Dr. Tの現代アメリカ音楽講座



63
2004年12月7日アップロード
これは新潟県新津市にあるFM新津の番組「ドクターヨコサカのくらくらクラシック」において、2004年11月27日に放送されたアメリカ音楽紹介の原稿です。
現代アメリカ音楽の時間です。ご案内は谷口昭弘です。今日もアメリカのクラシック音楽を幅広くご紹介いたしましょう。

ポーター序曲集 今日1曲目は、ソング・ライターとしても有名なコール・ポーターによります、ミュージカルの序曲をお送りします。1939年に初演された《デュバリイは貴婦人》からの序曲です。どうやらニューヨークのナイトクラブと18世紀フランスの宮廷生活を織りまぜた恋愛コメディーだったようですが、こういう曲は、まずワクワクするようなショーの幕開きの感じが素晴らしいと思います。クラシックのオーケストラと違って小さい編成ですし、またサキソフォンのサウンドが独特ですね。

ではさっそく、ジョン・マクグリン指揮ロンドン・シンフォニエッタの演奏で、コール・ポーターのミュージカル《デュバリイは貴婦人》から序曲をお楽しみいただきます。

[ここで音源] ミュージカル《デュバリイは貴婦人》序曲/コール・ポーター作曲/ジョン・マクグリン指揮ロンドン・シンフォニエッタ/使用CD=英EMI Classics CDC 7 54300 2(アルバム『Overtures and Ballet Music』/演奏時間=3分34秒

Made in USA CD次はサミュエル・ガードナーという人のヴァイオリン小品を2つお楽しみいただきましょう。1曲目は《ジャズエット》という作品です。1925年の作品といいますから、ちょうどジャズが世の中を席巻していた時代といえるのかもしれません。ジャズエットというタイトルは、おそらくジャズ調のメヌエットということなのかもしれませんね。続いて《サトウキビの茂みから》という1918年のしゃれた感じの小品です。中間部の甘い旋律が魅力的ですが、どことなく黒人霊歌みたいなところがありますね。

ではキューバ生まれのヴァイオリニスト、アンドレス・カルデネスとピアノ、ルズ・マンリケズのピアノで、サミュエル・ガードナーの《ジャズエット》、《サトウキビの茂みから》の2曲を続けてどうぞ。

[ここで音源] ジャズエット/サミュエル・ガードナー作曲/アンドレス・カルデネス(ヴァイオリン)、ルズ・マンリケズ(ピアノ)/使用CD=米Ocean Records OR 105(アルバム『Made in USA』)/演奏時間=2分56秒

[ここで音源] サトウキビの茂みから/サミュエル・ガードナー作曲/アンドレス・カルデネス(ヴァイオリン)、ルズ・マンリケズ(ピアノ)/使用CD=米Ocean Records OR 105(アルバム『Made in USA』)/演奏時間=1分45秒

The Girl on the Magazine Cover CD次は今日最初にお送りしたコール・ポーターとともに、20世紀前半を代表するソング・ライター、アーヴィン・バーリンの歌曲を4つお送りしましょう。

1曲目は《雑誌の表紙の少女》です。僕は少女の姿にぞっこんなんだけれど、その娘は雑誌の表紙に描かれた人、どうせ片想いなのは分かってるけど、一言僕の気持ちを伝えられたらなあ、という感じの曲です。

2曲目は《神秘的なラグ》。ラグというのはこの番組のテーマ音楽でもありますスコット・ジョプリンの作ったようなラグタイムのことだと思います。何だか分からないけど、一度聴いたら耳から離れない不思議なラグタイムのリズムや旋律を聴いてごらんよ、という感じでしょうか。

3曲目は《朝起きるのは大嫌い》。朝起きる時のつらさというのは、寒さが厳しくなると、しみじみ感じられますが、この曲の場合は第1世界大戦中に作られたもので、登場するのは戦う兵士たちです。どうも兵士たちは早朝の起床ラッパを聴くのが嫌いで、あのラッパを吹く奴がいなくなれば、一生ベットの中で過ごせるのに、と歌います。

