Mr. Tの現代アメリカ音楽講座



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2000年6月24日アップロード


これは新潟県新津市にあるFM新津の番組「ドクターヨコサカのくらくらクラシック」において、2000年6月末に放送されたアメリカ音楽紹介の原稿 です。


This is My Country CD [ここで音源] アメリカ国歌「星条旗」/ジョン・スタッフォード・スミス作曲/レナード・スラトキン指揮セントルイス交響楽団/使用CD=RCA Victor 09026-61545-2 "This is My Country"/演奏時間=1分19秒

皆さん今日は。フロリダ州立大学院の、谷口です。

現代アメリカ音楽講座、今月末のプログラムは、昨年の同じ時期のプログラム同様、来月7月4日の、アメリカ独立記念日に向けて、愛国的な音楽を中心 としたにぎやかなプログラムをお送りします。

A Splash of Popsまずは、華やかで力強いオーケストラをつかった、ジョン・ウィリアムズの 「自由のファンファーレ」から始めましょう。これは1986年の時の独立記念日に、改装工事を施されたニューヨークの自由の女神の御披露目を祝って作曲さ れました。ジョン・ウィリアムズといえば、昨年「スターウォーズ エピソード1:ファントム・メナス」という映画もありましたが、その他にも「スター ウォーズ」や「ジョーズ」などの、映画音楽の作曲家として、あるいは、ボストン・ポップスの前指揮者として、全米中に親しまれています。今日お聞きいただ きますのは、ジョン・ウィリアムズの後を引き継ぎ、若い息吹を吹き込むキース・ロックハートの指揮による演奏です。1995年2月、わずか35歳でボスト ン・ポップスの指揮者になったロックハート、ボストンに来る前は、エリック・カンゼルのもと、シンシナティー・ポップスの副指揮者をしていたそうですが、 そのロックハートの下、ボストン・ポップスは、50・60年代に活躍したアーサー・フィードラー時代のシャープな響きを取り戻しております。

それでは、キース・ロックハート指揮のボストン・ポップス管弦楽団で、ジョン・ウィリアムズ作曲の「自由のファンファーレ」をどうぞ。

[ここで音源] 自由のファンファーレ/ジョン・ウィリアムズ作曲/キース・ロックハート指揮ボストン・ポップス管弦楽団/使用CD=RCA Victor 09026-63516-2 "A Splash of Pops"/演奏時間=4分15秒

キース・ロックハートとボストン・ポップス管弦楽団の演奏、もう一つ。今度は18世紀半ばの独立戦争を思わせる、鼓笛隊の響きと、当時の愛国歌「ヤ ンキー・ドゥードル」をフィーチャーした、「ドゥードル街の鼓笛隊」という曲をお送りしましょう。

「ヤンキー・ドゥードル」という歌について、簡単に説明しますと、この「ヤンキー」という言葉は、もともとイギリスの軍隊が、植民地アメリカの軍隊 を指して使われた言葉で、「ドゥードル」というのは、「まぬけ」という意味なのだそうです。ということで、もともとは、1755に、イギリス軍が植民地軍 を馬鹿にするために作曲したというのが「ヤンキー・ドゥードル」だったのですが、面白いことに、からかわれたアメリカ側は、この歌詞を逆手にとって愛国歌 とし、戦意高揚に使ったようです。からかわれた怒りをぶつけた、ということだったのかもしれませんね。

しかし、この「ヤンキー・ドゥードル」、日本では、なぜか、「アルプス一万尺」という子どもの歌として知られています。残念ながら、私は、どういう 経緯でそうなったのかは、知りません。こういった替え歌というのは、本当に不思議なもんですね。

では、アメリカ独立戦争期の愛国歌「ヤンキー・ドゥードル」を使った楽しい小品、「ドゥードル街の鼓笛隊」を、キース・ロックハート指揮のボスト ン・ポップス管弦楽団の演奏でどうぞ。
 
[ここで音源] ドゥードル街の鼓笛隊/パトリック・ホーレンベック編曲/キース・ロックハート指揮ボストン・ポップス管弦楽団/使用CD=RCA Victor 09026-63516-2 "A Splash of Pops"/演奏時間=4分40秒

「ヤンキー・ドゥードル」に続き、有名な愛国歌をもう一つお送りしましょう。「リパブリック賛歌」です。ものの本によりますと、今日知られている 「リパブリック賛歌」の歌詞は、1862年、女性作家で改革家のジュリア・ワード・ハウという人が書いたそうです。このハウというひと、もともとは、南北 戦争中、北軍の兵士が口ずさんでいた「ジョン・ブラウンの体」という歌を聴いて感動し、これに新しい歌詞をつけて愛国歌にしようと考えたそうです。当時新 聞の一ページにハウの歌詞が付けられた「リパブリック賛歌」が大ヒットを飛ばし、今日まで、独立記念日には欠かせない歌となっています。

