Mr. Tの現代アメリカ音楽講座



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2003年3月9日アップロード


これは新潟県新津市にあるFM新津の番組「ドクターヨコサカのくらくらクラシック」において、2002年12月末に放送されたアメリカ音楽紹介の原稿です。


みなさんこんにちは。フロリダ州立大学院の谷口です。

12月の現代アメリカ音楽講座、いつものように、クリスマスにちなんだアメリカ音楽をお送りします。

まずは、クリスマスのにぎやかな雰囲気を持ったニコライ・ベレズウスキーのクリスマス祝祭序曲をお送りします。1900年ロシア生まれのベレゾウスキーは22歳の時からニューヨークに移住して以来、ヴァイオリン奏者、指揮者、作曲家として活躍したとされています。1943年に初演された《クリスマス祝祭序曲》は、鈴の音による軽やかで華やかな雰囲気が中心に展開されまして、最後はクリスマスのプレゼントなんでしょうか、ゼンマイ仕掛けのお人形さんも登場するようです。演奏はアーサー・ベネット・リプキン指揮オスロー・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、ベレゾウスキーの《クリスマス祝祭序曲》です。

クリスマス祝祭序曲作品30の2(1943)/ニコライ・ベレゾウスキー作曲/アーサー・ベネット・リプキン指揮オスロー・フィルハーモニー管弦楽団/使用LP=米CRI 209/演奏時間=7分26秒

オーケストラの演奏、もう一つお送りしましょう。ボストン・ポップス管弦楽団によります《クリスマス・ワルツ》です。これはクリスマスにふさわしい4つの歌をアンジェラ・モーリーという人が編曲したものです。メドレー構成になっておりまして、その中心にはフランク・シナトラのために書かれた1954年のヒット曲《クリスマス・ワルツ》が使われています、それに加えて1963年アンディ・ウィリアムズの歌で大ヒットした《イッツ・ザ・モスト・ワンダフル・タイム・オブ・ジ・イヤー》、1950上映の映画の挿入歌《シルバー・ベルズ》、そして、直接クリスマスとは関係ないのですが、ミュージカル《サウンド・オブ・ミュージック》で歌われた<わたしのお気に入り>も入っています。

では、キース・ロックハート指揮ボストン・ポップス管弦楽団の演奏で、《クリスマス・ワルツ》をどうぞ。

クリスマス・ワルツ/アンジェラ・モーリー編曲/キース・ロックハート指揮ボストン・ポップス管弦楽団/使用CD=RCA 09026 63252-2(アルバム「Holiday Pops」)/演奏時間=4分29秒

続いては、アメリカのクリスマス・ソング、クリスマス・キャロルを4つ続けてお聴きいただきましょう。まずは《雪だるまのフロスティ》。昨年のクリスマス特集で《赤鼻のトナカイ》をお送りした時、実はそのトナカイ君にはルドルフという名前がついているというお話をしたのですが、今度は雪だるまのフロスティの登場です。そしてこの《雪だるまのフロスティ》という歌、日本では《風も雪も友達だ》とか《吹けよ風》というタイトルになっているそうで、雪だるまというよりは、雪の中に元気に遊ぶ子供たちの歌という感じになっているそうです。残念ながら私は覚えていませんが、スタジオの方たちはいかがでしょうか? 今日お送りする録音はボーカルをジーン・オートリーが担当しているものです。彼は《赤鼻のトナカイ》のオリジナルも歌っています。

二曲目は《ジングルベル・ロック》。ちょっとハワイアンなイントロで始まる50年代のクリスマスソング。《ジングルベル》もアメリカのクリスマスソングとしては有名ですが、こちらの方は独特のスイング感もあるせいか、もっとアメリカっぽい感じがいたします。今日はボビー・ヘルムズの歌でお送りします。

三曲目はムードいっぱいの《クリスマスの歌》。メル・トーメというジャズ・シンガーが作曲したものですが、クリスマスの情景がいろいろ描かれています。例えば家の外のくりの実やエスキモー(イヌイット)のような服を来た人たち、家の中では暖かな七面鳥や子供たちに送られたクリスマスのプレゼントなど、次々とイメージが浮かんでくるようです。今日お送りするのはナット・キング・コールのヴォーカルの録音です。まさに「クラシック」、古典ですね。

四曲目はまた雰囲気をかえてファンファーレ風の《もろびとこぞりて》。賛美歌の一つとしても有名なこの作品、今日はエンパイア・ブラスによる鮮やかな金管合奏のアレンジでお届けします。

では、クリスマスの歌4つを続けてどうぞ!

雪だるまのフロスティ/スティーヴ・ネルソン、ジャック・ロリンズ作曲・作詞/ジーン・オートリー(ヴォーカル)/使用CD=Time-Life Music 18762-2 (アルバム『The Time-Life Treasury of Christmas』)/演奏時間=2分50秒

ジングルベル・ロック/ジョー・ビール、ジム・ブース作曲・作詞/ボビー・ヘルムズ(ヴォーカル)/使用CD=Time-Life Music 18762-2 (アルバム『The Time-Life Treasury of Christmas』)/演奏時間=2分09秒

クリスマスの歌/メル・トーメ作曲/ナット・キング・コール/使用CD=Time-Life Music 18762-2 (アルバム『The Time-Life Treasury of Christmas』)/演奏時間=3分09秒

もろびとこぞりて/ローウェル・メーソン作曲(ヘンデルにもとづく)/エンパイア・ブラス/使用CD=英EMI CDC7 49097 2(アルバム『Joy to the World: Music of Christmas』)/2分23秒

今日最後はやはりクラシックの番組らしく、交響曲をお送りします。ウィリアム・ヘンリー・フライの《サンタクロース》という曲で、その副題は《クリスマス交響曲》といいます。フライという作曲家、アメリカでも音楽史の本に出てくる他はほとんど知られておりませんが、1813年から84年ということで、19世紀の半ばから後半にかけて活躍した作曲家といえるのでしょうか。今日お送りするクリスマス交響曲も19世紀のロマンティックな音楽を踏襲しながらも、どこかもっとメルヘンチックです。全体は約25分強の大作なのですが、今日は後半の13分あまりをお聴きいただきます。ここではまず、クリスマス間近の冬、木枯らしの吹き荒れる光景が現れます。寒々とした音が、どこかしら寂しそう。しかし空の雰囲気がちょっと変わるとソリにのったサンタクロースが鈴の音とともにやってきます。ここでは冬の寒さも忘れて暖かな雰囲気に。クリスマス・イヴのプレゼントを持ってきたサンタさんの登場という訳です。夜はくれて、こんどは天から《アデステ・フィデリス》という賛美歌が聞こえてきます。最後はイエス・キリストの生誕を祝うこの歌が盛大にオーケストラで奏されて曲が閉じられます。

では、ウィリアム・ヘンリー・フライ作曲のサンタクロース:クリスマス交響曲、トニー・ロウ指揮ロイヤル・スコティッシュ管弦楽団の演奏でどうぞ。

サンタクロース:クリスマス交響曲/ウィリアム・ヘンリー・フライ作曲/トニー・ロウ指揮ロイヤル・スコティッシュ管弦楽団/使用CD=香港Naxos 8.559057/演奏時間=13分45秒



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