Mr. Tの現代アメリカ音楽講座



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2002年4月22日アップロード


これは新潟県新津市にあるFM新津の番組「ドクターヨコサカのくらくらクラシック」において、2002年3月末に放送されたアメリカ音楽紹介の原稿です。


みなさんこんにちは。フロリダ州立大学院の谷口です。

現代アメリカ音楽講座は、割合オーケストラの曲を中心にお送りすることがおおいのですが、今回はあえてオーケストラの世界から離れて、まだまだ知られざるアメリカ音楽の深さを、器楽のソロ曲を中心として体験してみたいと思います。名付けて「まだまだあるぞ、アメリカ音楽」です。

まずは、アメリカ音楽を代表するポピュラー音楽のジャンル、ジャズを使ったガーシュインの作品をお送りしましょう。1926年に作曲された、3つの前奏曲です。この曲が作られた1926年というのは、まさにジャズが全米のエンタテーメント界を席巻した時代。ガーシュイン自身も、ピアニストとしてこの作品を録音しています。シンコペーションのきいたリズムとブルースの香りのする和音がいかにもアメリカという雰囲気です。

ではさっそく、ロジャー・シールズのピアノで、ガーシュインの3つの前奏曲をどうぞ。

[ここで音源] 3つの前奏曲/ジョージ・ガーシュイン作曲/ロジャー・シールズ(ピアノ)/使用CD=米VoxBox CD3X 3027(アルバム「Piano Music in America 1900-1945」CD3枚組の1枚目)

2曲目は、アーロン・コープランドのヴァイオリンとピアノのための二重奏曲をお送りします。

現在クラシック界では、最もアメリカらしい音楽を書いたとされる有名作曲家アーロン・コープランド、彼が1971年にフルートとピアノの瞑想的で美しい作品を書いたのですが、それを作曲者コープランドが、自らヴァイオリンとピアノのために編曲したのがこれです。透明感のある響きがアメリカの広さを感じさせ、特徴のあるリズムがその生命力を呼び起こす、魅力的な作品です。派手な技巧は影を潜めていますが、それゆえに、心の琴線にふれるかのような音楽になっています。

では、フリッツ・ギアハートのヴァイオリン、ポール・ターディフのピアノで、アーロン・コープランド作曲の、ヴァイオリンとピアノのための二重奏曲をどうぞ。

[ここで音源] ヴァイオリンとピアノのための二重奏曲/アーロン・コープランド作曲/フリッツ・ギアハート(ヴァイオリン)、ポール・ターディフ(ピアノ)/使用CD=米Koch International 3-7268-2(アルバム「American Violin」)/演奏時間=10分15秒

次は合唱曲に移りましょう。ランダル・トンプソンの《アレルヤ》という作品です。タイトルの「アレルヤ」、日本語では「ハレルヤ」と申しますが、これはもともとヘブライ語で「ヤ(=神)を賛美せよ」という意味なのだそうです。むろんキリスト教と深く結びついているのですが、このトンプソンの《アレルヤ》は、そういった教会の文脈を離れても、アメリカでは広く歌われております。もしかすると、アメリカ人の作曲家による合唱曲としては、もっとも人気のある作品かもしれません。

作品はこの「アレルヤ」に加えて最後に「アーメン」と、2つの言葉のみでできているのですが、その少ない歌詞から、音楽ならではの訴える力が浮かびあがってくるのが、おそらくこの作品の魅力なのでしょう。

では、チャールズ・ブラッフィー指揮カンザス市合唱団の演奏で、ランダル・トンプソンの《アレルヤ》をどうぞ。

[ここで音源] アレルヤ/ランダル・トンプソン作曲/演奏=チャールズ・ブラッフィー指揮カンザス市合唱団/使用CD=英Nimbus NI 5586(アルバム「Alleluia: An American Hymnal」 /演奏時間=7分36秒

最後はレナード・バーンスタインのクラリネット・ソナタをお送りします。1990年になくなったバーンスタイン、エネルギッシュな指揮で多くの人を魅了しました。しかし一方で、彼は作曲家としても名を高めました。ブロードウェイ・ミュージカル、《ウエストサイト・ストーリー》はナタリー・ウッド主演の映画にもなり、その素晴らしさを堪能された方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

そういったエンターテイメントな作品の他に、バーンスタインはコンサートでも聴けるような骨のある作品も書いています。今日お聞きいただきますクラリネット・ソナタでも、あのあけっぴろげな指揮姿とは違った内面的な響きのすることもあり、彼の知られざる一面を垣間見るような気持ちがいたします。ではロバート・パルマーのクラリネット、キャロル・アーチャーのピアノで、バーンスタイン24歳の時の作品、1942年作曲のクラリネット・ソナタから第2楽章をどうぞ。

[ここで音源] クラリネット・ソナタから第2楽章/レナード・バーンスタイン作曲/トッド・パルマー(クラリネット)、キャロル・アーチャー(ピアノ)/使用CD=Koch International 3-7148-2H1(アルバム「Hermit Songs」)/演奏時間=6分37秒



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