあった「イエローページ」を借りて電話番号を調べ、今いる4階から、電話のある1階までエレベーターで降りていった。

幸い1階には、患者のために市内通話が無料でできる電話が置いてあったので、イエローページで調べた歯科医に電話してみると、歯科医の秘書らしき人が「うちの先生に何のご用件でしょうか?」と応答する。そこで「いや、学校の健康センターからかけているんですが、予約を入れたいと思いまして」と言った。すると、「学校に予約を受け付ける人がいるのでそちらにかけてください」と答える。「いや、ドアに鍵がかかっているので、誰もいないようですよ」と言うと、今度はアメリカ人特有の強固な声で「誰か居るので行ってみなさい」と押してくる。(変だな〜)と思いながらも、もう一度4階に戻りドアをノックすると、しばらくして小さい声が。しかしドアはあいかわらずロックされている。(なんだ、人がいるんじゃないか。何でドアをロックしているんだ)と思いながらも、とりあえず歯が痛いので、「すいません、歯がひどく痛いので診察の予約をしたいのですが」と言った。パラパラとスケジュール帳をめくりながら、その女性は「金曜日はどうですか?」という。(今日は火曜日だ。こんなに痛いのに、3日も待たせるのか)と思ったので、「もっと早い日はないのか?」と尋ねた。すると「もう予約がいっぱい入っていて無理です」と言われた。(ダっせーな。でも仕方がないからとりあえずがまんすっか)と思い予約を入れた。カードに予約日を書いてもらい、部屋を退出した。

予約カードをもう一度ここで確認したが、ここでとんでもないことに気付いた。なんと予約を入れた金曜日というのは今週の金曜日ではなく、2週間あとの金曜日だったのだ。(痛くて我慢できないのに、いくらなんでもそれはないだろう)と思ったし、ちょうどこの日は学会参加でアリゾナ州にいっている。もう一度鍵のかかったクリニックのドアを叩く。

もう一度スケジュール帳を見て、今度は予約した金曜日の5日後になる。「たったの2、3週間よ」などと予約のおばさんは気軽に言ってくれるが、こちらは(冗談じゃない。こっちは歯が痛くて死にそうなのに、2週間も放っておくのか)と腹が立ってくる。さらに「これはヒドい。こんなんで学生を助けているつもりなのか」と思わず口走ってしまったが、向こうも、「うちはこれで何千人という学生を扱っている。ベストを尽くしているんだ」と強気の発言。「ごめんなさい」の一言さえ言わないのは、さすがアメリカとは思うが、やっぱり(ナメとんのか)と思ってしまう。

この歯科クリニック、この週は担当2人の先生が両方とも来れず、完全休業となっている。まったく、これどうにかしてる!

つづく


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