Mr. Tの現代アメリカ音楽講座



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2002年2月22日アップロード


これは新潟県新津市にあるFM新津の番組「ドクターヨコサカのくらくらクラシック」において、2002年2月末に放送されたアメリカ音楽紹介の原稿です。


[ここで音源] 金髪のジェニー/スティーヴン・フォスター作曲(ロジェー・ワーグナー編曲)/ロジェー・ワーグナー指揮ロジェー・ワーグナー合唱団/使用CD=日Eastworld(東芝EMI)TOCE-6410/演奏時間=2分55秒

みなさんこんにちは。フロリダ州立大学院の谷口です。ただいまお送りしましたのは、おなじみスティーヴン・フォスターの《金髪のジェニー》でした。演奏は、これまた日本でフォスターといえばこの合唱団といった感じの、ロジェー・ワーグナー合唱団でした。

今月の現代アメリカ音楽講座は、このフォスターのような何となく懐かしい響きのするアメリカ音楽の数々を選んでお送りしたいと思います。

最初にお送りしますのは、元気いっぱいのアメリカらしさと懐の暖かいアメリカさの両方を体験できる作品、ジョージ・ホワイトフィールド・チャドウィックという人の書いた、《シンフォニック・スケッチ》という曲です。タイトルが何となく暗示しているように、この曲はオーケストラがシンフォニックに、華やかになるのですが、一方で、スケッチ帳・らくがき帳に自分だけのための絵を書いてみる、そんな素朴さもあります。今日お送りしますのはこの《シンフォニック・スケッチ》の第1楽章で、<歓喜>というタイトルがついています。

冒頭の、胸踊るようなオーケストラは、自由奔放で、楽しさいっぱいなんですが、途中でホルンがファンファーレを吹き上げますと、突如そこには、懐かしいアメリカの暖かい懐が見えてくるという仕掛けになっています。雰囲気的には、何かこう、冒頭にお送りしたスティーヴン・フォスターの歌が聞こえてきそうな感じです。

ではさっそく、ネーメ・ヤルヴィ指揮のデトロイト交響楽団の演奏で、チャドウィックの《シンフォニック・スケッチ》から<歓喜>をどうぞ。

[ここで音源] 《シンフォニック・スケッチ》から、第1楽章<歓喜>/ジョージ・ホワイトフィールド・チャドウィック作曲/使用CD=英Chandos CHAN 9334/演奏時間=7分42秒

2曲目は、ヴァージル・トムソンという人の書いた、《賛美歌による交響曲》をお送りします。賛美歌を歌うということは、もちろん教会では普通に行われることですが、音楽に熱心なアメリカのご家庭を尋ねますと、家のピアノのそばに、賛美歌の本がさりげなく置いてあることもございます。もちろんご家族の方それぞれが好きなポピュラー・ソングやクラシックの名曲を集めた本、お子さんが普段習っているピアノの教則本もあるのですが、賛美歌も、普段なれ親しんでいる歌がたくさん載っているということで、家族で一緒に口ずさんだりすることもあるようです。

ヴァージル・トムソンの《賛美歌による交響曲》は、なんでもアメリカの南部でよく歌われている賛美歌がちりばめられているそうで、そういった文脈で聴くと、なんとなく家庭的といいますか、プロの作曲家が書いているのに、どことなく素人っぽい無器用さが残っていて、独特の味わいがあります。また、第2楽章では、懐かしの蒸気機関車の音も聴かれるようですね。

それではトムソンの《賛美歌による交響曲》から第2楽章と第4楽章をお送りします。演奏はジェームズ・シダーレス指揮のニュージーランド交響楽団の演奏です、

[ここで音源] 《賛美歌による交響曲》から、第2楽章・第4楽章/ヴァージル・トムソン作曲/ジェームズ・シダーレス指揮ニュージーランド交響楽団/使用CD=香港Naxos 8.559022/演奏時間=4分49秒、5分34秒

続いては、ちょっと趣きを変えて、アーロン・コープランドのピアノ曲から2曲お送りしましょう。1曲目は《真夏のノクターン》。ノクターンというのは、夜に想像の想という字を書いて夜想曲といわれておりますが、静かな夜の雰囲気をピアノが奏でる、魅力的な作品です。ピアノを習われ方はショパンのノクターンをお弾きになったこともあるかもしれませんが、このノクターンもコープランドの手にかかりますと、何となくアメリカの広い草原の音楽となっているから不思議です。2曲目は《夕べの風によせて》という作品。こちらも、音から雰囲気が伝わってきます。

では、レオ・スミットのピアノで、コープランドのピアノ曲を2つ続けてどうぞ。

[ここで音源] 《真夏のノクターン》/アーロン・コープランド/レオ・スミット(ピアノ)/使用CD=米Sony Classical SM2K 66 345/演奏時間=2分01秒

[ここで音源] 《夕べの風によせて》/アーロン・コープランド/レオ・スミット(ピアノ)/使用CD=米Sony Classical SM2K 66 345/演奏時間=2分55秒

今日最後は、再び雰囲気をがらっと変えまして、華やかなオーケストラ作品で締めくくりたいと思います。ビクター・ハーバートという人の作ったメドレー《アメリカン・ファンタジア》です。このメドレーは、今日最初にお送りしたフォスターの歌、《故郷の人々》または《スワニー河》に加え、南北戦争の歌や、最後にはアメリカの国歌まで登場する賑やかな作品に仕上がっています。では、レナード・スラトキン指揮セントルイス交響楽団の演奏でどうぞ。

《アメリカ・ファンタジー》/ビクター・ハーバート作曲/レナード・スラトキン指揮セントルイス交響楽団/使用CD=米RCA Victor 09026-60983-2/演奏時間=10分00秒
 
 
 



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