Mr. Tの現代アメリカ音楽講座



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2001年6月25日アップロード


これは新潟県新津市にあるFM新津の番組「ドクターヨコサカのくらくらクラシック」において、2001年6月末に放送されたアメリカ音楽紹介の原稿 です。



[ここで音源] ラッパ吹きの休日/ルロイ・アンダーソン作曲/アーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団、アル・ハート、ロバート・モギルニッキ、アンド レ・カム(トランペット)/使用CD=RCA Victor 09026-61237-2/演奏時間=2分25秒

みなさんこんにちは。フロリダ州立大学院の谷口です。たったいまお送りしましたのは、おそらくみなさん、どこかでお聞きになった曲だと思います。こ れはルロイ・アンダーソンという人の作った《ラッパ吹きの休日》でした。アンダーソンが曲の題材としたラッパ、英語でビューグルというそうなのですが、こ れは普通、トランペットと呼ばれている楽器よりも少し短かめで、音程を変える3つのバルブがついてないものを指すのだそうです。軍隊の起床ラッパみたいな ものなのかもしれませんね。

今月の『現代アメリカ音楽講座』は、今お送りした《ラッパ吹きの休日》ほか、その作品が日本にも広く親しまれている、ルロイ・アンダーソンの作品を まとめてお送りしたいと思います。

まずは、ラッパと来ましたから、今度は楽器としての地位もしっかりしたトランペットを題材にした、やさしい作品《トランペット吹きの子守唄》をお送 りしましょう。軽快な軍隊のラッパと違い、甘い音色が魅力です。2曲目は、クラリネット4本による、息の合った演奏が楽しい、《クラリネット・キャン ディ》。このキャンディという言葉、はじめ私は音楽用語の一つかなと思って専門の辞典をめくってみたのですが、音楽のために何か特別な意味がある訳ではな くて、やはり飴やチョコレートのことを指しているようです。そうすると、キャンディを食べるときの、あのうきうきした気持ちが音楽になっているということ なのかもしれませんね。どうぞ楽しんで聴いてください。

では、アンダーソンの《トランペット吹きの子守唄》を、スーザン・スローターのトランペット独奏、レナード・スラトキン指 揮のセントルイス交響楽団の演奏で、《クラリネット・キャンディ》を作曲者ルロイ・アンダーソン指揮の管弦楽団の演奏でどうぞ。

[ここで音源] トランペット吹きの子守唄/ルロイ・アンダーソン作曲/スーザン・スローター(トランペット)、レナード・スラトキン指揮セントルイス交響楽団/使用CD =RCA Victor 09026-68048-2/演奏時間=3分23秒

[ここで音源] クラリネット・キャンディー/ルロイ・アンダーソン作曲/ルロイ・アンダーソン指揮管弦楽団、ヴィンセント・アバート、ハーバート・ブレイマン、ロ ジャー・ヒラー、バーナード・ポートノイ(クラリネット)/使用CD=MCA Classics MCAD2-9815-B/演奏時間=2分45秒

楽しいルロイ・アンダーソンの作品、次は機械を題材にした作品をお送りしましょう。まずはおなじみ、タイプライター。いまはワープロやパソコンの時 代ですから、もしかすると、タイプライターなんていうのは時代遅れなのかもしれませんが、曲の作られたのが1950年といいますから、まだアメリカでは、 きちんとした文章はタイプライターでということだったのではなのでしょうね。パソコンのキーボードだとここまでパチパチ音が出ませんけれど、この曲を聴い てしまうと、つい自分もこういうリズムのように打ってみたくなるから不思議です。

2曲目は《クラシックのジュークボックス》。ジュークボックスというのは、有料自動レコード・プレイヤーといった感じでしょうか。私の子どもの頃 は、喫茶店や温泉旅館なんかに行くと、ジュークボックスがおいてありまして、お金を入れて聴きたい曲の番号を押すと、自動にレコードが演奏されたもので す。このアンダーソンの作品では、そのプレイヤーがレコードを選んで演奏する場面が楽しく描写されています。でも聴こえてくるのは、どうやら歌謡曲ではな くて、クラシックの名曲の数々のようですね。

アンダーソン自演CDでは、アンダーソン指揮の管弦楽団で《タイプ ライター》、アーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団の演奏で、《クラシックのジュークボックス》を続けてお楽しみください。

