Mr. Tの現代アメリカ音楽講座



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2000年3月27日アップロード



これは新潟県新津市にあるFM新津の番組「ドクターヨコサカのくらくらクラシック」において、2000年3月末に放送されたアメリカ音楽紹介の原稿です。


[ここで音源] 「荒野の七人」のテーマ/エルマー・バーンスタイン作曲/演奏=エルマー・バーンスタイン指揮管弦楽団/使用CD=Ryko (MGM) RCD10741/演奏時間=1分58秒

皆さんこんにちは、フロリダ州立大学院の谷口です。

たった今お送りしましたのは、ユル・ブリンナーが主演した西部劇映画「荒野の七人」のテーマ曲でした。黒澤明の「七人の侍」を、アメリカとメキシコの国境地帯に設定したハリウッド映画の傑作なのですが、いかにもカウボーイが似合いそうな、あるいは砂漠や大草原が浮かんでくるような感じがします。

今回の現代アメリカ音楽講座は、漠然としてではありますが、こういったカウボーイや開拓者たちの世界を彷彿とさせるような音楽を中心にお届けしたいと思っています。

まずは、たった今お聞きいただいた、「荒野の七人」の映画を担当した作曲家、エルマー・バーンスタインという人の先生、アーロン・コープランドのピアノ小品からお届けしましょう。タイトルは、「若い開拓者たち」です。この作品、もともとは、子どものためにかかれた1分ちょっとの短い作品です。しかし、アメリカの西部開拓時代のエッセンスが詰まっています。こういった古き良きアメリカのことを、アメリカ人は俗に「アメリカーナ」という言葉を使って表現するのですが、コープランドなど、ニューヨークはブルックリン生まれでユダヤ系なのですが、都会的なセンスとはまったく違ったこういう世界が描けるというのは、素晴しい才能だと思います。

それでは早速ですが、アーロン・コープランド作曲の「若い開拓者たち」、レオ・スミットのピアノでどうぞ。

[ここで音源] 若い開拓者たち/アーロン・コープランド作曲/レオ・スミット(ピアノ)/使用CD=Sony Classical SM2K 66 345/演奏時間=1分01秒

次は、もう少し長めの曲をお送りしましょう。デヴィッド・アムランという人の「『赤い河の谷間』の主題による変奏曲」です。この曲、前奏に続いてこの「赤い河の谷間」のメロディーがなるんですが、おそらく、ラジオをお聞きの皆さんも、ああ、あの曲か、と思われるのではないかと思います。こういう民謡を聞くと、私などは、岩のごつごつした壮大な山々を馬でゆっくりと進んでいくといったイメージを浮かべます。

作曲者アムランによりますと、実はこの曲、今やカウボーイの故郷といった感じのする、テキサス州で催された音楽祭のために、1991年に書かれた作品だそうで、テキサスのルーテン・バッハという、たった人口7人の小さな町を訪れた時の思い出が作曲の動機にもなったそうです。アムランは、その小さな町の雑貨屋で出会った、地元の民謡歌手に感動し、楽しい時を過ごしたそうで、この曲に使われている「赤い河の谷間」というのも、雑貨屋のご主人のお気に入りの民謡だったのだそうです。

では、デヴィッド・アムランの「『赤い河の谷間』の主題による変奏曲」、12分半くらいの作品をお聞きいただきましょう。演奏は、リチャード・アーデン・クラーク指揮の、マンハッタン室内管弦楽団です。

[ここで音源] 「赤い河の谷間」の主題による変奏曲/デヴィッド・アムラン作曲/演奏=リチャード・アーデン・クラーク指揮マンハッタン室内管弦楽団/使用CD=Newport Classic NPD 85546/演奏時間=12分21秒

今日4曲目は、エリー・シーグマイスターという人の、「西部組曲」をお送りします。1945年の11月に、かの名指揮者、アルトゥーロ・トスカニーニによって初演された、この作品、題名にもありますように、のんびりとした西部の雰囲気が感じとれます。作曲者シーグマイスターの言葉を借りれば、「新鮮でオープンな、そして希望に溢れた古き西部のスピリット」を「幻想曲」として表現したもの、ということになるようです。

もともと5つの楽章からなる、この「西部組曲」ですが、今日は、そのうちから3つの楽章をお送りします。まずは、第1楽章「草原の朝」。だんだんと夜が明け、輝かしい朝が訪れます。一日の始まりが、民謡のメロディーを折り込みながら、表現されます。一転して、第3楽章は「カウボーイたちの夜」。一日の仕事が終わり、大草原の中で火を囲み、時には歌い、時には思索に耽りながら、夜が深まってくる、そんな感じの曲です。最後は第5楽章「馬乗りたち故郷へ戻る」。この楽章では、有名な映画「駅馬車」にも使われた「メキシコへの道」という民謡に乗って、故郷へと帰るカウボーイたちが描かれています。

それでは、エリー・シーグマイスターの「西部組曲」から、草原の朝、カウボーイたちの夜、馬乗りたち故郷へ戻るの3つの楽章を、モーリス・アブラヴァネル指揮ユタ交響楽団の演奏で、お聞きいただきましょう。

[ここで音源] 西部組曲から、第1楽章「草原の朝」、第3楽章「カウボーイたちの夜」、第5楽章「馬乗りたち故郷へ戻る」/エリー・シーグマイスター作曲/演奏=モーリス・アブラヴァネル指揮ユタ交響楽団/使用CD=Vox Allegretto ACD 8155/演奏時間=5分55秒、4分12秒、4分15秒

今日最後は、カウボーイの世界とはちょっと離れるのですが、やはりアメリカーナ、懐かしのアメリカを思わせる曲をお送りします。タイトルは「アショカンの別れ」といいます。この曲は、もともとアメリカのテレビで放送されたドキュメンタリ番組「南北戦争」のテーマ曲なんですが、その番組の人気もさることながら、一度聴いたら忘れられない、ヴァイオリンのメロディーがとても有名になりました。ジェイ・アンガーという、この録音でもヴァイリンを演奏している人が作った曲です。それでは、「アショカンの別れ」をどうぞ。

[ここで音源] アショカンの別れ/ジェイ・アンガー作曲/演奏=ジェイ・アンガー、マット・グレーザー、イヴァン・ストーヴァー(ヴァイオリン [フィドル])、ルス・バーレンバーグ、モリー・メーソン(ギター)/使用CD=Nonesuch 9 79256-2/演奏時間=4分02秒


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