最近見たもの、聴いたもの(45)


2002年1月30日アップロード


02.1.25.

とある音楽関係のMLに、以下を投稿。

Subject: Re: 境界線(長文失礼!)
Date: Fri, 25 Jan 2002 11:48:17 -0500
From: TANIGUCHI Akihiro 
To:
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谷口と申します。ずっと読ませていただいておりましたが、出てまいり
ました。Aさんにはすでに同内容のものをメールでお送りしま
したが、こちらにも、それを手直しして流します。

At 1/23/02 12:57 PM, Aさん wrote:

>「クラシック音楽とそれ以外の音楽の境界線ってあんのかぁ?」

とりあえず浮かんできたのは「ヨーロッパから派生した(芸術)音楽で、
ポピュラー音楽というのが生まれる前までの音楽」がクラシック。いそい
でそれに付け加えれば「ポピュラー音楽が生まれても、かつての伝統を受け
継ぐと考えられる音楽は、やはりクラシック」となってるんじゃないかな
あ。感覚的なものでしょうけどね、ここら辺りは。ただ、ポピュラーが生
まれて、その対概念としてクラシックというジャンルが誕生したんではな
いかということを考えてました。

レコード屋の商売としては、クラシックは、ある程度リピーターがつくと
いうことで、ポピュラーと分けた別のセクションに置いてあるのでしょう
か? ジャズも?

また、これも英語の問題になりますが、classic (s) は古典となりますから、
本当は古代ギリシャやローマのことを指すのでしょうが、すでにBさん
がおっしゃったように、18世紀音楽の文脈で使われることもあるようです。
Classical musicというのは学術レベルの世界では使われないようですが
(serious music、art music、concert musicという言葉が使われるようで
す)、レコード雑誌など、一般商業誌では普通に使われるようですね。

なお、Bさんのお挙げになった、日本の伝統音楽ですが、アメリカの場
合、「traditional music」という言い方もよくなされるようです。また、
非西洋音楽にも「art music」は適用されるようですが、これは例えば、特
別の訓練を経て技術を身に付けるとか、舞台上で演奏されるとか、お金を
もらうとかいう、「プロの音楽」に近い意味でも使われているみたいです。

#この辺は、ぜひ民族音楽学の方にお願いしたいところであります。

#レコード屋の分類で「邦楽」というと、「J-pop」と同義になっていて、
#伝統音楽は「純邦楽」なんて言うんですよね。

>ガーシュインの作品のどこまでがクラシック?

演奏される場所的な文脈で変わることもあるようですね。例えばブロード
ウェイやティンパンアレーの歌はポピュラー、オーケストラ作品やオペラ
はクラシックというような分け方も不可能ではないと。

一方、《ポーギーとベス》などは「folk opera」とガーシュインが言って
いますけれど、このfolkというのは何かとか、学者の中でもまだ一致して
ないように思います。また、初演されたのが通常のオペラ劇場でなかった
ことも、分類を困難にしているようです。

>現代音楽は本当にクラシック??

いわゆる60年代の前衛音楽は、芸術音楽史の延長線上に捉えられることが
多かったのではないでしょうか。

しかし、前衛的な語法の音楽に関心をもつ聴衆層は、現在アンダーグラウ
ンドとかノイズといわれるポピュラー音楽の方に移りつつあるように思い
ます(セリエルは分かりませんが、例えば電子音楽、ケージ、クセナキス
など)。

一方、クラシック音楽の現在の創作活動は、いろんなジャンルの音楽の影
響を進んで取り入れているので、聴衆はコンサートホールを中心としたク
ラシックのものでしょうが、語法的にはなんでもアリ状態になりつつあり
ます。ただ、無調ものはこれからも避けられていくかもしれません。残る
とは思いますが。

>学問的には、きちんとした決まり事があると思うのですが。
>どんなものなのでしょうか?

かつては「文化」といえば、「芸術文化」のみを指していたことがあり、
それ以外のものは排斥される傾向がありましたが、今はそうでもないで
しょう。昨年のアメリカ音楽学会ではロックやジャズの論文発表のセッ
ションもありましたよ。

#もちろん、中世音楽とジャズが一緒のセクションになることは、ちょ
#っと考えにくいですが。

また、同じ音楽学(musicology)でも、アメリカの場合、西洋クラシック
音楽はhistorical musicology、それ以外はethnomusicologyで研究するの
が暗黙の了解になっていますが、音楽を歴史的に見ることはポピュラー音
楽でも可能ですし、人類学/社会学的に見ることはクラシックでも可能な
ので、この分類にもかなり問題ありとされているようです。これからは、
大きな一つの「M」usicologyとしていくべきではないかというのが流れだ
と思います。

