最近見たもの、聴いたもの (78)


2004年11月執筆分
2014年8月8日アップロード


2004年11月29日

Voices in the Wilderness

Six American Neo-Romantic Composers by Walter Simmons. Scarecrow Press.

『グラモフォン』誌の書評欄で紹介されている、この432ページにもわたる大著はブロッホ、バーバー、ハンソン、クレストン、ジャンニーニ、フラジェッロを扱っているようです。Simmonsという人、どちらかというと評論家のような人みたいですが、それゆえに、発売されている音源の情報も含めて書かれているそうです。特にハンソンとクレストンの扱いが良いという意見のようですね。ハンソンは、その大きな影響力を考えると、これまであまりにも軽視されているように思います。伝記と呼べるものはありません。クレストンは文献目録みたいのがありますが、やはり伝記はないです。ここではバーバー以外は、みんなそうでしょうか(ブロッホはどうだったかな?)。

アメリカのアマゾンでも69ドル95と高いですが、そのうち読んでみたい本です。ペーパーになればいいんですが。

<<文体変更>>
今日、アマゾンに注文していたCDが届く。注文を入れたのが9月の終わりくらいだから、2か月もかかったことになる。これはアマゾンとしては異例。ちなみに内容は、アール・ブラウンのピアノ作品集(David Arden、New Albion)、グレン・ブランカの交響曲第8・第10番(Atavistic)、ジョアン・モリス/ウィリアム・ボルコムによる、ガーシュインとアーヴィン・バーリン作品集(どちらもNonesuch)。


2004年11月27日

《悲愴》第1楽章の再現部

友人からチャイコフスキーの交響曲第6番《悲愴》の第1楽章の再現部はどこになるのだろうという問題提起がなされた。なんでも手持ちのスタディー・スコアの解説には245小節目と記されているだが、230小節から序奏部の再現が始まっているのではないかという主張。

以下、私の返信。

245小節というのは、第1主題の動機が盛り上がってきて最高潮になった部分だよね。参考にアメリカの暗チョコ本みたいなのを見たら、なんと249小節になってたね。これはおそらく旋律の続きとなる2つめの動機(255小節以降)も含めて、より完全な再現ということで、それまでを展開部の終結とする見方だね。

実は僕のスコアにも230小節の上に「Part II, Section 4?」という書き込みがあって、これはつまり「再現部なのかな?」という認識を持ったが不確定だと思ったという記録だと思う。調が不安定なのは展開部の特徴だし、オリジナルの調でもないし。

調の再現というのは重要な要素なので、やはり245小節が一番妥当なのかもしれないけど、動機の完全な再現というと249小節もあり得る。でも動機が再現してるのに230小節はどうなるのっていう疑問は残りそうだね。もし一つ取れというのなら245かな。

昔の交響曲なら、再現部前に周到にドミナントを提示するもんだけど(ペダルトーン多用とか)、そういうのはもう流行らないんだろうね。第1主題自体、旋律的魅力はあまりないし、動機として展開するのが面白い「素材」なのかも。

なお一般的には「序奏部」はソナタ形式の付属品扱いなので、分析の対象にはならないことが多い。ただこの作品の場合は序奏で第1主題の動機がすでに提起されているということもあり、その重要性はあるよね。調的関係があるのかと一瞬考えたんだけど、冒頭のファゴットのは明確にE Minorで、231(ごめん、アウフタクトは入れないんだった)小節のはもっとクロマティックなんだね(冒頭のはE-F#-G、後者はE-F-Gb)。ということで、序奏の再現にはならないと思う。(17:40改訂)


2004年11月26日

レヴァインのアイヴズ交響曲第2番ほか

独Oehms Classics OC 507

とりあえず、メモ程度に。

アイヴズはなかなか面白い演奏。のびのびと旋律が歌われているのが気持ち良い。おおざっぱなところもあるが、オーケストラが美しい。第2楽章のエンディングがちょっと変わっているが、これは版のせい? 第5楽章のティンパニーの強打もなかなか。最後の音はバーンスタインよりも長い!(う〜ん、これはちょっと…)。 聴衆ウケはあったようだ。個人的にはそんなに嫌いじゃない。

ガーシュインの《キューバ序曲》は、いろんな動機が耳に聞こえてくる/楽譜から見えてくる演奏/指揮だと思う。中間部における2つ割と3つ割のリズムの絡み合い、両端部のスイング系リズムとクラシック系、さらにラテン風のリズムが不思議に同居しているのも、この演奏で初めて気がついたような気がする。エンディングは最後から2小節目を3回演奏する習慣にしたがったもの(シカゴ響のは「楽譜通り」)。

