Mr. Tの現代アメリカ音楽講座



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2004年7月27日アップロード
これは新潟県新津市にあるFM新津の番組「ドクターヨコサカのくらくらクラシック」において、2004年6月末に放送されたアメリカ音楽紹介の原稿です。
みなさん、こんにちは。現代アメリカ音楽講座の時間です。ご案内は谷口昭弘です。

Appalachian Trail CD今月も私の独断と偏見でアメリカのクラシック、いろいろお送りしたいと思いますが、まずはアメリカ民謡の《シェナンドー》という曲を題材にした弦楽四重奏のための幻想曲をお送りしましょう。《シェナンドー》という歌は開拓時代の初期からミズーリー河一帯で船人によって歌われていた舟歌で、「ミズーリ河を越えながら、いとしい人シェナンドーよ、また会う日まで、決して忘れはしない」という歌詞がついているようです。このシェナンドーというのは「目のきれいな星の娘」という意味があるともいわれております。

さてこれからお送りしますのは、リックス・ソワッシュという人の作った幻想曲です。まずはギターによって、ゆったりと民謡《シェナンドー》が演奏された後、弦楽四重奏のアンサンブルがこの旋律を自由に展開していきます。素朴な曲調ですが、心に訴えてくるものもありますね。

ではジョン・ペルのギター独奏、シェルブーン弦楽四重奏曲の演奏で、リック・ソワッシュの《シェナンドーによる幻想曲》をどうぞ。

[ここで音源] シェナンドーによる幻想曲/リック・ソワッシュ/ジョン・ペル(ギター)、シェルブーン弦楽四重奏曲/使用CD=米Gasparo GSCD-236 "Music for the Appalachian Trail"/演奏時間=14分18秒

Galway CDこの民謡風の雰囲気、もうちょっと続けてみましょう。次にお送りしますのは、フルート奏者ジェームズ・ゴールウェイがフィドル奏者として有名なジェイ・アンガー、ギターのモリー・メイソンと一緒に作った『ソング・オブ・ホーム〜アメリカ音楽の旅』というアルバムからです。1曲目はワルツのリズムにのせて、ゴールウェイがアイルランド民謡でおなじみのティン・ホイッスルを吹く《マイ・ケイプ・プレトン・ホーム》です。これはもともとマサチューセッツ州ブロックトン出身のフィドル奏者ジェリー・ホーランドという人の作ったフィドル、つまりヴァイオリンで弾く旋律をアレンジしたもののようです。ゴールウェイは時々柔らかい音のする西洋のフルートも演奏しているようです。2曲目は《金髪のジェニー》をはじめとしてフォスターの歌曲をメドレーにした《フォスター・レディー》。なつかしいアメリカの風景が目の前に現れるようです。

では《マイ・ケイプ・プレトン・ホーム》、《フォスター・レディー》の2曲を続けてどうぞ。

[ここで音源] マイ・ケイプ・プレトン・ホーム/ジェリー・ホランド作曲/ジェームズ・ゴールウェイ(フルート、ティン・ホイッスル)、ジェイ・アンガー(フィドル)、モリー・メイソン(ギター)/使用CD=日BMGファンハウス(RCA)BVCC-34052/演奏時間=5分05秒

[ここで音源] フォスター・レディ/スティーヴン・フォスター作曲、アンガー、メイソン、ゴールウェィ編曲/ジェームズ・ゴールウェイ(フルート、ティン・ホイッスル)、ジェイ・アンガー(フィドル)、モリー・メイソン(ギター)/使用CD=日BMGファンハウス(RCA)BVCC-34052/演奏時間=4分41 秒