そういえば、この歌も、日本では、なぜか「おたまじゃくしは蛙の子」とか「ごんべさんの赤ちゃんが風邪引いた」という歌詞で知られております。、 1923年には「リパブリック賛歌」の替え歌、「ジョン・ブラウンの赤ん坊が風邪を引いた」という替え歌が、アメリカで出版されたそうですが、ではなぜ ジョン・ブラウンさんが「ごんべいさん」になったのか、私も、さすがにそこまでは分かりません。いずれにせよ、こちらの歌も、本国アメリカでは、南北戦争 中に作曲された愛国歌であることを、念頭において聴いていただけると幸いです。

それでは、アメリカの愛国歌、愛国歌「リパブリック賛歌」を、昨年惜しくもこの世を去りました、ロバート・ショー指揮の合唱団の演奏でどうぞ。
 
[ここで音源] リパブリック賛歌/愛国歌(ウィリアム・スティッフェ作曲)/ロバート・ショー合唱団、RCAビクター交響楽団/RCA Victor 60814-2-RG "Battle Cry of Freedom"/演奏時間=5分23秒

次は、アメリカの国旗、星条旗への忠誠を誓うという曲、そのタイトルもずばり、「忠誠の誓い」という曲をお送りします。

アメリカの公立学校では、毎朝、教室に立てられている国旗に向かって忠誠の誓いをします。アメリカの国旗、星条旗の赤は勇気、白は自由、青は忠誠を 意味するのだそうですが、この国旗への忠誠は、立ち上がり、右手を胸にあてて、次のように唱えます。

「私はアメリカ合衆国の国旗に忠誠を誓う。神の下、国は一つ。分かたれることはない。万人が自由と平等を持つ連邦を表わす、この国旗に忠誠を誓 う。」

アメリカの小・中学校・高校などに留学経験のある人、あるいは公式の行事に参加したことのある人は、この「忠誠の誓い」を体験をしているようです が、この誓いの言葉を音楽にしたものを次に聴いてみましょう。、米国空軍軍楽隊所属の作曲家フロイド・ワールによります、「忠誠の誓い」とう曲です。で は、これをジェームス・バンクヘッド少佐指揮モーモン・タバナクル合唱団、米国空軍軍曹合唱隊、そして、米国空軍軍楽隊の演奏でお送りします。2002 年、冬期オリンピックが開催されるユタ州はソルトレイク・シティでのライブ録音です。
 
[ここで音源] 忠誠の誓い/フロイド・ワール作曲/ジェームス・バンクヘッド少佐指揮モーモン・タバナクル合唱団、米国空軍軍曹合唱隊、米国空軍軍楽隊/使用CD= CBS MK 42133 "An American Tribute"/演奏時間=3分01秒

続いて、独立記念日のお祝いには欠かせない、マーチ、行進曲を2つお送りします。まずは、ガーシュイン作曲の「ストライク・アップ・ザ・バンド」。 この曲は、1930年に大ヒットした、同名のミュージカルから取られた行進曲です。内容的には、社会風刺のコメディーだったようですが、今日ではもっぱ ら、その文脈から離れて、元気はつらつとした行進曲のみが、単独で演奏されています。

2曲目は、「76本のトロンボーン」という曲。これは、メリディチ・ウィルソンという人の作った、やはりこれもミュージカルからの行進曲なのです が、このウィルソンという人、実は、マーチ王と呼ばれる、あのジョン・フィリップ・スーサの吹奏楽団で演奏したことがあるそうで、ここでも、スーサの有名 なマーチが顔を覗かせています。

以上2曲のマーチは、ここ数年、独立記念日では、頻繁に演奏されるもので、特にオーケストラの編成のために書かれているので、効果的にアピールよう です。それでは「ストライク・アップ・ザ・バンド」、「76本のトロンボーン」、2曲を、ジョン・ウィリアムズ指揮ボストン・ポップス管弦楽団の演奏でど うぞ。
 
[ここで音源] ストライク・アップ・ザ・バンド/ジョージ・ガーシュイン作曲/ジョン・ウィリアムズ指揮ボストン・ポップス管弦楽団/使用CD=Philips 454 391-2 "America the Beautiful"/演奏時間=2分46秒

[ここで音源] 76本のトロンボーン(ミュージカル「ミュージック・マン」から)/メリディチ・ウィルソン作曲/ジョン・ウィリアムズ指揮ボストン・ポップス管弦楽団/ 使用CD=Philips 454 391-2/演奏時間=2分58秒

今日最後は、例によって例のごとく、ジョン・フィリップ・スーサのマーチ「星条旗よ永遠なれ」で締めくくりたいと思います。昨年の放送ではウラディ ミール・ホロヴィッツの弾いたピアノ編曲をお送りしたのですが、今回は、編曲版ではなく、オリジナルの編成のをお送りしたいと思います。演奏ですが、かつ てスーサ自身も指揮者として大活躍した米国海兵隊軍楽隊の由緒正しき演奏をお送りします。この録音、演奏会の実況録音で、比較的ゆったりとしたテンポにも かかわらず、曲の終わりには大きな盛り上がりが聞かれます。それでは、ジョン・フィリップ・スーサの傑作マーチ、「星条旗よ永遠なれ」をどうぞ。
 
[ここで音源] 星条旗よ永遠なれ/ジョン・フィリップ・スーサ作曲/米国海兵隊軍楽隊(指揮者不明)/使用CD=Altissimo! 75442255502 "Sousa Original II"/演奏時間=3分51秒


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