ハービソンはボストンでは確かに人気があるけれど、どちらかというと「内輪ウケ」的ではないかと思えてしまう。Amazon.comのレビューにはボストンの人が「クラシック音楽界における政治力を象徴している」といった厳しい発言もあるようだ(米Albanyレーベルからすでにリリースされていた別の演奏に対するレビュー)。第3交響曲の5つの楽章は連続して演奏される。民謡の1フレーズのようなものも登場するが基本的に無調がベース。第5楽章はピストン風にビシビシ決めてくるところがいかにもアメリカらしいということなのかもしれない。アメリカも、全然変わってないなと思うか、あるいはこういうのが「新しい」と言われるのか?


2004年11月24日

ダ・ヴィンチ・コード

ダン・ブラウン著、越前敏弥訳、角川書店、2004年。

あまりベストセラーのフィクションは読まないのだが、複数の友人が「面白いからぜひ」と言っていたため、ポピュラー音楽学会前後に上巻を読み始めた。23日、フクロヤの帰りに経堂の明文堂に寄り下巻を購入。一気に読んでしまった。

その下巻を買うついでにあちこち歩いていたら、原著を発見。値段が1000円くらいで、力が抜けてしまった。しかし上巻を買ってしまったので、「いまさら原書買うのもな〜」ということで、結局訳本を買ったのだった。地方の本屋もあなどれないな…。

内容についてだが、歴史の蘊蓄(うんちく)とドラマの面白さがうまく配合されているため、読みやすく、ためになるといったところか。それこそほとんどトリヴィアなのかもしれないけれど、好学心をうまくくすぐるものだ。下巻の後半は、ちょっと2時間サスペンスっぽい展開かと思われたが、そのおかげで、読むスピードもあがったように思う。

ところで、下巻にウォルト・ディズニーに触れたくだりがあった。最近初期の短編を観ることが多くなったけれど、「聖杯にまつわる寓話と暗号の宝庫」(友人の言葉)というのは、まったく意識してなかった。『ライオンキング』のように、一コマだけにいたずらっぽく隠し絵を入れるのは知っている(実は『ライオンキング』の例は知らなかった。今度DVDを調べてみよう)。『アラジン』や『ノートルダムの鐘』にもあったはずだ。こういうのは、あるいは日本のアニメから始まったんだろうか? 『うる星やつら』とか。

今日は12月分のラジオの音源も送付。このサイトを訪れた方には予告しておこう。放送はクリスマスの日なのだそうだ。

1曲目
そりすべり/ルロイ・アンダーソン作曲/ネーメ・ヤルヴィ指揮デトロイト交響楽団/使用CD=米Detroit Symphony Orchestra BGD-0117(アルバム『Joy! A Celebration of Holiday Music』/演奏時間=2分50秒

2曲目
グローリア/ランドル・ベース作曲/キース・ロックハート指揮タングルウッド祝祭合唱団、ボストン・ポップス管弦楽団/使用CD=米RCA Victor 09026-63252-2(アルバム『Holiday Pops』)/演奏時間=6分10秒

3曲目
(a) 羊飼いよ、起きて星に従え/黒人霊歌/トーマス・ヤング(テナー)、ダオナード・スミス(ピアノ)/使用CD=米Ess.A.Y. Recordings CD 1011(アルバム『Black Christmas: Spirituals in the African-American Tradition』)/演奏時間=4分29秒

(b) 新生の王に栄光あれ、アレルヤ!/黒人霊歌/トーマス・ヤング(テナー)、ダオナード・スミス(ピアノ)/使用CD=米Ess.A.Y. Recordings CD 1011(アルバム『Black Christmas: Spirituals in the African-American Tradition』)/演奏時間=1分31秒

4曲目
遠い、遠い昔/カーライル・フロイド作曲/使用CD=米Arsis CD 117(アルバム『A Christmas Album』)/演奏時間=1分52秒

5曲目・6曲目
もろびとごぞりて/ローウェル・メーソン作曲/ポール・ベートマン指揮クロウチ・エンド祝祭合唱団、プラハ市立フィルハーモニー管弦楽団/使用CD=米Silva Classics SILKD 6026(アルバム『Christmas Choral Classics』/演奏時間=1分47秒