ジャンル分けというのは、便宜的なものだというのが、私の考え方です。
物事を大雑把に一まとめに捉えるのなら、何となく便利といいますか。

>つまらない質問だと思いますが、よろしくお願いいたします。

いや、つまらないどころか、もっとも深遠な問題も含むご質問だと思いま
すよ。

--
"Music is humanly organized sound." (Blacking)
TANIGUCHI Akihiro (谷口昭弘)
ataniguc@mailer.fsu.edu
http://mailer.fsu.edu/‾ataniguc/index-j.html

02.1.26.

昨日から、先生に直してもらった論文の一章を見ている。大体言うべき主張はすべて出されたという印象を持たれているようだが、英作文的な問題、シンタックスなどにまだ多くの問題があるのだという。英語、長い間やっているが、やっぱり苦労している。でも、頑張るぞぉ。次の章のアイディアをまとめている。


02.1.29.
 
 
今日の夜は、今度の学会(ウチの学校、詳しくは『ExMusica』第6号参照のこと)で発表する人たちのリハーサル会。う〜ん、でも論文的にはそれほどエキサイティングではなかったなあ。要旨が通ってから書く人も多いし、今回のエルンスト・ドホナーニも、そもそもこの機会に調べたという人も多かったし。ルネサンスのギター教則本の人のは、なんでもトランスクリプションに誤りがあったとかで、先生から指摘があったりと、いろいろ大変そうだった。

しかしそれよりも大変なのは、学会資料ファイルの詰め込み作業。重い冊子がたくさんあって、もう腕がつりそうになった。普段から運動量が不足している私には余計つらかった。ああ〜情けなや。

いま家に帰って聴いているのは懐かしのアニメ曲《エースをねらえ》。小学校の時に放映されていた高校テニスのアニメだが、これ、調が嬰ヘ長調ということで、当時ピアノで弾けなくて、悔しい思いをしたものだ。何しろ移調して弾くのがいやで(変なところにこだわる癖があったもんだ)、黒鍵が多い調はやりにくい。

前回クリスタルキングについて書いていたのだが、「北斗の拳」のテーマソングを早速聴いてみた。なるほど、このハイノートはずっとリラックスしたきれいなもの。正直驚きだった。バリトン担当の人のキャラは昔とあまり変わらなくて、微笑ましいものを感じた(失礼!)

流行っているからといって、やたらと聴いてなかったアーチストにユーミンがいるのだが、改めて聴いてみると、細かくコードが入る人なんだということが分かってこちらも驚いた。《卒業写真》と《春よ来い》。前者は伴奏が素朴だけれど(基本的にピアノ伴奏)、サスペンドで聞かせる。シークエンス進行も歌の間に何度もあるけれど、左手にG#の出るところ(ディミニッシュ)が2回(前奏・後奏)なのも、キャラクター的に重要だと思う(→例1)(ない方はこんな感じ、→例2)。《春よ来い》だが、ハーモナイズされたリフレインは、5音音階がメロディーの核になっている(→例3)。しかし、いわゆる「四七抜き」くささがなくて不思議。出だしの伴奏の和音に一工夫してあるからだろう(→例4)。それにしてもこのリフレインはあまりにも強烈な印象を残すので、ヴァースの方をメロディーを忘れてしまう(これ、特に前半がフォーク調ですね)。それにピアノ伴奏なのに、テクスチュアはギターっぽい。雪を表すような音色的な配慮なのだろうけれど、これは良いアイディア。

例1

例2

例3

例4


01.1.30.

今日は図書館のセールがあった。何と1980年版ニューグローヴにサイレント・オークションまで。でも新しいのが出たとなると、どうもそっちを買うのもなあ。その他面白いかったのは、オープン・リール・デッキ、テープ付き! 確かうちの図書館にはグローフェのインタビューが入ったテープがあったと思うのだが、DATに落としたんだろうか?

