Mr. Tの現代アメリカ音楽講座



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2004年8月28日アップロード
これは新潟県新津市にあるFM新津の番組「ドクターヨコサカのくらくらクラシック」において、2004年8月末に放送されたアメリカ音楽紹介の原稿です。
現代アメリカ音楽講座の時間です。お相手はいつもの通り、谷口昭弘です。

さて今回は夏の最後ということで、「ポップス・オーケストラの楽しみ」と題しまして、ほんの一息つける軽めの曲を中心にお送りしたいと思います。

Gershwin Concert (Fiedler)まずはポップス・オーケストラといえば、ボストン・ポップス。現在はキース・ロックハートという若い指揮者が活躍していますが、このオーケストラといえば、何と言ってもアーサー・フィードラーという名前を思い浮かべられるファンの方も多いのではないかと思います。彼の指揮したレコードの売り上げ枚数は合計すると1000万枚以上にもなると言われておりますが、今日は彼の晩年、1979年の6月に録音されたガーシュインの曲を集めたアルバムからミュージカル《ガール・クレイジー》の聞きどころを組曲にしたものをお送りします。編曲を担当したのは、《ラッパ吹きの休日》や《タイプライター》でおなじみのルロイ・アンダーソンです。《アイ・ガット・リズム》、《エンブレイサブル・ユー》など、今日ではジャズのスタンダードとなったメロディーも登場します。

ではアーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団の演奏でガーシュインの《ガール・クレイジー》組曲です。

[ここで音源] 《ガール・クレイジー》組曲/ジョージ・ガーシュイン作曲、ルロイ・アンダーソン編曲/アーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団/使用CD=英Decca  443 900-2(アルバム「Gershwin Concert」)/演奏時間=5分30秒

Gotta Dance (Kunzel)ミュージカルといえば、ジョージ・ガーシュインと並んでコール・ポーターの名前が挙がりそうですね。とりわけいろんな歌手に歌われた《ビギン・ザ・ビギン》はラテンのリズムも爽やかな名曲でしょう。次は今年の秋来日するシンシナティー・ポップスの指揮者エリック・カンゼルがニューヨーク州はロチェスターのポップス・オーケストラと演奏した《ビギン・ザ・ビギン》をお送りします。そしてラテンつながりということでもう1曲、こちらはヴィンセント・ユーマンという人の作った《キャリオカ》という曲です。いずれもフレッド・アステアが出演したミュージカル映画で知られている名曲のようです。

ではエリック・カンゼル指揮ロチェスター・ポップスの演奏で、コール・ポーターの《ビギン・ザ・ビギン》、ヴィンセント・ユーマンの《キャリオカ》、以上2曲を続けてどうぞ。

[ここで音源] ビギン・ザ・ビギン/コール・ポーター作曲、ハーマン編曲/エリック・カンゼル指揮ロチェスター・ポップス/使用CD=米Pro Arte CDD 385(アルバム「Gotta Dance!: A Tribute to Fred Astaire」)/演奏時間=3分48秒

[ここで音源] キャリオカ/ヴィンセント・ユーマン作曲、カーメン・ドラゴン編曲/エリック・カンゼル指揮ロチェスター・ポップス/使用CD=米Pro Arte CDD 385(アルバム「Gotta Dance!: A Tribute to Fred Astaire」)/演奏時間=3分29秒

Hollywood Nightmares「ポップス・オーケストラの楽しみ」と題してお送りしております今月の「現代アメリカ音楽講座」ここでちょっと雰囲気をかえまして、アルフレッド・ヒッチコックのサスペンス映画に使われた音楽を1曲お聴きいただきましょう。1945年公開、イングリット・バーグマン、グレゴリー・ペック出演の映画で『白い恐怖』という映画からの音楽です。実はこの映画、私はまだ拝見していないのですが、音楽を担当したのはハンガリー生まれで『ベン・ハー』などの大作の音楽も作曲したミクロス・ローザでした。

今日お送りしますのは映画のサントラではありませんで、映画の音楽に基づいて作曲者ローザが自ら編み直したピアノ協奏曲《白い恐怖》という作品です。全編非常にロマンチックなんですが、中間部に、さすがサスペンスという感じの音、バックグランドにテレミンという電子楽器の音がゆらゆらと聴かれます。テレミンはこの「くらくらクラシック」でも紹介されたのかもしれませんが、箱の上に突き出ているアンテナに手を近付けたり遠ざけたりすることで音程を変えながら演奏する電子楽器で、「人の声のようでいてそうでなく」という感じで、ぞくぞくするところがありますね。

ではそのテレミンの音も含めてお楽しみいただきましょう、ミクロス・ローザの12分余りのピアノ協奏曲《白い恐怖》です。演奏はジョン・マウチェリ指揮ハリウッド・ボウル管弦楽団です。これはハリウッドで野外コンサートをやっていることで有名なポップス・オーケストラです。ではどうぞ。

[ここで音源] ピアノ協奏曲《白い恐怖》/ミクロス・ローザ作曲/ジョン・マウチェリ指揮ハリウッド・ボウル管弦楽団、スティーヴン・ホーグ(ピアノ)/使用CD=蘭Philips  442 425-2(アルバム「Hollywood Nightmares」)/演奏時間=12分00秒

※この演奏は作曲者立ち会いのもとに録音されましたが、録音の最後に「ブラボー」と思わず声を上げたローザの声も収録されています。

Magical Music of Disney (Kunzel)今日最後は、エリック・カンゼル指揮シンシナティ・ポップス管弦楽団によりますディズニー・アニメ『リトル・マーメイド』の音楽からお送りします。まずは探検心いっぱいの主人公アリエルが人間世界やそこに住むあこがれの王子様への思いを歌に託す《パート・オブ・ユア・ワールド》、それに対して宮廷音楽家セバスチャンが「いやいや、海の中の生活がいいよ」と歌うカリプソ・ナンバー《アンダー・ザ・シー》、フランス人コックがセバスチャンを料理してしまおうという場面も思い出される《レ・ポワソン》、そして《ハッピー・エンディング》、以上4つです。アリエルを歌うのはアニー・リヴィングストン、合唱はインディアナ大学シンギング・フージアーズ、エリック・カンゼル指揮シンシナティ・ポップス管弦楽団です。では続けてどうぞ。

[ここで音源] 「リトル・マーメイド」から《パート・オブ・ユア・ワールド》、《アンダー・ザ・シー》、《レ・ポワソン》、《ハッピー・エンディング》/アラン・メンケン作曲、ハワード・アシュマン、ティム・ライス作詞、マーク・マクガーティ、クラフトン・ベック、ダニー・トルーブ編曲/エリック・カンゼル指揮シンシナティ・ポップス管弦楽団/使用CD=米Telarc CD-80381(アルバム「The Magical Music of Disney」)/演奏時間=3分24秒、3分28秒、1分41秒、1分46秒


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