4曲目は《さあコーヒーをもう一杯》。1930年代、アメリカでは大恐慌の時代。仕事もなく、全米に暗く重苦しい雰囲気が漂っていた時代でした。こういう時こそ、明るい話題をみつけて、いやなことを吹き飛ばしたいもの。「さあコーヒーでも祝って、パイでも食べましょう」と、とても陽気な歌ですが、実際に世紀の大不況に喘いでいた人たちにとっては、心にグっとくるところがあったと思われます。

以上、歌は世に連れ、世は歌に連れという名文句がありますが、これらのバーリンの曲も、作られた時代のことをリアルに反映しているようですね。

ではジョアン・モリスのメゾ・ソプラノ、ウィリアム・ボルコムのピアノ伴奏で、アーヴィン・バーリンの歌、《雑誌の表紙の少女》、《神秘的なラグ》、《朝起きるのは大嫌い》、《さあコーヒーをもう一杯》の4曲を続けてどうぞ。

[ここで音源] 雑誌の表紙の少女/アーヴィン・バーリン作曲/ジョアン・モリス(メゾ・ソプラノ)、ウィリアム・ボルコムのピアノ/使用CD=米RCA Victor (BGM Classics) Gold Seal 3704-2-RG(アルバム『The Girl on the Magazine Cover: Songs of Irving Berlin』)/演奏時間=3分57秒

[ここで音源] 神秘的なラグ/アーヴィン・バーリン作曲/ジョアン・モリス(メゾ・ソプラノ)、ウィリアム・ボルコムのピアノ/使用CD=米RCA Victor (BGM Classics) Gold Seal 3704-2-RG(アルバム『The Girl on the Magazine Cover: Songs of Irving Berlin』)/演奏時間=2分22秒

[ここで音源] 朝起きるのは大嫌い/アーヴィン・バーリン作曲/ジョアン・モリス(メゾ・ソプラノ)、ウィリアム・ボルコムのピアノ/使用CD=米RCA Victor (BGM Classics) Gold Seal 3704-2-RG(アルバム『The Girl on the Magazine Cover: Songs of Irving Berlin』)/演奏時間=2分04秒

[ここで音源] さあコーヒーをもう一杯/アーヴィン・バーリン作曲/ジョアン・モリス(メゾ・ソプラノ)、ウィリアム・ボルコムのピアノ/使用CD=米RCA Victor (BGM Classics) Gold Seal 3704-2-RG(アルバム『The Girl on the Magazine Cover: Songs of Irving Berlin』)/演奏時間=2分29秒

ジャズ・エイジのクラシック続きまして、ロバート・ナタニエル・デットという作曲家によります《チャリオット・ジュビリー》という合唱のための作品をお送りしましょう。題名の「チャリオット」というのは「幌馬車」のことでありまして、この作品が《揺れるよ幌馬車》という黒人霊歌に基づいているところから、そういうタイトルになったようです。

作曲者のデットは自らもアフリカ系アメリカ人でして、つまり自らが属する黒人の音楽伝統とクラシックの伝統をうまく融合させているようです。全体としては非常に滑らかで、黒人霊歌のダイナミズムよりも、穏やかで宗教的な色彩が強調されるようになっているように思われます。

ではロバート・ナタニエル・デット作曲の《チャリオット・ジュビリー》をフィリップ・ブルネッレ指揮ヴォーカル・エッセンス合唱団と管弦楽団の演奏でどうぞ。

[ここで音源] チャリオット・ジュビリー/ロバート・ナタニエル・デット作曲/フィリップ・ブルネッレ指揮ヴォーカル・エッセンス合唱団、管弦楽団/使用CD=米Clarion CLR907CD(アルバム『Got the Saint Louis Blues: Classical Music in the Jazz Age』)/演奏時間=11分43秒

今日最後はデューク・エリントンの名曲をひとつまみずつ集めたメドレー、《エリントン・ファンタジー》をお送りします。演奏はエリック・カンゼル指揮ロチェスター・ポップスです。

[ここで音源] エリントン・ファンタジー/エリック・カンゼル指揮ロチェスター・ポップス/使用CD=米Pro Arte CDD 276(アルバム『Ties & Tails: Music of Duke Ellington and George Gershwin』)/演奏時間=4分45秒


アメリカ音楽講座の目次に戻る
メインのページに戻る