Mr. Tの現代アメリカ音楽講座



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2003年3月4日アップロード


これは新潟県新津市にあるFM新津の番組「ドクターヨコサカのくらくらクラシック」において、2004年1月末に放送されたアメリカ音楽紹介の原稿で す。


現代アメリカ音楽講座の時間です。お相手はいつもの通り、谷口昭弘です。2004年初のこのコーナーですが、今年も どうぞよろしくお願いします。

1月・2月といいますと、まだ見ぬ春が恋しくなる時期でもありますが、今日はどんよりとした寒い冬と、それが過ぎて生き物たちが元気に芽を元気に延ばして くるような力強い春へと繋がって行くような、ちょっと不思議な魅力の音楽から始めたいと思います。

グラスワークスCDジャケット紹介しますのは、フィリップ・グラスという人 が書いた作品で、『グラスワークス』というタイトルです。グラスという人、同じような音を何度も何度も繰り返して音楽を作るのが得意なのですが、よく聴い てみると、一見騒々しい反復の中にも緩やかに変化するところがあって、ゆったりとしているようで速く、速いようでゆったりしていたり。旋律があるようでな いところも、やはり不思議なところでしょう。

では、フィリップ・グラスが自ら結成したサキソフォンを含んだ管楽器と電子キーボードという編成の自前のアンサンブルで、《グラスワークス》という6楽章 の作品から、<開始>と題されたムーディーな楽章、それに続いて演奏されるちょっとグロテスクで力強い<流れ>をお聴きいただきましょう。

[ここで音源] 《グラス・ワークス》より<開始>6分18秒/フィリップ・グラス作曲/フィリップ・グラス・アンサンブル(ここではピアノ独奏のみ)/使用CD=米CBS MK 37265/演奏時間=6分18秒

[ここで音源] 《グラス・ワークス》より<流れ>5分32秒/フィリップ・グラス作曲/フィリップ・グラス・アンサンブル/使用CD=米CBS MK 37265/演奏時間=5分32秒

プレヴィン/キューバ序曲俄然元気が出てきたところで、次は熱いラテ ン・アメリカの香り漂うジョージ・ガーシュインの《キューバ序曲》をお送りしましょう。少なくとも1950年代 までは、キューバといえば、アメリカ人が好んで訪れる身近な観光地だったと思われますが、おそらくガーシュインもかの地の音楽に強い影響を受けて、太鼓の リズムや独特の哀愁を感じたのではないかと思います。速いー遅いー速いの3つの部分からなるオーケストラ作品です。ちなみにこの曲、もともとはシンプルに 《ルンバ》というタイトルが付いていたようです。

ではアンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団の演奏で、ガーシュイン1932年の作品、《キューバ序曲》をどうぞ。

[ここで音源] キューバ序曲/ジョージ・ガーシュイン作曲/アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団/使用CD=英Angel CDC 7 47021 2/演奏時間=10分38秒

American Piano Volume 1ではここで雰囲気を変えまして、ゆったりとし た作品をお送りします。エリー・シーグマイスターという人の書いたピアノの小品をお送りします。マイスターは アメリカ土着の素材にのっとった音楽を書いたのですが、これからお送りするピアノのための組曲《ブルックリンの日曜日》から<家族のだんらん>という小品 にも、ちょっとブルースやジャズの要素が見えかくれしているようです。では早速シーグアラン・マンデールのピアノで、シーグマイスターの組曲《ブルックリ ンの日曜日》から<家族のだんらん>

[ここで音源] 組曲《ブルックリンの日曜日》より<家族のだんらん>/エリー・シーグマイスター作曲/アラン・マンデール(ピアノ)/使用CD=米Premier PRCD 1013/演奏時間=4分57秒

アダムス Earbox Vol. 6最後はジョン・アダムズという、アメリカで は最近もっとも人気のある作曲家のオーケストラ曲をお送りします。タイトルはオーケストラのための2つの序曲と いいます。

アダムズは、今日最初にお送りしたフィリップ・グラスのように、繰り返しを作曲技法の基礎に据えた作曲家なのですが、《グラスワークス》のように、スト レートに反復を押し出すようなことはやりません。反復は確かにしているのですが、他にもいろんな要素が絡み合ってきます。

お送りする管弦楽のための2つの序曲ですが、それぞれにタイトルがついておりまして、1曲目は《トロンバ・ロンターナ》と申します。これは「遠くのトラン ペット」という意味だそうでして、オーケストラが醸し出す独特の空気の中にトランペットがこだまする嗜好となっているようです。2曲目には《高速マシーン への短い乗車》というタイトルが付いています。この「高速マシーン」が実際にどういうマシーン、あるいは乗り物なのかというのは明らかにされていないので すが、おそらくこれは、お聴きの皆さんが新幹線なり、ジェットコースターなりを自由に想像されればよいのではないかと思います。

ではジョン・アダムズによるます、管弦楽のための2つのファンファーレ、《トロンバ・ロンターナ》と《高速マシーンへの短い乗車》をエド・デ・ワールト指 揮サンフランシスコ交響楽団の演奏でどうぞ。

[ここで音源] 管弦楽のための2つの序曲(《トロムバ・ロンターナ》、《高速マシーンへの短い乗車》)/ジョン・アダムズ作曲/エド・デ・ワールト指揮サンフランシスコ 交響楽団/使用CD=Nonesuch 70453-2(アルバム『The John Adams Earbox』CD6 of 10)/演奏時間=4分13分、4分15秒


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