Mr. Tの現代アメリカ音楽講座



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2001年12月24日アップロード


これは新潟県新津市にあるFM新津の番組「ドクターヨコサカのくらくらクラシック」において、2001年12月末に放送されたアメリカ音楽紹介の原稿です。


みなさんこんにちは。フロリダ州立大学院の谷口です。

今月の「現代アメリカ音楽講座」は、昨年の例に沿いまして、メリー・クリスマス。クリスマスにちなんだアメリカ音楽をお届けしましょう。

まずは、ボストン・ポップス管弦楽団によります、クリスマス音楽を集めたCDから、《グローリア》という曲をお届けしましょう。「天においては主に栄光あれ、地においては善意の人に平和あれ」と始まるラテン語の歌詞は、キリスト教のミサでもよく用いられるものですが、ここでは華やかなファンファーレとともに、いかにもクリスマスの祝祭的な雰囲気が醸し出されています。作曲したのは、テキサス州出身のランドル・ベースという人です。では、キース・ロックハート指揮のタングルウッド祝祭合唱団、ボストン・ポップス管弦楽団の演奏で、ベースの《グローリア》をどうぞ。

[ここで音源] グローリア/ランドル・ベース作曲/キース・ロックハート指揮タングルウッド祝祭合唱団、ボストン・ポップス管弦楽団/使用CD=RCA Victor 09026-63252-2/演奏時間=6分07秒

次はヒリアード・アンサンブルでおなじみのポール・ヒリアーが指揮をしたア・カペラ、無伴奏合唱によるクリスマス音楽をお届けします。1曲目は、《今日はイエスの誕生日》という曲です。救い主イエス・キリストの生誕を心から喜んでいる感じのするこの短い作品、1854年、ケンタッキーで編集された、手書きの楽譜をもとに、ヒリヤーが輪唱にしたバージョンをお送りします。

2曲目は祈りのような歌で、タイトルは《さまよいながら私は思う》。イエス・キリストが私たち人間を救うために、自ら十字架にかかって死ぬためにこうやって生まれてきたんだろうか、というのを問いかけるような感じで歌います。ジョン・ジェイコブ・ナイルズという人が1930年代に作曲したとされています。

3曲目は《ケンタッキーの酒宴の歌》。クリスマスとはいってもいつもおごそかに宗教的という訳ではなく、こういった酒を飲んでは楽しむことも、やはりアメリカではあったようですね。そんな人々の楽しむ姿が見えてきそうな愉快な曲です。なお、演奏には即興的なアレンジがされているそうです。

ではポール・ヒリヤー指揮プロ・アルテ・シンガーズ、ならびにインディアナ大学少年少女合唱団の演奏で、クリスマスの合唱曲3曲を続けてどうぞ。

[ここで音源] 今日はイエスの誕生日/エルドレス・ポーリナ・ブライアント作曲(ポール・ヒリヤー編曲)/ポール・ヒリヤー指揮インディアナ大学少年少女合唱団/使用CD=Harmonia Mundi France HMU 907233/演奏時間=0分56秒

[ここで音源] さまよいながら私は思う/ジョン・ジェイコブ・ナイルズ作曲(ヒリヤー編曲)/ポール・ヒリヤー指揮プロ・アルテ・シンガーズ/使用CD=Harmonia Mundi France HMU 907233/演奏時間=3分08秒

[ここで音源] ケンタッキーの酒宴の歌/ジョン・ジェイコブ・ナイルズ一家伝承曲/ポール・ヒリヤー指揮プロ・アルテ・シンガーズ/使用CD=Harmonia Mundi France HMU 907233/演奏時間=1分14秒

次はこれぞクリスマスという感じの、ハンドベルの演奏をお送りします。1991年に結成されたソノス・ハンドベル合奏団の演奏で、まずはルロイ・アンダーソンの《そりすべり》。鈴の音と鐘の音(ね)が心地よく合わさります。2曲目はアーヴィング・ベルリンの名曲、《ホワイト・クリスマス》。夢見るような素敵な情景が広がってくる、まさにハンドベルにはうってつけの曲です。3曲目は、クリスマスとは直接関係ないのですが、アメリカらしい作品ということで、アーロン・コープランドという人の《ホーダウン》をお送りします。これはカウボーイたちの踊りの音楽ですが、ハンドベルで聞きますと、いかにも鐘のように鳴っている箇所もあったりして、興味深いです。目の回るような見事な演奏テクニックにも注目してください。では、ジェームズ・メレディス指揮のソノス・ハンドベル合奏団で、クリスマスの名曲2つと、カーボーイのダンス音楽をどうぞ。

[ここで音源] そりすべり/ルロイ・アンダーソン作曲/ジェームズ・メレディス指揮ソノス・ハンドベル合奏団/使用CD=Well-Tempered Productions WTP 5176/演奏時間=3分49秒

[ここで音源] ホワイト・クリスマス/アーヴィング・ベルリン作曲/ジェームズ・メレディス指揮ソノス・ハンドベル合奏団/使用CD=Well-Tempered Productions WTP 5176/演奏時間=3分19秒

