Mr. Tの現代アメリカ音楽講座




1999年8月19日アップロード



これは新潟県新津市にあるFM新津の番組「ドクターヨコサカのクラクラクラシック」において、6月末に放送されたアメリカ音楽紹介の原稿です。


[ここで音源] 庶民のためのファンファーレ/アーロン・コープランド作曲/ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団/使用CD=RCA Victor 09026-61545-2/演奏時間=3分27秒

皆様こんにちは、フロリダ州立大学院の谷口です。

ただいまお聞きいただきましたのは、アーロン・コープランド作曲の<庶民のためのファンファーレ>という曲でした。この曲が作られたのは、1943年。時折しも第二次世界大戦の真っただ中です。前線で戦う兵士をアメリカ本土で陰ながら応援するごく普通の人達の心の団結を願って書かれたために、この<庶民のためのファンファーレ>という題がつきました。つい最近でも、この曲はアメリカを代表するものとして、オリンピックの開会式など、公の行事でも良くながれています。実にアメリカの国歌「星条旗」とともに、式典には欠かせない存在となっているようです。

今回の「くらくらくらしっく」では、たった今お送りしました<庶民のためのファンファーレ>のようなアメリカの愛国心を促す(うながす)音楽や、アメリカの歴史に因んだ音楽をお送りすることにします。といいますのも、来る7月4日は、ハリウッド映画「インディペンデンス・デイ」でもすっかりおなじみになりました、アメリカの独立記念日でからです。すこしでも、その雰囲気を味わっていただけると幸いです。

さて、アメリカで独立記念日といえば、まずは軍楽隊の演奏です。アメリカの軍楽隊は、陸軍、空軍、海軍、海兵隊、沿岸(えんがん)警備隊と、それぞれにが軍楽隊があり、大変優秀な音楽家が集まっています。特にその中でも「大統領の側近の」というあだ名がついている、海兵隊軍楽隊は、あのジョン・フィリップ・スーサがかつて指揮したとうこともありまして、アメリカの軍楽隊を代表する存在となっています。今日はまず、このアメリカ海兵隊軍楽隊による演奏で、<アメリカ軍の歌のメドレー>をお届けしましょう。

こういった<アメリカ軍の歌のメドレー>は、華やかな国民の祝日になると、よくラジオや演奏会で演奏されることがあります。私のおります、フロリダ州立大学でも「アメリカの祝祭」というコンサートがありまして、アメリカ軍の歌がメドレーで演奏されました。そうすると、陸軍や海軍といった、それぞれの軍の制服を来た兵隊さんたちがの軍の旗を持ってステージに登場し、会場からも拍手がきて盛り上がりました。と同時に、それぞれの軍にかつて所属していた元兵士人達が、自分の軍の歌がかかると、起立して敬意を表するということもありました。そういう訳で、アメリカの軍隊の歌というのは、アメリカの力強さを象徴するものでもあり、自分たちのアイデンティティを示すものなんでしょうね。

それでは、海兵隊軍楽隊所属の編曲家、トーマス・ノックスの編曲によります「アメリカ軍の歌メドレー」をお送りします。ファンファーレに続きまして、まずは全アメリカ軍の歌、そして、日本では<錨を上げて>という題でおなじみの、海軍の歌、沿岸(えんがん)警備隊の歌、空軍の歌、最後に海兵隊の歌と続きます。

演奏は、ジョン・ブルジョワー大佐指揮、米国海兵隊軍楽隊です。

[ここで音源] アメリカ軍の歌メドレー/トーマス・ノックス編曲/使用CD=Altissiomo! 75442255532/演奏時間=3分41秒

アメリカの歴史といいますのは、他の国もそうなんでしょうけれど、どうしても戦争抜きには語れなくなってしまいます。そのなかで最もアメリカ人の心に大きな影響を与えたのが南北戦争でした。この19世紀アメリカで起った壮絶な戦いが繰り広げられていた間、沢山の音楽が書かれました。まずは、南北戦争の時の軍楽隊の音楽を当時の楽器で演奏したCDから、数曲をご紹介しましょう。

まずは、北軍のために書かれた「隊長に敬礼」という曲。現在は、大統領が重要な式典に登場するときに、この音楽が流れますので、ご存じの方も多いかと思います。2曲目は、これまた日本でもメロディーがすっかりおなじみの「リパブリック賛歌」これもリンカーン率いる北軍の曲だったようですね。そして兵士が戦いに勝って帰ってくるのを町じゅうで祝う光景を勇ましく歌う「ジョニーが凱旋するとき」、これは南軍の歌です。それでは、以上3曲をフレデリック・フェネル指揮、イーストマン・ウインド・アンサンブル、その他の演奏でお聞きいただきましょう。なお、曲のアレンジも曲が作られた当時のシンプルなものになっております。

[ここで音源] 南北戦争の音楽(1)隊長に敬礼、(2)リパブリック賛歌、(3)ジョニーが凱旋するとき/演奏=フレデリック・フェネル指揮、イーストマン・ウインド・アンサンブル、その他/使用CD Mercury 432 591-2/演奏時間=1分18秒、46秒、1分12秒