[ここで音源] タイプライター/ルロイ・アンダーソン作曲/ルロイ・アンダーソン指揮管弦楽団/使用CD=MCA Classics MCAD2-9815-A/演奏時間=1分36秒

[ここで音源] クラシックのジューク・ボックス/ルロイ・アンダーソン作曲/アーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団/使用CD=RCA Victor 09026-61237-2/演奏時間=2分50秒

アンダーソンの作品、再び特定の楽器が活躍する曲をお送りします。今度は弦楽器です。まずは《フィドル・ファドル》。タイトルの一部にもなっている フィドルというのは、ヴァイオリンの別の名前です。とくに民謡などを演奏する時はこういう風に呼ばれるんですが、演奏の特徴として、弓で弦をゴシゴシこす るというのがあるようで、この作品は、そのフィドルの演奏を模倣したもののようです。

2曲目は《プリン・プラン・プルン》。これは弦をつまびいた時になる音をそのままタイトルにした曲で、中間部には、弾くだけでなく、こする音もでて くる、愉快な作品です。

では、《フィドル・ファドル》をボストン・ポップス管弦楽団の演奏で、《プリン・プラン・プルン》は、作曲者アンダーソンの指揮でどうぞ。

[ここで音源] フィドル・ファドル/ルロイ・アンダーソン作曲/アーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団/使用CD=RCA Victor 09026-61237-2/3分11秒

[ここで音源] プリン・プラン・プルン/ルロイ・アンダーソン指揮管弦楽団/使用CD=MCA Classics MCAD2-9815-A/演奏時間=2分29秒

次は踊りの曲を二つ。1曲目は《ブルー・タンゴ》。リズムはアルゼンチン生まれのタンゴなんですが、独特の旋律線がいかにもブルーな感じを醸し出し ています。アメリカならではの味わいのある作品といえるのではないでしょうか。2曲目は、《ワルツィング・キャット(ワルツする猫)》。木管楽器ががネコ のすねるような声をうまく真似して、楽しませてくれます。これも、ちょっとヨーロッパの社交場でのワルツにはお目にかかれないような作品です。では、アー サー・フィードラー指揮のボストン・ポップス管弦楽団の演奏で、《ブルー・タンゴ》と《ワルツィング・キャット》、2曲続けてどうぞ。

[ここで音源] ブルー・タンゴ/ルロイ・アンダーソン作曲/ルロイ・アンダーソン指揮管弦楽団/使用CD=MCA Classics MCAD2-9815-A/演奏時間=2分46秒

[ここで音源] ワルツィング・キャット/ルロイ・アンダーソン作曲/アーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団/使用CD=RCA Victor 09026-61237-2/演奏時間=2分49秒

American Piano Classicsここでちょっと趣きを変えて、アンダーソンの知られざる大作をお送り します。それはピアノ協奏曲です。この作品1950年代始めに2度演奏されて以来、作曲者もカタログから抹消してしまったのですが、1989年、トロント にて復活再演されたという結わくつきの作品でして、今日お送りしますCDは、ピアニストにスチュワート・グッドイヤー、指揮にトロント再演を担当したエ リック・カンゼルの演奏で録音されたものです。全体は3つの楽章からなる19分あまりの作品で、アンダーソンの作品としては異例の長さということになりま す。では、シンシナティー・ポップスの伴奏で、アンダーソンのピアノ協奏曲から、時間の都合で第3楽章のみをどうぞ。

[ここで音源] ピアノ協奏曲から第3楽章 アレグロ・ヴィヴォ/ルロイ・アンダーソン作曲/スチュワート・グッドイヤー(ピアノ)/エリック・カンゼル指揮シンシナティ 管弦楽団/使用CD=Telarc CD-80112(アルバム「American Piano Classics」)/演奏時間=6分00秒

今日最後はアンコールとして、短く素敵な音楽をお届けします。タイトルは《忘れてしまった夢》といいます。バーバラ・リーバーマンのピアノ、レナー ド・スラトキン指揮セント・ルイス交響楽団の演奏でどうぞ。

[ここで音源] 忘れてしまった夢/バーバラ・リーバーマン(ピアノ)、レナード・スラトキン指揮セント・ルイス交響楽団/使用CD=RCA Victor 09026-68048-2/演奏時間=2分28秒

(01.12.26.追記)《忘れられし夢》という訳も良いのかもしれない(02.7.18.訂正)。
 


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