Mr. Tの現代アメリカ音楽講座



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2000年12月23日アップロード


これは新潟県新津市にあるFM新津の番組「ドクターヨコサカのくらくらクラシック」において、2000年12月13日に放送されたアメリカ音楽紹介の原稿です。


[ここで音源] そりすべり/ルロイ・アンダーソン作曲/アーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団/使用CD=RCA Victor 09026-63712-2/2分59秒

みなさんこんにちは。フロリダ州立大学院の谷口です。

たった今お送りしましたのは、皆さん、この季節、どこかでお聞きなった曲かと思います。実はこの曲、アメリカの作曲家、ルロイ・アンダーソンが1948年に作曲した《そりすべり》というタイトルの曲です。このアンダーソンという人、アーサー・フィードラー時代のボストン・ポップスの編曲家でもあったのですが、この演奏も、そのアーサー・フィードラーとボストン・ポップスによるものでした。

今回の「現代アメリカ音楽講座」は、アメリカの作曲家による、クリスマスの音楽をお届けしたいと思います。

まずは、ヒリアード・アンサンブルの指揮者としておなじみの、ポール・ヒリヤーの指揮による、ア・カペラ(無伴奏合唱)のクリスマス音楽をお送りしましょう。

1曲目は、18世紀の作曲家ダニエル・リードによります、《羊たちが群れの番をしていたとき》です。これは、羊飼いたちが、夜通し羊の番をしていると、天使がやってきて、キリストの誕生を告げるという場面が、生き生きとした音楽で綴られていくものです。続いてチャールズ・アイヴズの《クリスマス・キャロル》。これは、もともと歌曲だったのを、ポール・ヒリヤーが編曲したものです。「ベツレヘムの小さな星よ! 今見えるのは汝なのか」といった感じで歌い出だされます。3曲目はヘンデルのオラトリオ《メサイア》からのメロディにもとづいて、アメリカのローウェル・メーソンという人が作曲したとされている(注1)、《この世の喜び》、これは日本では《もぞびとごぞりて》と題されているものです。やはりこれも、救世主キリストの誕生を祝う内容です。

では、以上、3曲の合唱曲を、ポール・ヒリヤー指揮シアター・オブ・ヴォイシスの演奏でどうぞ。

[ここで音源] 羊飼いが群れを番していた時/ダニエル・リード作曲/ポール・ヒリヤー指揮シアター・オブ・ヴォイシス/Harmonia Mundi France HMU 907079/演奏時間=4分30秒

[ここで音源] クリスマス・キャロル/チャールズ・アイヴズ作曲(ポール・ヒリヤー編曲)/ポール・ヒリヤー指揮シアター・オブ・ヴォイシス/Harmonia Mundi France HMU 907079/演奏時間=2分53秒

[ここで音源] もぞびとこぞりて/ローウェル・メイソン作曲/ポール・ヒリヤー指揮シアター・オブ ・ヴォイシス/Harmonia Mundi France HMU 907079/演奏時間=1分38秒

(注1)CDによっては、「民謡」とするもの、ヘンデル作曲とするものがある。ここでは、ボストン・カメラータのジョール・コーヘンの表示にしたがって、メイソン作曲とした。彼は「An American Christmas」というCDに、この作品を収録している。

ア・カペラの合唱、今度はフォスターの歌曲のCDなどでおなじみの、ロジェ・ワーグナー合唱団が最近リリースしたアルバムからお届けします。曲は、黒人霊歌をジェスター・ヘエアストンという人が編曲したもので、タイトルは《世界に告げよ》(注2)といいます。これもやはりイエス・キリストの誕生を祝うこの黒人霊歌なのですが、アフリカ系アメリカ人の独特なリズム感が、今まで聴いてきた「西洋風」な合唱作品と、一味も二味も違います。ああ、こういったのもアメリカ音楽の一つなんだな、と思わせてくれるのではないでしょうか。

では、さっそくですが、1992年、父であり合唱団の創始者である、ロジェ・ワーグナーが亡くなった後を引き継ぐ、娘さんのジャニーヌ・ワーグナーの指揮で、黒人霊歌《世界に告げよ》をどうぞ。

[ここで音源] 世界に告げよ(注2)/黒人霊歌(ジェスター・ヘアストン編曲)/ジャニーヌ・ワーグナー指揮ロジェ・ワーグナー合唱団/東芝EMI(Eastworld)TOCE-55185/演奏時間=2分07秒

(注2)CDジャケットには《行きて山の上で告げよ》と、歌詞の直訳のタイトルが書いてある。

では、ちょっとこの辺で、がらっと雰囲気をかえまして、ジョン・ウィリアムズ指揮ボストン・ポップス管弦楽団によります、クリスマスの映画音楽からお送りしましょう。ジョン・ウィリアムズが音楽を手がけた「ホーム・アローン」です。クリスマスにたった一人残されてしまった少年ケビン、そしてその家に忍び寄る泥棒たちの繰り広げる痛快な戦いのシーンを思い出されるかたもいらっしゃるかもしれません。アメリカには古典的なクリスマス映画もありますが、最近日本では、これをビデオでご覧になるご家族の方も、いらっしゃるかもしれません。今日はその「ホーム・アローン」から、美しいメロディーが魅力的な《記憶のどこかに》という歌と、ひっくり返る泥棒たちが出てきそうな《クリスマスの闘い》という短いオーケストラ曲をお送りしましょう。

