Mr. Tの現代アメリカ音楽講座



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2003年2月6日アップロード


これは新潟県新津市にあるFM新津の番組「ドクターヨコサカのくらくらクラシック」において、2003年12月末に放送されたアメリカ音楽紹介の原稿で す。


Midwest 95 CDみなさんこんにちは。2003年最後の現代ア メリカ音楽講座です。お相手はいつもの通り、谷口昭弘です。さてクリスマスも過ぎて、まもなく新しい年を迎えようとしていますが、いかがお過ごしですか? 今回は次の年を楽しみに迎えられるような作品から始めたいと思います。タイトルもずばり《新しい時代へのファンファーレ》といいます。ジャック・スタンプという人の作った、スピード感あふれる吹奏楽の曲です。ローウェル・E・グラハム指揮アメリカ空軍軍楽隊の演奏です。

[ここで音源] 新しい時代へのファンファーレ/ジャック・スタンプ作曲/ローウェル・E・グラハム指揮アメリカ空軍軍楽隊/使用CD=米MarkCustom MW95MCD-9(アルバム『The Forty-Ninth Annual Mid-West International Band & Orchestra Clinic 1995』)/演奏時間=2分25秒

Marsalis All Rise CD2曲は、2000年に作曲された、いかにもアメリカの最近の作曲界を表すような作品をお送りします。ウィントン・マルサリスの《オール・ライズ》です。題 名の《オール・ライズ》というのは、格式ばった良い方ですと「全員、起立」ということになるんでしょうけれど、ここではアメリカにいるいろんな民族の人が一緒に立ち上がる、一緒に世界を作って行くというようなニュアンスも含まれているように思います。近年アメリカではクラシックの枠組みに囚われないいろいろな音楽のスタイルを投入して作品を作るのが流行しておりまして、これからお聞きいただく作品は、その典型ともいえるようです。

この作品《オール・ライズ》を作ったウィントン・マルサリスですが、おそらくジャズのトランペット吹きとして有名でしょう。しかし彼はクラシックの素養も身に付けているマルチなミュージシャンといえるかもしれません。有名なハイドンのトランペット協奏曲なども録音しております。そんな彼の作った曲ですからクラシックはもちろん、スイング感もありますし、土俗的な踊りのリズムも聞こえてきます。

全体は10の楽章からなら1時間以上の作品なんですが、今日はその中から<ジュバル・ダンス>と題された第1楽章をお送りします。演奏はポール・スミス・シンガーズ、カリフォルニア州立大学ノースブリッジ校ノースブリッジ合唱団、モーガン州立大学合唱団、エサ=ペッカ・サロネン指揮リンカーン・センター・ジャズ・オーケストラ、ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団、以上です。では、《オール・ライズ》。

[ここで音源] 《オールライズ》より<ジュバル・ダンス>/ウィントン・マルサリス作曲/ポール・スミス・シンガーズ、カリフォルニア州立大学ノースブリッジ校ノースブリッジ合唱団、モーガン州立大学合唱団、エサ=ペッカ・サロネン指揮リンカーン・センター・ジャズ・オーケストラ、ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団/使用CD=米Sony Classical S2K 89817/演奏時間=11分21秒

Bolcom Violin Concerto CD続いてもクラシックとポピュラー音楽を自由に行き来する作品をご紹介しましょう。ウィリアム・ボルコムという人の作ったヴァイオリン協奏曲です。作曲者のボルコムという人、本国アメリカではラグタイムを演奏するピアニストとして知られておりまして、自分でラグタイムの新しい曲を作ったこともあるようです。このヴァイオリン協奏曲も1920年代に流行したラグタイムの影響が色濃く出ておりますし、どこかできいたような歌も聞こえてくるようです。

ではウィリアム・ボルコム作曲のヴァイオリン協奏曲から第3楽章をお聴きいただきましょう。演奏はセルジウ・ルカのヴァイオリン、デニス・ラッセル・デイヴィス指揮アメリカン・コンポーザーズ・オーケストラです。

[ここで音源] ヴァイオリン協奏曲第3楽章/ウィリム・ボルコム作曲/セルジウ・ルカ(ヴァイオリン)、デニス・ラッセル・デイヴィス指揮アメリカン・コンポーザーズ・オーケストラ/使用CD=英Argo 433 077-2/演奏時間=6分38秒