Hollywood Bowl Greatest Hits CDさてここからは気分を変えて、私のコーナーではあまり取り上げてこなかった、ハリウッドの映画音楽をお送りしたいと思います。映画音楽はもちろん映画を観た人が、それを懐かしく思い出すきっかけにもなるんですが、一方で音楽としての面白さから映画を一度観てみたいということがあるかと思います。そういったこともあってか、映画音楽は、いろんなオーケストラ、特にポップス・オーケストラが好んでプログラムに取り上げています。代表的なのはボストン・ポップスやシンシナティ・ポップス・オーケストラで、本格的なクラシックだけでない、幅広い選曲で楽しく聴かせる、いかにもアメリカらしいコンサートが開かれています。

今日は、そういったポップス・オーケストラによる演奏のCDから、私が独断と偏見で選んだ4つの作品をお送りします。

まずはマックス・スタイナー作曲の《風と共に去りぬ》のメイン・テーマ。美しいアーチを描くような旋律が印象的な作品です。誰もが親しみをもつ音楽ですが、南北戦争に取材した映画の方、大作だけに私もビデオで観たのはずっと後のことでした。

2曲目は「バクダットの盗賊」という映画から《永遠の愛》という作品。残念ながらこの映画の方は拝見していないのですが、『アラビアン・ナイト』を題材とした1925に初公開されたサイレント映画だったようです。作曲を担当したのはミクロス・ローザというハンガリー生まれの作曲家でした。この曲、「永遠の愛」というテーマに臨んだためか、音楽がワーグナーの《トリスタンとイゾルデ》風になっていて面白いです。

By Request CD3・4曲目はシンフォニックなジョン・ウィリアムズの作品をお送りします。まずは大きなサメが襲ってくるパニック映画の傑作《ジョーズ》のテーマ、そしておなじみ《スーパーマン》。スーパーマン自体は古い漫画なのですが、私が思い付くのはいつもこのウィリアムズの音楽の方です。このスーパーマン、CDには、映画「スーパーマン」からのマーチと書い てあります。普通マーチと言いますと地面を歩く時に使われるものですが、スーパーマンは歩くというよりも飛ぶというイメージですね。ですからこのマーチにしても、拍子は行進曲の2拍子でもやっぱり飛ぶというイメージがしっかり表現されていると思います。いずれこういった映画音楽については、まとめて特集したいですね。

演奏ですが、《風と共に去りぬ》と《永遠の愛》の方は、ジョン・マウチェリ指揮のハリウッド・ボウル管弦楽団、これは映画の都ハリウッドで、野外コンサートを開いている有名なオーケストラです。《ジョーズ》《スーパーマン》の方は映画の音楽を担当したジョン・ウィリアムズ指揮ボストン・ポップスの演奏です。ゴージャスな響きが楽しめます。では4曲続けてどうぞ。

[ここで音源] 映画『風と共に去りぬ』からメイン・テーマ/マックス・スタイナー作曲/ジョン・マウチェリ指揮ハリウッド・ボウル管弦楽団/使用音源=蘭Philips 289 468 686-2 "Hollywood Bowl Orchestra: Greatest Hits," CD 2  of 2/演奏時間=4分48秒

[ここで音源] 映画『バクダッドの盗賊』から《永遠の愛》/ミクロス・ローザ作曲/ジョン・マウチェリ指揮ハリウッド・ボウル管弦楽団/使用音源=蘭Philips 289 468 686-2 "Hollywood Bowl Orchestra: Greatest Hits," CD 2  of 2/演奏時間=2分39秒

[ここで音源] 映画『ジョーズ』からテーマ/ジョン・ウィリアムズ作曲/ジョン・ウィリアムズ指揮ボストン・ポップス/使用音源=蘭Philips 420-178-2 "By Request...: The Best of John Williams and the Boston Pops Orchestra"/演奏時間=2分51秒

[ここで音源] 映画『スーパーマン』から《マーチ》/ジョン・ウィリアムズ作曲/ジョン・ウィリアムズ指揮ボストン・ポップス/使用音源=蘭Philips 420-178-2 "By Request...: The Best of John Williams and the Boston Pops Orchestra"/演奏時間=4分23秒


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