Mr. Tの現代アメリカ音楽講座



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2003年11月3日アップロード


これは新潟県新津市にあるFM新津の番組「ドクターヨコサカのくらくらクラシック」において、2003年8月末に放送されたアメリカ音楽紹介の原稿です。


[ここで音源] 音楽祭のプレリュード/アルフレッド・リード作曲/アルフレッド・リード指揮東京佼成ウインド・オーケストラ/日 佼成出版社 KOCD-3502/演奏時間=4分56秒

現代アメリカ音楽講座の時間です。お相手はいつもの通り、谷口昭弘です。華々しいファンファーレの印象的なこの作品、吹奏楽をおやりになる方には有名な曲かもしれません。アルフレッド・リードという作曲家によります《音楽祭のプレリュード》という作品でした。

今月のこのコーナー、いつもの通り、私の独断と偏見でお送りしますが、流れとしては、管楽器から弦楽器といった感じになっております。従いまして、しばらくは冒頭の吹奏楽の曲の「管」の響きを、まずは続けて行きたいと思います。

作品はJ. J.ジョンソンという人の作った、ブラスのための詩、《ポエム・フォー・ブラス》という作品です。作曲者のJ. J. ジョンソンという人、ジャズのトロンボーン奏者として名前が知られておりますが、この作品も、ジャズとクラシックがうまく混ざり、独特の雰囲気が出来上がっております。最近車にハイブリッド・カーというのが出ておりますね。これは伝記とガソリンの両方を上手く使い分けて走る車のようですが、これからお送りする《ポエム・フォー・ブラス》という作品の場合も、クラシックとジャズの両方を上手く使い分けて、一つの作品となっているよううです。

では、J. J. ジョンソンの《ポエム・フォー・ブラス》、ガンサー・シュラーのアンサンブルの演奏でお聴きいただきましょう。

[ここで音源] ポエム・フォー・ブラス/J. J. ジョンソン作曲/ガンサー・シュラー指揮のアンサンブル/使用CD=米Sony (Columbia/Legacy) CK 64929(アルバム『The Birth of the Third Stream』)/演奏時間=9分53秒

ジャズに限らずポピュラー音楽というのは、アメリカ音楽文化全体からみて、大きな遺産ともいえると思うのですが、そんなポピュラー音楽をクラシックとハイブリッドにした、アメリカらしい作品をお送りします。デヴィッド・ソルジャー作曲の《紫外線の線路》という、ちょっと謎めいたタイトルの作品です。作曲者によりますと、この作品、ミシシッピーのベントニアという町を訪れた時の印象が強く作品に影響しているそうです。そして実際に聴こえてきますのは、例えば冒頭にはバーやクラブで聞こえてくるピアノや人々の会話、その他には都市の喧騒、そして、ムードたっぷりのピアノソロなどでしょうか。ここまでいろんな音楽が混ざりあってますと、ハイブリッドというよりは、「ごった煮」に近いところもあるかもしれません。なお作品の最後は、タイトルの《紫外線の線路》という言葉に合わせたのか、列車が遠のいていくような音も模倣されているようです。

では、デヴィッド・ソルジャー作曲の3つの楽章からなるオーケストラ作品《紫外線の線路》から2つの楽章を続けてお送りします。リチャード・アーデン・クラーク指揮マンハッタン室内管弦楽団の演奏です。

[ここで音源] 紫外線の線路/デヴィッド・ソルジャー作曲/リチャード・アーデン・クラーク指揮マンハッタン室内管弦楽団/使用CD=米Newport Classic NPD 85589/演奏時間=5分27秒、6分02秒

今日お送りしておりますアメリカ音楽、特に最初の2曲は、管楽器の響きが多い作品をお送りしてきましたが、ここからは、弦楽器のみで演奏される作品をお送りしたいと思います。アーサー・フットという人のピチカートとアダージェットです。ピチカートというのは弦楽器の弦を弾いて音を出す演奏法で、オーケストラの弦楽器が一同に介してこの奏法で演奏しますと、独特の面白さがでてまいります。中間部は、ピチカートではなく、普通に弓で弾くのですが、アダージェットというのは緩やかなテンポのことで、ピチカートで演奏する部分の速いテンポと対比されます。

では、レイモンド・レッパード指揮インディアナポリス交響楽団の演奏で、アーサー・フットの《ピチカートとアダージェット》をどうぞ。

[ここで音源] ピチカートとアダージェット/アーサー・フット作曲/レイモンド・レッパード指揮インディアナポリス交響楽団/使用CD=英Decca 458 157-2(アルバム「American Dreams」)/演奏時間=7分25秒

最後も弦楽器のみの音楽で締めくくりましょう。アパラチア山脈に伝わる民謡をヴァイオリン、チェロ、コントラバスの3人が演奏する『アパラチアの旅』というアルバムがあるんですが、これはチェロにはあのヨーヨー・マも参加しているというもので、アメリカでは随分ヒットいたしました。今日はこの『アパラチアの旅』というアルバムからヨーヨー・マのチェロとマーク・オコーナーのヴィオリンのデュオによります《ライムロック》という2分半ほどの楽しい曲をお届けします。

[ここで音源] ライムロック/民謡(マーク・オコーナ、エドガー・メイヤー編曲)/ヨーヨー・マ(チェロ)、マーク・オコーナー(ヴァイオリン)/使用CD=米Sony Classical SK 66782(アルバム「Appalachian Journey」/演奏時間=2分28秒



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