最近見たもの、聴いたもの (68)


2004年3月5日アップロード


02.2.21.

日本音楽教育学会北陸地区例会 富山市民芸術創造センター 大練習場3 午後1〜5時

富山大学の深見友紀子先生のご案内に預かり、音楽教育の学会に参加。発表者のほとんどが新潟勢。音楽教育の論文には、いわゆる音楽心理学の影響が強くみられる。おそらく学生・生徒が特有の音・音楽にどのように反応するかを科学的に検証するには、実証的で実のあるものになるに違いない(私は「音楽心理学」の大半は「『音』心理学」ではないかと思うこともあるけれど)。一方で、現場でどのようなことが起こっているのかが、やや分かりにくい感じもする。上越教育大の大学院生による指導案(04.3.29. 注:ここを「指導要領」と書いていました。訂正してお詫びします)の書き方についての研究は面白かったが、ご自分が学部時代で習われたことをやや絶対視するようなところがあるのが、若干気にはなった。指導案で「シナリオ」を全部書くことや、実際の指導表の前の部分の項目名のそれぞれがどのような名称であるかがそれほど重要に思えなかった、など、私の考え方との違いもあるのだろうか。横浜では指導案の書き方が統一されていると聞くが、それほど統一することが必要なのだろうか? 素人の私にはよく分かっていない。

上越教育大学の先生が講演をなさったのも面白かった。自分も去年まではアメリカの大学にいたので、論文を受ける前にどのような手続きがあるのか、あるいはどういった教科があるのかについては、やはり興味がある。論文前に資格試験があるのは私のところと同じだが、私の場合、この資格試験は論文に直結した問題について、論文審査の先生がそれぞれ問題を作るものであった。また、私の場合、博士課程の学生になる前に、やはり資格試験のようなものがあった。その内容は、音楽史(西洋)、世界音楽、音楽学(メソドロジー)、音楽分析、記譜法の5科目である。ちなみに私が試験を受けた時の音楽史の問題は(1)音楽におけるパトロン(2)舞踊音楽のいずれかを選び、6時代の特色について述べる問題(私は後者を選択)。世界音楽は主要地域の概要を説明する問題。音楽学は代表的なメソードと音楽学者について述べる問題。分析は与えられた譜例の楽曲分析(和声分析ではなく、楽式論的なもの)、記符法は、譜例として出された楽譜がどのような記符法で書かれているか、どのような音楽のものか、どのような特徴があるか説明するものである。確かテキストなし3時間を5日間かけてやるもので、私は図書館で回答を書かされた。そして次の週、口頭試問となるのであった。ああ、懐かしい。

でも私が一番楽しんだのは、新潟大学の学部4年の学生さんによる地元の祭りにおける伝承を扱ったもの。歴史的にしっかりとした調査がされていて感動したし、実際に映像も見られたしで、こういう研究をしていてうらやましいなあ、と素直に思った。富山では誰かやっているのかな? そう言えばこの間城端出身の人が、やはり地元の民俗音楽について調査していると聞いた。確か彼女は金沢大学の院に行くんだったかな。また上教大先生の講演における発言「音楽教育学者は、まずミュージシャンでなくてはいけない」には、おもわずうなずいた。音楽学もそうだ。


02.2.23.

オーバード・ホールにて、犬島肇さんと待ち合わせ。そしてホールの館長をなさっている本庄清志さんに会見。地方都市における音楽文化のあり方について、いろいろ現場からのお話を伺うことになった。

富山の音楽のレベルは、確かにまだプロ・レベルとは言えないのかもしれない。今後もいろいろな文化振興がなされるように祈っている。予算の削減により「買い公演」も大変になるのかもしれないが、健闘を祈るばかりである。市民の「啓蒙活動」と「本物の上演」は、そのどちらかの立場に立つかではなく、常に両立して進めて行くべきものではないかと思う。

それにしても残念なのは、富山市公会堂の資料がどこにあるのか分からないことであった。恐れていたことが現実になったような気がした。当時のプログラムは市立図書館にあるのではないかということであるが。はたしてどうだろうか。


04.3.2.

「ラファエル・クーベリック・インタビュー」ジョン・エーミス(インタビュアー)(BBC『トーキング・アバウト・ミュージック』から) NHK-FM、1983.4.19. 放送

自分でもなぜ残していたのか分からないが、とりあえずエアチェックしたという録音が実家のコレクションにはある。これもその一つ。ずっと英語で放送される音楽番組が、かつてNHKで放送されていたのも驚くべきなのだろうか。もちろん当時高校生になりたての私はこのテープで語られている内容など、全く分かるはずがなかった。また、こういうのを録音したのも、それなりにクーベリックの音楽に共感していたことの証だろう。1982年9月7日 ルツェルン・クンストハウスにて演奏されたドヴォルザークの第8交響曲をエアチェックしている。当時、もちろんLPレコードも購入したが、やはりライブ放送ほどの感動は得られなかったと思う。当時『リクエストアワー』の司会をなさっていた諸井誠さんの勧めで、クーベリックの《新世界》交響曲のLPも購入した(これはそれなりに気に入っていて、CDも持っている)。

クーベリックに対するBBCのインタビュアーの質問は時に辛辣で、よくクーベリックが怒らずに答えるなあと感心した。もちろん彼の経歴上、楽団や評論界のトラブルは絶えず。しかし評価する人は確かにいた。エーミスのいうように「世界一の客演指揮者」かどうかは分からないけれど。

カセットの余白には山本直純指揮による自作《白銀の栄光》が収録されている。こんなものも録音してたんだなあ。


04.3.5

市立図書館で資料調査。副館長さんの武塙二郎さんによると、公会堂時代のパンフレット等は一切来ていないということで、これは非常に残念。一体公会堂関係の資料はどこへいってしまったんだろう??? しかし竹中祐博さんが図書館鑑賞室で行っていた「ステレオコンサート」という市民のためのレコード鑑賞会のプログラムが残されており、これがなかなか面白いのである。いずれ時間があったら、じっくり拝見させていただき、資料として役に立てて行きたい。


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