[ここで音源] <ホーダウン>(バレエ音楽《ロデオ》から)/アーロン・コープランド作曲/ジェームズ・メレディス指揮ソノス・ハンドベル合奏団/使用CD=Well-Tempered Productions WTP 5170/演奏時間=2分59秒

さてここからは、おなじみのクリスマス・ソングの数々です。1曲目はジェームズ・ピアポント作曲のおなじみ《ジングル・ベル》。もうこれなしにはクリスマスは始まらないといった感じの名曲ですが、もともとは11月の感謝祭という、別の祝日のために作られた音楽であったといわれております。これはポール・ベイトマン指揮クロウチ・エンド祝祭合唱団と、プラハ市フィルハーモニー管弦楽団の演奏で。2曲目は《ウィンター・ワンダーランド》。バーナードという人のクリスマス・ソングですが、クリスマスの鈴の音や白い雪、小鳥の歌、雪だるまなど、クリスマスならではの風情を込めた、楽しい歌です。これは、モーモン・タバナクル合唱団で。3曲目は《アイル・ビー・ホーム・フォー・クリスマス(クリスマスは家に帰るよ)》。大平洋戦争中に流行した曲で、戦場で戦う兵士たちが故郷の家族に向けて歌うという設定で、夢の中でしかかなわない家族との一緒のクリスマスを思う、切ないバラード調の歌です。これは、プラシド・ドミンゴの歌で。4曲目は賛美歌のナンバーとしてもおなじみの《もろびとこぞりて》。ヘンデルのオラトリオ《メサイア》からのメロディにもとづいて、アメリカのローウェル・メーソンという人が作曲したとされている作品です。これは、ユージン・オーマンディ指揮のフィラデルフィア管弦楽団と合唱団で。それでは、アメリカの生んだクリスマス・ソングの数々、以上4曲を続けてどうぞ。

[ここで音源] ジングル・ベル/ジェームズ・ピアポント作曲/ポール・ベイトマン指揮クロウチ・エンド祝祭合唱団、プラハ市フィルハーモニー管弦楽団/使用CD=Silva Classics SILKD 6026/演奏時間=1分56秒

[ここで音源] アイル・ビー・フォー・クリスマス(クリスマスは家に帰るよ)/キム・ガノン、ウォルター・ケント、バック・ラム作曲、リー・ホールドリッジ編曲/プラシド・ドミンゴ(テナー)、リー・ホールドリッジ指揮ウイーン交響楽団/使用CD==Sony MFK 66300/演奏時間=2分55秒

[ここで音源] もろびとこぞりて/ローウェル・メーソン作曲(ヘンデルにもとづく)/ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団・合唱団/使用CD=RCA Victor 09026-63712-2/演奏時間=2分09秒

クリスマス・ソング、もう少し続けましょう。まずはジェスター・ヘアストンという人の作った《マリアの小さな男の子》。このラテン・アメリカの雰囲気のする曲、もともとはあのハリー・ベラフォンテが有名にしたそうです。そういえば、南半球のラテン・アメリカではクリスマスが真夏。もしかすると、こういう曲が雪のクリスマスなんかよりも、ぴったりくるのかもしれませんね。これは、キース・ロックハート指揮のタングルウッド祝祭合唱団とボストン・ポップス管弦楽団の演奏でお送りします。2曲目は、またおなじみ、《赤鼻のトナカイ》。これは1949年、ニューヨークのマジソン・スクエアで、カウボーイ・シンガー、ジーン・オードリーが歌って大ヒットになった曲だそうなんですが、作曲者はジョニー・マークスといい、オリジナルのタイトルは《赤鼻のトナカイ・ルドルフ君》というのだそうです。日本ではなぜかこのルドルフ君の名前が知られてなくて、残念ですね、ルドルフ君。演奏はアーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団です。そして最後はポップな雰囲気で《サンタが町にやってきた》。この曲、「サンタさんが町にやってくるから良い子にしましょうね」というオトナの教育的配慮もある歌なんですが、日本では「私からメリークリスマス、あなたからもメリークリスマス」といった歌詞になっていて、やはりもともとの文脈が分からなくなっているようです。ではこれはフランク・シナトラの歌でお届けしましょう。

それでは、クリスマス・ソング3曲を、たっぷりとお楽しみくださいませ〜。

[ここで音源] マリアの小さな男の子/ジェスター・ハリソン作曲、パトリック・ホーレンベック編曲/キース・ロックハート指揮タングルウッド祝祭合唱団、ボストン・ポップス管弦楽団/使用CD=RCA Victor 09026-63252-2/演奏時間=3分38秒

[ここで音源] 赤鼻のトナカイ/ジョニー・マークス作曲、ハイマン編曲/アーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団/使用CD=RCA Victor 6428-2-RG/演奏時間=2分11秒

[ここで音源] サンタが町にやってきた/フレッド・クーツ、 ハヴェン・ジレスピー作曲/フランク・シナトラ(歌)、 アレックス・ストーダール指揮の楽団/使用CD=Sony CK 66413/演奏時間=2分33秒


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