では、映画音楽を担当したジョン・ウィリアムズの指揮、ボストン・ポップス管弦楽団の演奏で、映画「ホーム・アローン」からの音楽2曲をどうぞ。

[ここで音源] 映画「ホーム・アローン」から《記憶のどこかに》/ジョン・ウィリアムズ作曲/ジョン・ウィリアムズ指揮ボストン・ポップス管弦楽団、タングルウッド祝祭合唱団(注3)/Sony Classical SK 48232/演奏時間=3分46秒

[ここで音源] 映画「ホーム・アローン」から《クリスマスの闘い》/ジョン・ウィリアムズ作曲/ジョン・ウィリアムズ指揮ボストン・ポップス管弦楽団/Sony Classical SK 48232/演奏時間=1分09秒

(注3)テープのアナウンスでは、合唱へのクレジットが抜けている。

では、ここからは、みなさまもよくご存じのクリスマス・ソングを続けてお聴きいただきましょう。

まずは、おなじみ《ジングル・ベル》。これは1857年、ジェームズ・ピアポイントが作詞・作曲したものなのですが、もともとはクリスマスではなく、11月の感謝祭という祝日のために作られたものでした。この感謝祭の週の日曜日に《ジングル・ベル》を歌った子どもたち、曲が大好きになりまして、もう一度クリスマスで歌いたいということになりました。それ以来、そりの鈴の音を題材にしたこの曲は、クリスマスの定番ということになったようです。今日は、この《ジングル・ベル》を、アメリカの作曲家、モートン・グールドが編曲したものをお送りします。

2曲目は《ウィンター・ワンダーランド》。クリスマスの鈴の音や白い雪、小鳥の歌、雪だるまなど、クリスマスならではの風情を込めた、楽しい曲歌です。これは、クロウチ・エンド音楽祭合唱団、ポール・ベイトマン指揮プラハ市交響楽団の演奏でお送りします。

3曲目は、《アイル・ビー・ホーム・フォー・クリスマス(クリスマスは家に帰るよ)》。この曲が作曲されたのは、1943年、時は太平洋戦争の真っただ中でした。アメリカ人の男性の多くが、兵士として、自分たちの家から遠く離れた異国の地でクリスマスを迎えたのですが、その時、ビンク・クロスビーの歌ったのが、この《クリスマスは家に帰るよ》でした。今日は、そのビンク・クロスビーの歌声を、ジョン・スコット・トロッター・オーケストラの伴奏で味わっていただきます。

4曲目は《サンタが町にやってくる》。日本では「私からメリークリスマス、あなたからもメリークリスマス」といった感じの歌詞になっていますが、英語の方では「気をつけて、泣く前に、ふくらっ面する前に、サンタさんがやってくるんだから」といった感じになっています。これは、アーサー・フィードラー指揮のボストン・ポップス管弦楽団の演奏です。

最後はしっとりと、《ホワイト・クリスマス》。アーヴィン・バーリンという作曲家による、これも、クリスマス・ソングの定番です。「夢見るのはホワイト・クリスマス、懐かしい日々をそのままに、こずえは輝き、子どもたちは耳をすます、雪の野を走る、そりの鈴」といった、やはり情景が豊かに浮かんでくんでくるような歌詞になっています。これは、《ウィンター・ワンダーランド》を演奏する、クロウチ・エンド音楽祭合唱団の演奏でお送りします。

では、アメリカで作られたクリスマス・ソングの数々を、5曲続けてお楽しみください。

メリー・クリスマス!

[ここで音源] ジングル・ベル/ジェームズ・ピアポイント作曲(モートン・グールド編曲)/モートン・グールド指揮RCA交響楽団/RCA Victor 09026-63712-2/演奏時間=3分09秒

[ここで音源] ウィンター・ワンダーランド/バーナード作曲/クロウチ・エンド音楽祭合唱団/ポール・ベイトマン指揮プラハ市フィルハーモニー管弦楽団/Silva Classics SILKD 6026/演奏時間=2分02秒

[ここで音源] クリスマスは家に帰るよ(アイル・ビー・ホーム・フォー・クリスマス)/キム・ガンノン作曲/ビンク・クロスビー(ヴォーカル)、ジョン・スコット・トロッター・オーケストラ/MCA (Decca) MCAD-11719/演奏時間=2分54秒

[ここで音源] サンタが町にやってくる/ジョン・フレッド・コーツ作曲(メーソン編曲)/アーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団/RCA Victor 6428-2 RG/演奏時間=2分38秒

[ここで音源] ホワイト・クリスマス/アーヴィン・バーリン作曲/クロウチ・エンド音楽祭合唱団/ポール・ベイトマン指揮プラハ市フィルハーモニー管弦楽団/Silva Classics SILKD 6026/演奏時間=2分52秒


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