Harrison Portrait CDさてここで興奮をしずめるような落ち着いた作品をお送りしましょう。ルー・ハリソン作曲の《哀歌》という作品です。ハリソンは1917年生まれで今年亡く なりましたが、主に西海岸で作曲活動を行いました。西海岸というのは、東に比べますと、自由で開放的なところがありまして、いろんな文化を受け入れる土壌ができています。そんなオープンな感覚の西海岸で育ったハリソンはアジアの音楽に興味を持ちまして、日本や韓国、台湾も旅しています。

今日お送りします《哀歌》は、おそらくハリソンが親密にしていたと思われる若い指揮者が事故でなくなったのを追悼して書かれたのですが、そこに聴かれるのは短いながらも瞑想的で、透明感のある響きです。また時々聴かれるゴーンという銅鑼の響きは、インドネシアのガムランという民族音楽の影響を受けているようです。

ではバリー・ジェコウスキー指揮カリフォルニア交響楽団の演奏で、ルー・ハリソンの《哀歌》をどうぞ。

[ここで音源] 哀歌/ルー・ハリソン作曲/バリー・ジェコウスキー指揮カリフォルニア交響楽団/使用CD=Argo 455 590-2/演奏時間=4分41秒

Kamen CD今日は、最近のアメリカ作曲界に見られる、クラシックというジャンルに囚われない音楽を中心にお送りしておりますが、次にお送りしますのはマイケル・ケーメンという作曲家によります、《日の当たる教室》:アメリカ交響曲という曲です。

《日の当たる教室》というのは、スティーヴン・ヘレク監督、リチャード・ドレイファス主演によります1995年のハリウッド映画だったようです。これはどうやら音楽教師の人生を描いた映画だったようです。もともとバンドで音楽活動をしていた主人公のグレンが作曲の時間欲しさに高校の音楽教師となります。しかしそこで出会ったやる気のない生徒たちの姿を観て、グレンは音楽の素晴らしさを伝えようと奮起いたします。最後は高校生たちがグレンがかつて作ったというアメリカ交響曲という作品を演奏して感動のエンディングとなるようなのですが、今日お送りする作品は、まさにその映画で使われた音楽を演奏会用にアレンジしたものということのようです。

実は映画の主人公同様、作曲家のケーメンもかつてバンドで演奏していたこともあるようで、このオーケストラ作品の場合もエレキギターやベース、ドラムスなどが通常のオーケストラに加わります。映画を見れば、こういったロックの楽器が入ってくるのも不思議じゃないのかもしれませんが、単独でコンサートホールで聴いたとすると、それなりにアピールするように思います。

ではマイケル・ケーメン指揮BBC交響楽団ほかの演奏で、マイケル・ケーメンの5楽章からなる《日の当たる教室》:アメリカ交響曲から第4楽章と第5楽章を続けてお聴きいただきましょう。

[ここで音源] 《日の当たる教室》:アメリカ交響曲から第4楽章と第5楽章/マイケル・ケーメン指揮BBC交響楽団、ピノ・パラディーノ(ベース)、フィル・パルマー(エレキ・ギター)、アンドリュー・ニューマーク(ドラムス)/使用CD=英Decca 289 467 631-2/演奏時間=4分35秒、3分14秒

Marcley More Encores CDさて突然ですが、新年にクラシックといいますと、音楽の都ウイーンから衛星中継で放送されるニュー・イヤー・コンサートがありますね。ワルツやポルカな ど、楽しいオーケストラ小品が祝祭的な雰囲気を品良くもり立ててくれます。今日最後はその新年のコンサートを先取り…するようなものをお送りしたいと思います。クリスチャン・マークレーというミュージシャンが、ヨハン・シュトラウスの音楽の演奏されたレコードを使ってちょっとしたおフザけをしたものです。彼の『アンコール・続編』というアルバムからです。なお、決してラジオ局のプレーヤーがおかしくなった訳ではありませんので、ご注意を。ではどうぞ。

[ここで音源] アルバム『アンコール・続編』から<ヨハン・シュトラウス>/クリスチャン・マークレー作曲/クリスチャン・マークレー(ターンテーブル操作)/使用CD=米ReR CM1/演奏時間=2分54秒


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