Mr. Tの現代アメリカ音楽講座



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2002年7月27日アップロード


これは新潟県新津市にあるFM新津の番組「ドクターヨコサカのくらくらクラシック」において、2002年8月末に放送されたアメリカ音楽紹介の原稿です。


みなさん、こんにちは。フロリダ州立大学院の谷口です。今月もアメリカのクラシック音楽、盛りだくさんでまいりましょう。

最初はおもちゃのピアノ、トイ・ピアノの音をお楽しみいただきましょう。マーガレット・レン・タンの演奏で、最初はスティーヴン・モンテーニュの作品《ミラベッラ(タランテラ)》、続いてフィリップ・グラスの《モダンな愛のワルツ》の2曲です。トイ・ピアノ。楽器といえどもおもちゃ、おもちゃといえども楽器ということになるかもしれませんけれど、特にこのCDで使われているピアノは白い鍵盤も黒い鍵盤も全部ついていて、鍵盤の幅こそ本物のピアノよりも小さいのですが、なかなか本格的な音楽も演奏できるものですね。

ではさっそくマーガレット・レン・タンのおもちゃのピアノによる演奏をどうぞ。

[ここで音源] ミラベッラ(タランテラ)/スティーヴン・モンテーニュ作曲/マーガレット・レン・タン(トイ・ピアノ)/使用CD=米Point Music 456 345-2(アルバム「The Art of the Toy Piano」)/演奏時間=3分00秒

[ここで音源] モダンな愛のワルツ/フィリップ・グラス作曲(マーガレット・レン・タンによる2台トイ・ピアノのためのトランスクリプション)/マーガレット・レン・タン(トイ・ピアノ2台--多重録音)/使用CD=米Point Music 456 345-2/演奏時間=3分25秒

続いては、ジェローム・モロスの《大風呂敷な物語》をお送りします。ジョローム・モロスといえば、以前この番組でお送りしました、ハリウッドの西部劇映画『大いなる西部』のテーマ音楽が有名なのですが、この、オーケストラのために書かれた《大風呂敷な物語》の場合は、タイトルの通り、スケールの大きな西部の草原に加えて、ブルースの影響、あるいは元気はつらつのアメリカと、いろんなものが混ざっているようです。

ではジョアン・ファレッタ指揮ニュージーランド交響楽団の演奏で、ジェローム・モロスの《大風呂敷な物語》をどうぞ。

[ここで音源] 大風呂敷な物語/ジェローム・モロス作曲/ジョアン・ファレッタ指揮ニュージーランド交響楽団/使用CD=米Koch International 3-7367-2/演奏時間=9分04秒

さて、ここからはアメリカの教会で歌われている賛美歌をご紹介しましょう。特に今回は私が実際に教会で歌っているものから、独断と偏見で選んでお送りします。

まずは、マーティー・ホーガンというシンガー・ソング・ライターが作った《すべての病を癒す方》。「すべての病を癒すかた、明日の光り、我々の恐れを超えた平和を、悲しみを超えた希望をお与えください」とイエス・キリストに祈る、暖かく素朴な歌です。

2曲目は《ハレルヤ! 主イエスは天に召される》。これは、イエスが十字架での死を遂げて、3日目に復活したのを祝って行われるイースター、復活祭の歌として私の教会では定番となっている歌です。このCDではそのイエス復活の喜びが、オルガンとシンバルによる華やかなアレンジで聴かれます。

では以上賛美歌2つを、ニューヨークの神聖トリニティー・バッハ聖歌隊の演奏でお送りします。指揮はリチャード・エリクソンです。

[ここで音源] すべての病を癒(いや)す方/マーティー・ホーガン(リチャード・エリクソン編曲/リチャード・エリクソン指揮神聖トリニティー・バッハ/使用CD=米Augsburg Fortress 3-308(アルバム「Joining Hearts & Voices: Hymns and Songs from "With One Voice"」)/演奏時間=3分21秒

[ここで音源] ハレルヤ! イエスは天に召される/デヴィッド・N・ジョンソン(リチャード・エリクソン編曲/演奏時間=2分02秒

アメリカの賛美歌もう2つお聴きいただきましょう。今度は日本でも有名な《いつくしみ深い》。このとても優しい感じの歌は、ジョセフ・M・スクライブンという人が作詞したもの。カナダで教師として生計を立てたスクライブンが生まれ故郷のアイルランドにいる母のことを思ってこの詩を綴ったのだといいます。日本では、川路柳紅(りゅうこう)という人が「輝く夜空の星の世界よ」という歌詞を付けておりまして、学校で愛唱歌として歌わりたりもしているようです。なお作曲したのはチャールズ・コンヴァースという人です。

2曲目は、もっとポピュラーな感じのするダニエル・シュッテの賛美歌で《主よ、私はここに》。神の救いの言葉が光とともに聞こえ、それまで闇にいた私たち人間が、今まさにそのお言葉に応えるといったドラマティックな内容の歌で、この演奏では、オヴィッド・ヤングという人が、大変聴き応えのある編曲をしています。

では以上2曲を、今度はアントン・アームストロング指揮聖オラフ聖歌隊の演奏でお送りします。ピアノ伴奏はダニエル・シュワントです。

[ここで音源] いつくしみ深い/チャールズ・コンヴァース作曲(ジョセフ・M・スクライブン作詞)/アントン・アームストロング指揮聖オラフ聖歌隊、ダニエル・シュワント(ピアノ伴奏)/使用CD=米St. Olaf Records E-2294(アルバム「Great Hymns of Faith」)/演奏時間=3分29秒

[ここで音源] 主よ、私はここに/ダニエル・シュッテ(作詞・作曲)、オヴィッド・ヤング(編曲)/演奏時間=5分27秒

今日最後は、ポピュラー音楽の名曲をアレンジしたものを2つお聴きいただきます。まずはコール・ポーターのミュージカル《キス・ミー・ケイト》から<ソー・イン・ラブ>。ジャズの世界ではスタンダードの1つとして有名かもしれませんが、今日はこれをモートン・グールドが編曲したものでお楽しみいただきます。ピアノの腕が達者だったグールド、この編曲では、ミュージカルのヒットナンバーが、ラフマニノフやチャイコフスキーのピアノ協奏曲を思わせる重厚な管弦楽曲になっています。なお、この編曲、淀川長治さんが司会をしていた、某テレビ曲の映画番組のエンディング・テーマとしても有名な演奏です。

続いてはライザ・ミネリが歌って大ヒットとなった《ニューヨーク・ニューヨーク》。これもいろんな編曲があるでしょうが、今回は自動車のクラクションを集めて、それらをピアノのような鍵盤で遠隔操作することによって演奏するウェンディー・メー・チャンバースの楽器でお送りします。その楽器の名もカー・ホーン・オルガンというのだそうです。

では<ソー・イン・ラブ>と《ニューヨーク・ニューヨーク》、2曲を続けてどうぞ。

ミュージカル《キス・ミー・ケイト》から<ソー・イン・ラブ>/コール・ポーター作曲(モートン・グールド編曲)/モートン・グールド(ピアノ)、モートン・グールド楽団/使用CD=米Time-Life TCD-434(アルバム「Broadway Melodies」)/演奏時間=4分02秒

ニューヨーク・ニューヨーク/ジョン・カンダール、フレッド・エップ作曲/ウェンディー・メー・チャンバース(カー・ホーン・オルガン)/使用CD=米Ellipsis Arts CD 3530(アルバム「Gravikords, Whirlies & Pyrophones」)/演奏時間=1分23秒



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