ただいまお送りしました、南北戦争の音楽ですが、3曲目の<ジョニーが凱旋するとき>を使いまして、モートン・グールドが<アメリカン・サリュート>というオーケストラ曲を書きました。これがまた、ここ数年、ポップス・コンサートでは、大変良く取り上げられる曲になっています。元気のいい若いアメリカを象徴する力強い作品ですが、これをアーサー・フィードラ指揮、ボストン・ポップス管弦楽団の演奏で聴いてみましょう。ドラマティックな構成と鮮やかな管弦楽の響きが魅力です。

[ここで音源] アメリカン・サリュート/モートン・グールド作曲/演奏=アーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団/使用CD=RCA Victor 09026-61545-2/演奏時間=4分08秒

さて、南北戦争中は、勇ましい行進曲の陰で、驚くべきことに、たいへん美しい歌も書かれておりました。例えば、日本では名前がすっかりおなじみになった、スティーヴン・フォスターが南北戦争当時に書いていた歌も、その良い例だと思います。今度はフォスターによる、3曲のノスタルジックな歌曲をお届けすることにしましょう。

まずは<どうして私の愛する人達は天国に行ってしまったの?>です。19世紀は、この南北戦争のみならず、人が死ぬというものに向き合うことが多かったようです。それは医学がまだ発達していなかった時代、厳しい自然の中で暮らすアメリカの人々を思い出すだけでも何となく想像できそうです。事実フォスターのお妹さんは二十(はたち)で、ご両親も、この歌の作られた6年前の1855人にお亡くなりになっています。そのような悲しみがフォスターのこの美しい歌に影響をあたえたのかもしれません。2曲目は有名な<ビューティフル・ドリーマー>、<夢見る人>です。この美しい歌曲も、南北戦争中に作られ、残念ながら、出版者も楽譜を印刷することが出来ず、最終的には作曲者の死後になって出版されたそうですす。三曲目は、<僕は兵士になる>です。この曲が書かれたのは、南北戦争も始まったばかりの時で、素朴で楽天的な戦争に対する感情がまだ残っていたようです。

では、フォスターの歌曲、どうして私の愛する人達は天国に行ってしまったの?、夢見る人 [ビューティフル・ドリーマー]、僕は兵士になる、以上3曲をリンダ・ラッセルの歌、ルドルフ・パルマーのフォルテピアノ、ルック礼拝堂合唱団の演奏でどうぞ。

[ここで音源] (1)どうして私の愛する人達は天国に行ってしまったの?(2)夢見る人 [ビューティフル・ドリーマー]、(3)僕は兵士になる/スティーヴン・フォスター作曲/リンダ・ラッセル(バラード歌手)、ルドルフ・パルマー(フォルテピアノ)、ルック礼拝堂合唱団/使用CD=Helicon Classics HE 1002/演奏時間=3分58秒、2分44秒、2分16秒(第3曲目は、実際の放送用テープには収録されていません。)

さて独立記念日には、野外コンサートがつきものです。一番有名なのが、ボストンにあるチャールズ河で行われるボストン・ポップスのコンサート。コンサートの終わりには花火大会もつくこのお祭り騒ぎのために、チャールズ河には沢山の人がピクニックに集まり、大変な人ごみになります。ワシントンDCにおきましても、やはり良く似たコンサートがありまして、最近はエリック・カンゼルがシンシナティー・ポップスを指揮して、やはり盛大に花火も上がり、盛り上がりを見せます。

これからお送りしますのは、そういった独立記念日のコンサートに、必ずといっていいほど取り上げられることの多い、愛国歌の「おはこ」の歌、2曲です。まずは、レオンタイン・プライスの歌、チャールズ・ゲルハルト指揮ナショナル管弦楽団で、<美しきアメリカ>、そして第2次世界大戦で広く歌われたアーヴィング・バーリン作曲の<神よアメリカを祝福せよ>、こちらはマリリン・ホーンの歌、ジェームズ・コンロン指揮メトリポリタン歌劇場管弦楽団員の伴奏でお送りします。

[ここで音源] (1)美しきアメリカ/ベーツ作曲、ワード編曲/レオンタイン・プライス(ソプラノ)、チャールズ・ゲルハルト指揮ナショナル管弦楽団、(2)神よアメリカを祝福せよ/アーヴィング・バーリン作曲/マリリン・ホーン(ソプラノ)、ジェームズ・コンロン指揮メトリポリタン歌劇場管弦楽団員/使用CD=RCA Victor 09026-61545-2/演奏時間=3分47秒、2分24秒

今日最後は、独立記念日はこれなしに終われないという曲、スーサの行進曲、<星条旗よ永遠なれ>をお送りします。この曲、非常に多くの演奏がありまして、どれをお送りするのか大変迷ったのですが、今回は、ちょっと趣向変えまして、ピアノ独奏による演奏をご紹介することにしました。それでは、さっそくどうぞ。

[ここで音源] 星条旗よ永遠なれ/ジョン・フィリップ・スーサ作曲(ウラディーミル・ホロヴィッツ編曲)/ウラディーミル・ホロヴィッツ(ピアノ)/使用CD=RCA Victor 7755-2RG./演奏時間=3分50秒


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