ウインター・ワンダーランド/フェリックス・バーナード作曲(ラルフ・ハーマン編曲)/エリック・カンゼル指揮シンシナティ・ポップス管弦楽団/使用CD=米Telarc CD-80026(アルバム『Christmas with the Pops』)/演奏時間=2分53秒

7曲目
クリスマス・ソング/メル・トーメ作曲、ロバート・ウェルス作詞/モーリン・マクガヴァン(ソプラノ)、マイク・リエンツィ(ピアノ)/使用CD=米Sony Masterworks MFK 66300(アルバム『Voices of Christmas』)/演奏時間=4分01秒

8曲目
クリスマス・ソング・メドレー/ブルース・ヒアリー編曲/エリック・カンゼル指揮シンシナティ・ポップス管弦楽団/使用CD=米Telarc CD-80026(アルバム『Christmas with the Pops』)/演奏時間=8分22秒

9曲目
映画『ホーム・アローン2』より《メリー・クリスマス》/ジョン・ウィリアムズ作曲、リズリー・ブリカッセ作詞/キース・ロックハート指揮タングルウッド祝祭合唱団、ボストン・ポップス管弦楽団/使用CD=RCA Victor 09026-63252-2(アルバム『Holiday Pops』)/演奏時間=2分47秒


2004年11月23日

フクロヤ上飯野店にて

土肥さんとお話。9月の『レコ芸』に載っていた連載の中のカール・ベームの記事について盛り上がる。「こちらが神格化しているところもあったが、それでもこれまでの自分のベームに対するイメージが崩れていった」とのこと。この連載の書き手はジャーナリストなのだろうか? 多少ゴシップ的なセンセーショナリズムに走っているようにも思えるが、演奏に感動した音楽家が、実際どういった性格の持ち主であるかについては、知らない方がよいこともある。残念ながら、私はベームの音源を熱心に聴いてきたとは言えない。ただ私の友人によると、大学オケでウイーン・フィルのヴァイオリンを弾いていた音楽家が訪れた時、現地ではベームの評判は芳しくなく、「彼の音楽にはピアノとフォルテしかない」と言っていたのだそうだ。

今年の富山の演奏会については、やはりハイティンクのブルックナー第8交響曲について賞賛しておられた。逃したのが非常に悔やまれる演奏会である。

ところでこの日はジェームズ・レヴァイン/ミュンヘン・フィルのアメリカ音楽集(ガーシュイン《キューバ序曲》、ハービソン/第3交響曲、アイヴズ/第2交響曲、Oehms Classics OC 507)、オーマンディ/フィラデルフィアのグリエール/第3交響曲《イリア・ムーロメッツ》(日BMGファンハウス BVCC38294、そして土肥さんのお勧めで諸井三郎の交響曲第3番(湯浅卓雄/アイルランド国立SO、Naxos 8.557162J)を買ってきた。


2004年11月22日

Horowitz: Live and Unedited

The Historic 1965 Carnegie Hall Return Concert. 米Sony Classical Legacy S2K 93023

数々のミスタッチも無修正に提示したのがこのCDだという。そういえば私も、ホロヴィッツは、割と音を派手にハズすことがあるピアニストだという印象を持っている。しかし弾いている本人はさほどミスタッチを気にする様子もなく、そのまま進んでいく。その点だけを見れば一見「冷静」なのだけれど、全体の音楽は毎回いきいきと湧き出るようでいて、興奮度も高い。そして、このCDのようなライブはやはりスリリングだ。難解な技巧の曲もやすやすと弾きこなすピアニストが、一方で派手にミスタッチをするというのも興味深い。

以前浜松国際ピアノコンクールのドキュメンタリーをNHKで放送していた。音大出身で初めてコンクールに挑戦したという若いピアニスト。曲の冒頭で大きなミスをして、随分それが気になっていたという。そういうミスにいかに対処するのかも実力なのかもしれないけれど、大局を見失わない聴き方も、こちらに要求されてくるのではないかと思う。もっとも昨今、海賊版も含めて、ライブ録音のCD・CD-Rが多数入手できるようになり、スタジオでじっくり練り上げるのとは違った、ミスも少なくない、客席の咳ばらいも含んだ「生」の雰囲気が重視されつつあるのは、現役の演奏家にとってもありがたい環境なのかもしれない。できれば聴き手の方も、CDになっていない、現在身近に活躍する演奏家に注目すべきであるとは思う。


2004年11月21日

JASPM北陸など

日本ポピュラー音楽学会北陸支部の例会にて研究発表。他の学会における発表とは違った角度から質問が多数寄せられ、こちらが思いもかけなかった視点も提示された。素晴らしい。感謝!

