Mr. Tの現代アメリカ音楽講座



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2002年7月27日アップロード


これは新潟県新津市にあるFM新津の番組「ドクターヨコサカのくらくらクラシック」において、2002年7月末に放送されたアメリカ音楽紹介の原稿です。


みなさんこんにちは。フロリダ州立大学院の谷口です。

今月から現代アメリカ音楽講座は、原則的に、一つのテーマにこだわらず、私の感覚で自由に選んだアメリカ音楽をお届けすることにしたいと思います。これまで以上に幅広いアメリカ音楽の世界を感じ取っていただければ幸いです。

さっそく1曲目ですが、ロバート・ワードという人の《大草原序曲》という作品をお送りします。1957年に作曲されたこの《大草原序曲》、ヴァーモント州の学生オーケストラによって初演されたそうですが、もう40年以上前に作られた作品なのに、現在でも西部劇映画の一場面にでできそうな雰囲気のある、想像力をかきたてる演奏会用の序曲です。演奏は、ボダーム・ウォディッツコ指揮ポーランド放送管弦楽団です。

[ここで音源] 大草原序曲/ロバート・ワード作曲/ボダーム・ウォディッツコ指揮ポーランド放送管弦楽団/使用CD=米Bay Cities BCD-1010/演奏時間=5分44秒

2曲目は、ジョン・ノウルズ・ペインのオルガン曲、幻想曲とフーガ作品2の1をお送りします。1861年に作曲されたこの作品、オルガンの機能を充分に生かして、ほとばしる情感を、その卓越した演奏テクニックにたっぷりと表現しています。ものの本によりますと、同時代ヨーロッパでは、フランツ・リストも、技巧鮮やかなオルガン曲を書いていたといいます。

一方構成の方は、前半が技巧的なパッセージの幻想曲、後半ががっちりとしたフーガということで、バッハに遡る、オルガン作品の作り方がしっかり基礎にあることが伺いしれます。ではマリー・フォーベス・ソマヴィルのオルガンで、ペインの幻想曲とフーガ ホ短調 作品2の1をどうぞ。

[ここで音源] 幻想曲とフーガ ホ短調 作品2の1/ジョン・ノウルス・ペイン作曲/マリー・フォーベス・ソマヴィル(オルガン)/使用CD=米Raven OAR-460/演奏時間=6分08秒+5分34秒

3曲目はモートン・グールドという人の《インタープレイ》というピアノとオーケストラの作品からお送りします。モートン・グールドは、アメリカでは特に大平洋戦争前後に人気のあった作曲家で、クラシック・ポピュラーの垣根を越えて、いろんな様式で曲を書く、器用な人でした。一時期はあのジョージ・ガーシュインの後を継ぐとさえ言われておりまして、ジャズの影響を受けた親しみやすい作品も残しています。

今日お送りします《インタープレイ》、英和辞典には「交錯」とか「相互作用」といった訳語が見られますが、ピアノとオーケストラの協奏曲といった趣きもありまして、特にこれからお送りする第2楽章などは、ジャズやブルースの香りがいたします。

では、作曲者モートン・グールドのピアノ、そしてモートン・グールド楽団の演奏で、《インタープレイ》から第2楽章をどうぞ。

[ここで音源] 《インタープレイ》から第3楽章<ブルース>/モートン・グールド作曲/モートン・グールド(ピアノ)、モートン・グールド楽団/使用CD=米RCA Victor 09026-61651-2/演奏時間=4分37秒

続いては、ハロルド・アーレンの《アメリカ黒人組曲》という、ゴスペル風の作品をお送りしましょう。

ハロルド・アーレンはクラシックよりもポピュラー音楽の作曲家として知られておりまして、その最も有名な楽曲にミュージカル『オズの魔法使い』から《虹を越えて》というのがあります。その他にも、ジョージ・ガーシュインのお兄さん、アイラ・ガーシュインとブロードウェイ・ミュージカルもやっています。

今日お送りする《アメリカ黒人組曲》は、黒人霊歌やゴスペルの様式をうまく現代風に練り上げた作品で、アーレン自身も、詩を書いたテッド・ケーエラーという人も共に白人ながら、黒人の音楽家からも高い評価を得ているといいます。

では、ジュディー・ケイトのソプラノ、プレミア・ゴスペル・カルテット、ピーター・ハワードのピアノで、6つの曲からなる《アメリカ黒人組曲》から、今日は2つをお送りします。まずは、心の底から新しい人生への希望が見えてくる<アイ・ガット・ダット・フィーリン>、そして苦しい現実世界の中にも信仰を求め、最後は「どうぞ未来への道をお示しください」と神に願いを込める<この道は私をどこに導くのだろうか>、では以上2曲を続けてどうぞ。

[ここで音源] 《アメリカ黒人組曲》から<アイ・ガット・ダット・フィーリン>/ハロルド・アーレン作曲/ジュディ・ケイト(ソプラノ)、プレミア・ゴスペル・カルテット、ピーター・ハワード(ピアノ)/使用CD=米Premier PRCD 1004/演奏時間=1分59秒

[ここで音源] 《アメリカ黒人組曲》から<この道は私をどこへ導くのだろうか>/演奏時間=3分21秒

最後は気分をかえて、ジョン・フィリップ・スーサのマーチお送りします。

マーチというのは、力強いリズムと元気のよう吹奏楽の響きが楽しいのですが、トリオと呼ばれる中間部にきれいな旋律が出てくるのも面白さの一つではないでしょうか。

今日は、かつてスーザも指揮をして、その名を全米に知らしめたという、米国海兵隊軍楽隊の演奏で3曲、1899年の《海を越える握手》、1908年の《美中の美》、1890年の《士官候補生》の3つです。指揮はアルバート・シェッパー大佐です。

[ここで音源] 海を越える握手/ジョン・フィリップ・スーサ作曲/アルバート・ シェッパー大佐指揮米国海兵隊軍楽隊/使用CD=米Altissimo! 75442255 662/演奏時間=2分48秒

[ここで音源] 美中の美/演奏時間=3分32秒

[ここで音源] 士官候補生/演奏時間=2分35秒



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