最近見たもの、聴いたもの (70)


2004年5月28日アップロード


04.5.11.

とある音楽愛好家の方に作っていただいたMDを聴く。ヘンリー・マンシーニとモートン・グールドの名曲を集めたもの。ところがこれが実家のMDプレーヤーではうまく再生できない。音楽が先に進まず、何度も止まってしまう。デジタル・メディアの弱さを実感することとなった。標準モードでしか録音できない時代のものだが、今の機械だと、もっとうまくエラー補正してくれるのだろうか。心配である。誰かが言ってたように、昔のメディアの方が「根性ある」のかもしれない。

ベートーヴェン 第7交響曲、第4楽章 バーンスタイン指揮ウイーン・フィル 『Gramophone』6月号付録CD

最初の方を聴いた限り、何の変哲もない第7の最終楽章に聴こえる。「情熱の指揮者」というバーンスタインのイメージからすると、こちらの方は、すぐ彼の「暴走」を期待してしまうところがある。しかし、ところどころで鳴っている音楽を遠くから眺めているのか、案外客観的な視点は失っていないように思う。もちろん作品を面白く聴かせるための仕掛けは入念に研究しているようには聴こえる。何しろこの楽章は旋律的な魅力よりも、動機の展開の妙技で聴かせる要素が強いし、楽器の細かなバランス取りがオーケストラの輝きの度合いにもつながる。楽譜上反復記号も多いし、同じような音符が続く箇所も多い。バーンスタインはこういった問題をうまく通り抜けている。また、随所にみられる休符や延ばしの部分を見逃さず、結尾部もうまくたたみかけている。この終結部では、さすがにクールなままでいると、こちらは物足りないと感じただろう。欲を言えば、もっと早めにこういう風になってほしかった。


04.5.19.

Disney's TaleSpin, Volume 4, "Fearless Flyers." Walt Disney Home Video 1211 (VHSビデオテープ)

白状してしまうと、私は熱心なディズニー・ファンではなかった。「子供っぽい」と決め付けてかかるところさえあった。でも、ボストンで "The Disney Afternoon" という30分アニメをいくつかまとめて放送する番組の中で観た "TaleSpin" にはなぜかのめり込んで、友人から預かっていたビデオつきテレビを使いながら(当時はインターネットもテレビもない生活をしていた)、室内アンテナで放送されたエピソードをいくつかビデオに録画。画質もちっともよくないのに標準モードでだ。同じエピソードが繰り返されることもあったが、かなり網羅的に観たと思う(録画テープの方はかなり消去してしまったなあ)。タワーレコードやリーチミヤ・ショッピング・モールにも "TaleSpin" のビデオがあり、これらももれなく購入。買う時はちょっと恥ずかしかったのを覚えている。もちろん主題歌の入った "The Disney Afternoon" のミュージック・カセットも入手(Disney 60810-0。当時ボストンのタワー--ニューベリーSt. 現在はヴァージンになっているようだ--でCDを見つけることができなかった)。

しかし、それでも私はディズニー・ファンにはならなかった。ミッキーマウスにウキウキすることもなかった。そんな私にフロリダ時代の友人がオーランドのディズニーワールドに行かないかと言ってきた。半分は好奇心。半分は誘われたから仕方なく、という消極的な動機ででかけたが、アメリカ滞在中、最も楽しい一時を私は過ごすことになる。ミッキーと写真も撮っている (^_^;; マジック・キングダム内の売店で売られていた食事は、お世辞にもうまいとはいえなかったけれど。個人的にはエプコット・センターはかなり教育的 (^_^;; な内容もあって好きだし、各パークにある3Dアニメは本当に面白かった。

その後、別の友人にディズニーのビデオを集めているのがいて、自分で買わずに (^_^;;、借りて観る。多分最初に借りたのが、異色作 "The Hunchback of Notre Dame" 。感動した。涙した。ディズニーにはこうやってヤラれてしまったのである(なお夏休み帰国していた時に日本でも上映されていたが、コマーシャルを見て行く気がなくなってしまったように記憶している。流行もの嫌いだからなあ、私は)。その後は『アラジン』『ムーラン』『ライオンキング』『ターザン』『バンビ』『ピノキオ』と続いていく(映画館でみたものも、いくつか)。もちろん『トイ・ストーリー』や『ファンタジア』も。

という訳で、今日は懐かしく "TaleSpin" のビデオを観ている。やっぱり面白い。日本ではほとんど知られていないんじゃないかと思うけれど、どうやらディズニー・チャンネルでは放送されるようだ。さすがに "TaleSpin" だけのためにCS放送に加入しようとは思わないけれど。

ところで先週"The Hunchback of Notre Dame" の国内盤(なぜか『ノートルダムの鐘』となっている)DVDを購入。最近買ったディズニー・ソングを集めた5枚組CDボックス(おそらくイギリスもの)に収録されていた"Out There" というQuasimodoの歌に感動したからだ。"The Hunchback of Notre Dame" 一作でディズニーのアニメ全体を語ることはできないけれど、音楽の劇的効果は非常に高い(アラン・メンケン自身によれば彼の手掛けたディズニー映画音楽の中では「最も野心的なもの」だったそうだ。ほとんどがアンダースコアのため、サントラで音だけ聴くと面白さが分からないところがあるかもしれないけれど)。歌の中では、トニー・ジェイ(Frollo役)の歌う"Helfire"が熱唱だ。ジェイの声は "TaleSpin" のShere Khan と同じなんだろうか? "TaleSpin"では大会社の社長という設定だったけれど、あのダークな声がFrolloにもぴったりだ。さすがに "TaleSpin" では歌わなかったと思うけれど(私の見たエピソードで思い出す限り)。

このDVD『ノートルダムの鐘』の日本語トラック、私のプレーヤー/レコーダーではモノ音声しか出ない。声は基本的にセンターからしか出ないけれど、音楽がこのアニメに占める割合は大きく、やはりステレオで聴きたくなる(英語版の効果音もステレオである)。しかし歌唱に劇団四季の団員を配したためか、訳詞版の歌唱もかなりのもの(フロロの低音はさすがにでないか)。クロパンによるハイD(!)も、オリジナルだとさっさとフェイド・アウトしてしまうが、日本版はずっとフォルテで聞こえてくる。

それでもオリジナルで最初に当作品を鑑賞した私にとっては、やはり英語の方が良い。歌の文句と映像が細かく対応しているのが分かるし、邦訳版では出ないニュアンスがある(翻訳の難しさについては日本語訳によるオペラ上演で充分承知しているつもりだけれど)。

(04.5.30. 追記)クロパンの歌、オープニングのハイDは日本の歌手でなかった。歌の途中で突然声質が変わるので妙な感じだ(「鐘」が「ベル」と言い換えられる点も)。またオリジナルは合唱とうまくミックスされてしまうが、本当はソロもハイDを延ばしているということだったのだ。またオープニングを改めて日本語で聴いたが、やはり翻訳詞の難しさ方が耳についてしまった。しかしカジモドの英語版を歌っているTom Hulceはあの『アマデウス』の主人公だったとは分からなかった。


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