金沢大学で学んでおられる/学ばれた方々も参加なさっていた。かの地でも充実した研究をなさっているのだろうなという手応えを感じた。次回は来年の2月にも開催されるそうで、今度は一ギャラリーとして参加させていただくつもりである。富山からの参加者が増えるといいのだが。私は大学にいる訳ではないので、直接コミットできないのが残念である。

今週はWeb-criレビューの推敲、ラジオの音源選択、年末は『音楽文化の創造』の記事と、やはり忙しくなりそうである。


2004年11月20日

アーロン・コープランドのアメリカ

G. レヴィン、J. ティック共著、奥田恵二訳 東信堂、2003

私が帰国するちょっと前に原著が出たので、割と速く翻訳されたのではないだろうか。もともとの本のサイズはこれより大きめでカラー図版もずっと多かったように記憶している。そのためか、原著と訳本は、値段的に、それほど変わらないのではないだろうか?

本書はたしか美術館における展示のためのパンフレットがもとになっていたと思う。文化史や絵画、舞台芸術関連からコープランドにアプローチしたもの。いずれきちんと読んでみたい。NHKのBSでは12月にドキュメンタリーも放送されるようだ。PBSで放送されたものだろうか?

今日はDaniel Goldmark and Yuval TaylorによるThe Cartoon Music Bookも眺めている。日本のアニメの音楽についての一章もある。論文っぽいものからエッセイのようなものまで、文章の内容も様々。Carl Stallingのインタビューは特に貴重らしい。そういえば、ジョン・ゾーンがCarl Stallingを高く評価していたそうだ。

ラジオ放送は12月分の準備。今年もクリスマス特集。宗教プロパーでなくて、バラエティー系(?)にする予定。カンゼル/シンシナティのCDを使ってなかったなあ。メル・トーメのCDも買っとくべきだった。

楽しんで聴いているのは、チェリビダッケ/LSO公演ライブCD(日[?] Concert Club CC11、11枚組)。テンポの遅いことがチェリビダッケのトレードマークのように考えられている。確かにこのアンソロジーを聴いても、ゆったりとしたテンポのものはあるが、ミュンヘン・フィルのものほどエキセントリックでないように思う。音楽の流れは極めて自然。もちろんミュンヘンのものには、じっくりと噛みしめる味わいがあり、それ特有の面白さもある。ただチェリビダッケを多く知らないと、面喰らってしまうことも充分に考えられそうだ。友人に「僕は最近チェリビダッケを聴いている」と言った時、随分変わったものを聴いているな、という反応を彼がしたことを思い出した。しかし、今回のLSOコレクションを期に、古本屋にクラウス・ウムバッハの本を注文することにした。

LSOとの演奏、6枚目のCDから始めている。ワーグナー/《タンホイザー序曲》など、大げさな身ぶりを感ずることなく、むしろ地味でもあるが、冒頭の盛り上がりが帰ってくる部分におけるオブリガードのヴァイオリンが非常に美しく効果的である。モーツァルトの《プラハ》交響曲もまっとうな好演。個人的には、シベリウスの《エン・サガ》にも魅力を感じた。これから他のCDを聴くのが楽しみである。


2004年11月19日

タワーレコードから

独自企画でRCAの音源が発売されるようで、ベリオの作品集、黛の交響詩立山、アーサー・フィードラーとデューク・エリントンとの共演などが含まれているようです。


2004年11月16日

尋常小學校で歌われた唱歌

日Pony Canyon PCCG-0063 (富山市立図書館 所蔵)

最近学校唱歌に関した本やCDを多く見かけるようになった。何か特定の世代をターゲットにしているのだろうか。

このCDに収められているものの中では《ツキ》、《虫のこえ》《鯉のぼり》におけるリード・オルガンの音が懐かしく、また《ツキ》においてはコラール風の部分もあるため、教会の賛美歌さえ連想してしまうところがある。《汽車》におけるリズミカルなピアノ伴奏も面白い(合いの手の斉唱は編曲?)。《虫のこえ》の「りんりんりんりん りいんりん」の部分のコード進行も、こういう風に聴いたのは初めてかも。

