Mr. Tの現代アメリカ音楽講座



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2003年12月9日アップロード


これは新潟県新津市にあるFM新津の番組「ドクターヨコサカのくらくらクラシック」において、2003年11月末に放送されたアメリカ音楽紹介の原稿で す。


[ここで音源] 映画『西部開拓史』のテーマ/アルフレッド・ニューマン作曲/アルフレッド・ニューマン指揮管弦楽団/使用CD=米Columbia CK 66691(アルバム『Music from Hollywood』)/演奏時間=3分12秒

みなさん、こんにちは。現代アメリカ音楽、ご案内の谷口昭弘です。ただいまお送りしましたのは、ハリウッドの西部劇映画として有名な『西部開拓史』 のテーマ音楽でした。演奏はこの映画を担当したアルフレッド・ニューマン指揮によります管弦楽団でした。ジェームズ・スチュアート、ヘンリー・フォンダ、 ジョン・ウェインなど豪華な顔ぶれによる1962年の映画でしたが、このホルンの活躍するテーマ曲を聴きますと、物語が始まる前から、心が踊る感じがいた します。

今日の現代アメリカ音楽講座は、古き良きアメリカを思わせる、あるいは開拓者精神、フロンティア精神を思わせるような作品を中心にお送りしたいと思 います。

まずはロイ・ハリスという人の音楽をお送りします。ハリスという作曲家、オクラホマの片田舎に生まれ、ロサンゼルスに育ち ました。その後、かのフランスはパリに渡って音楽の勉強をしたのですが、もともと農家であった自分のルーツを捨てきれなかったのか、洗練されたフランス的 な音楽には染まらず、アメリカ土着の響きに根ざした音楽を書きました。

今日はそんなハリスの作品から、まずは小編成ながら雄大な感じのするヴァイオリン・ソナタの第1楽章、そして《アメリカン・バラード》第1という、 民謡を元にしたピアノのための組曲から、楽しい<コッド・レバー・アイル>という小品をお送りします。ちなみに《コッド・レバー・アイル》という民謡は、 どうやら長年の夫婦生活に疲れた旦那さんが愚痴をこぼすという内容の歌詞になっているようです。では、ロイ・ハリスのヴァイオリン・ソナタの第1楽章と 《アメリカン・バラード》第1番から<コッド・レバー・アイル>を続けてお送りします。演奏はアレキサンダー・ロスのヴァイオリン、リチャード・ジムダー スのピアノです。

ヴァイオリン・ソナタから第1楽章/ロイ・ハリス作曲/アレキサンダー・ロス(ヴァイオリン)、リチャード・ジムダース(ピアノ)/使用CD=米 Albany TROY 105/演奏時間=6分56秒

《アメリカン・バラード》第1番から<コッド・レバー・アイル>/ロイ・ハリス作曲/リチャード・ジムダース(ピアノ)/使用CD=米Albany TROY 105/演奏時間=2分02秒

つづいてはペギー・スチュアート・クーリッジ作曲によります《開拓者たちの踊り》という作品です。このクーリッジという女性 の作曲家、組曲《グランド・キャニオン》でおなじみのファーディ・グローフェにも教えを乞うたとされるユニークな経歴の持ち主でアーサー・フィードラー時 代のボストン・ポップスのために親しみやすい作品を書いた人のようです。今回お送りします《開拓者たちの踊り》という3つの楽章からなる作品はオランダや イギリス、ベルリンやモスクワで演奏されたようですが、アメリカ国外の人たちにも分かりやすい、いかにもアメリカらしい作風で書かれており、映画音楽の影 響も顕著に聞かれます。

ではペギー・スチュアート・クーリッジの《開拓者たちの踊り》をジークフリート・ランダウ指揮ウェストフェリア交響楽団の演奏でどうぞ。

開拓者たちの踊り/ペギー・スチュアート・クーリッジ作曲/ジークフリート・ランダウ指揮ウェストフェリア交響楽団/使用CD=米VoxBox CDX5157

今日最後はドン・ギリスという人の《アラモ》という作品をお送りします。アラモといいますのはテキサス州にある砦の名前で す。かつてテキサスはスペインの配下にあり、苦しい生活を余儀なくされていたのですが、何とか自分達の自由を獲得しようと決起した兵士たちがこのアラモの 砦に立ちこもって抵抗したと言われております。結果は多勢のスペイン軍がテキサス独立運動の軍を全滅させてしまうのですが、これが他の地域のアメリカ人た ちの戦意を高揚させることになり、やがてテキサスは一つの共和国として独立するのだそうです。この時「アラモを忘れるな、リメンバー・ジ・アラモ」という スローガンが発せられたというのですが、これは皮肉にも真珠湾攻撃をアメリカが受けた時「リメンバー・パール・ハーバー」として蘇ることになるのでした。

さてギリスの作曲したオーケストラ作品《アラモ》は、この戦いの物語を細かく描写する訳ではないのですが、ギリスが、現在博物館となっているアラモ 砦を訪れた時の印象がもとになっているようで、この砦に刻まれた歴史の重さに思いを馳せ、それを音に託したようです。若干脳天気に聴こえる箇所もあるので すが、心に深く訴えてくるところもあります。

では、作曲者ドン・ギリスの指揮新交響楽団の演奏で《アラモ》をどうぞ。

[ここで音源] アラモ/ドン・ギリス作曲/ドン・ギリス指揮新交響楽団/使用CD=英Datton Vocalion CDLK 4163/演奏時間=13分42秒



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