一方オーケストラの編曲による歌唱は確かに聴きやすいが、ドラムスやシンセが編成に加わっているものもある。昔はビクターやコロムビアから童謡のレコードがたくさん出ていて、私も好んで聴いたものだ。しかし唱歌を今、オケ伴奏で聴くのはどうも抵抗を感じてしまう。変にオリジナルにこだわるようになってしまったものだ。

学校ではおそらくリードオルガンが普及しており、唱歌がこの楽器による伴奏を前提に作曲されていたのなら、もっとリードオルガンの伴奏による演奏を聴いてみたいものだ。でも、そもそも伴奏の譜というのは、どのくらい存在しているのだろうか?


2004年11月13日

スティーヴン・フォスターの旋律

カーメン・ドラゴン指揮キャピトル交響楽団 米Capital SP 8501(LP)

かつて国内CDとしても発売されたもの。筆者は買いそびれてアメリカのLPで楽しんでいる。《草競馬》のアレンジがなかなか凝っていて、面白い。ゆったりとした旋律の作品もムードたっぷりに編曲・演奏されている。管弦楽が効率よく鳴るのは当然としても、前奏や合いの手に魅力的な旋律や音色が挿入されている。《おおスザンナ》ではピチカートがバンジョー風だし、ヴァイオリンがフィドル風。対旋律も登場。まさかフォスターもカントリー・ダンスまでは想像してなかっただろう。カスタネット(?)の音はミンストレル・ショーを彷佛とさせる響きだ。エリック・カンゼルが、しばしばドラゴンのアレンジで演奏しているのもうなずける。

私の持っている『コール・ポーターの夕べ』(SW 8-1805)もアメリカ盤LP。ジャケット裏面にはカーメン・ドラゴン自身による解説と、「Mr. Pへ」で始まる短い手紙が掲載されている。

その他、許 光俊の『世界最高のクラシック』を眺め始める。バーンスタインは「直接的」だが、「ハリウッド的・スピルバーグ的なショックの効果の追求にすぎないとくさすには、悲嘆はあまりにも深い」とある。なるほどうまく逃げたという感じだけれど、アメリカ→映画というステレオタイプを避けてアメリカの音楽家を述べることを批評家は考えるべきなのではないかと思うこともある。カラヤン=人工的、小澤の東洋人としての成功についても、こういった次元でない考え方が必要ではないかと思うこともある。おそらくクラシックをこれから楽しむ人向けに書かれたので、彼のこれまでの著作に触れてきた人には物足りないのかもしれない。

「日本の音楽祭3」の校正も始める。できればWeb-cri用のディスク・レビューも始めたい、ウイーン・フィル富山公演についてもまとめられるかどうか…。


2004年11月 9日

ベートーヴェン、弦楽四重奏全曲シリーズ、第3回終了

婦中町ふれあい館ホールにて、第3回公演が無事終了。聴衆の数はおそらく180くらいとまずまず。会場のサイズは微妙なところで、オーケストラには小さすぎるし、弦楽四重奏にはちょっと大きめといったところ。昨日長い任期を終えた前富山県知事の中沖さんがいらしていたのが印象的だった。しかも最後までコンサートを堪能していただいたようで、チェロの大澤さんも、随分感心しておられたようだった。

コンサートもあと3回。富山の音楽史に残るシリーズとなることを祈りつつ…。


2004年11月 8日

名古屋より帰宅

日本音楽学会での発表を終えて帰宅。珍しい音源を使ったので、それに興味を持った人も多かったし、問題を「テクノロジー」に収斂させてよいのかという鋭い指摘にも感動した。いろんな有名な人と昼飯をともにするというだけでも、私にとっては貴重な体験。同じ学問を目指す人間という集まりというのは、やはり刺激的である。

アカデミアが新刊を売っていた中から、今回は『Composers on Composing for Band』というMark Camphouse編集の本を買ってきた。私の知る限りでは、James Barnes, David Gillingham, Karel Husa, W. Francis McBeth, Jack Stampなどが面白そう。本では、こういった人たちが、それぞれCamphouseによってあらかじめ作られた質問に答えるという構成でできている。例えば自分のもっとも影響を受けた人、自作を演奏する指揮者へのアドヴァイス、作曲法について、すべての人が知っておくべき10の作品などなど。その答え方も様々で興味深い。

シカゴのGIA Publictionsから2002年の発行。


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