一番大量に出ていたのがLPレコード。ほとんどがイージーリスニングと学校の合唱団のカスタムレコード。研究にはほとんで関係なさそうなもの(いや、しかし誰かイージーリスニング音楽の歴史など研究しないのだろうか???)。クラシックにしても、やたらとマイナーなオペラなどあった。私もプロコフィエフのなんだかよく分からないオペラを買おうかと思ったが、結局やめた。

買ったLPレコードを列挙してみよう(順不同)。

The U. S. Air force Singing Sergents witn the U. S. Air Force Academy
Cadet Chorale.  ".. one nation under God."  USAF No number.  LP.
(愛国歌集)

The United States Air Force Singing Sergeants.  Choral Masterworks.
USAF.  LP.
デロ=ジョイのセント・セシリアへ、ダニエル・ピンカムの結婚カンタータ、
バーンスタインのチチェスター詩編、ランダル・トンプソンのアレルヤ

The Amerinca Choral Directors Association Bicentennial Celebration.
Concert.  World Youth SO; Lukas Foss, conductor.  Audio House AHSI 
16F76
自演の《アメリカン・カンタータ》世界初演を収録。エレキが入ってる。
何だかバーンスタインの《ミサ》みていだなあ。

Ives. String Quartet Nos. 1 and 2.  The Concord SQ.  Nonesuch.
図書館で聴いたが、持っていなかったので買った。ケンブリッジ・レコードの
アイヴズの声楽/室内楽作品集もあったが、持っているので買わなかった。

Dominick Argento.  Peter Quince at the Clavier; I hate and I love.
Music Heritage Society MHL 9121991L
CDもあるそうだが、LPにしても通常価格では買わなそうなので買った。

Mark O'Connor.  Stone from which the Arch was Made.  Warner Bros.
何だか分からないけど、最近クラシックに進出しているので買った。

Cantileta Chamber Players.  Foss: Round a Common Center.  Copland:
Quartet for Pf and Str.  Yehudi Wyner: Intermezzi for Pf Quartet.
Pro Arte.
未開封。

Rally 'round the Flag
Cheer Boys Cheer (Volume Six)
Dixie's Band 
  1st Brigade Band; Nicholas Contorno, bandmaster.
南北戦争っぽい音楽のLP3枚。

The Univ of Vermont Choral Union; James Chapman, director.  
Vermont Harmony.  Philo 1000.
賛美歌集

Rochester Inter-High Symphony Band; Richard H. Snook, conductor.
Century Custom 31626.
吹奏楽。ネリベルのエスタンピー、デロジョイオのルーヴル(2楽章)
フィルモアのラッスストロンボーン他。

Andre Kostelanetz and His Orchestra.  Stardust Columbia
CL 781.
CDになってるのかな? とりあえず買っておいた。赤色6つ目。
「The Best of Kostelanetz」というでかいボックスもあったけど、
見送り。

アメリカものではカセットも2つ。Pennsylbania Youth Honors
Concert Band.
どちらもプライベートっぽいカセット。ライブもの。録音は結構よ
さそう。1つにはネリベルのBorn to Dieという聴いたことのない
曲が入ってる。

以下はアメリカもの以外。

ベートーヴェン 熱情 ルドルフ・ゼルキン Columbia ML 2002
10インチ盤。紙ジャケは怖い。

ハイドン 驚愕、モーツァルト 33番 ベイヌム/ACO
London LL 491
盤質は良くないなあ。

マーラー3番 アブラヴァネル/ユタ響 Vangard VCS 10072/3

シェーンベルク/管弦楽のための5つの小品、ウェーベルン/カン
タータ第1番、ストラヴィンスキー/ダンバートン・オークス
いずれもギュンター・ヴァント指揮 Nonesuch H-71192
ライナーはソーズマン。

マーラー4番 ワルター/NYP Columbia ML 4031
紙ジャケ。

Van Cliburn.  My Favorite Chopin RCA Victor LSC-2576
とりあえず。

モーツァルト オーボエ五重奏、ホルン五重奏 エステルハージ
弦楽四重奏団 Telefunken Das alte Werk.
ピリオド楽器つうことで、とりあえず。

コダーイ/ハンガリー詩編、孔雀変奏曲
ケルテス/LSO他 London OS 26186
作品を聴いてみたかったんで。

ビゼー/アルル12、ボヘミア舞曲
コステラネッツ。満津岡さんに影響されて???

20世紀初頭歌曲集 フィッシャー=ディースカウ
EMI Electrola C 065-02 676
珍しそうだったから。シェック、プフィッツナー、
ロイッタ(?)、フォルトナー、ブラッヒャーなど。

ラザールベルマン/シューマン2番ソナタ、リストのシューベルト
歌曲トランスクリプション。Quintessence PMC-7155
メロディア音源。

Great Voices of the Century (Recorded 1902-44)
ジーリ、E. シューマン、マコーミック、レーマン、シャリアピン
など。Seraphim 60113
未開封。

音源以外ではスコア数冊(ちゃんとした研究に使えない名作モノスコ
ア集)。ナディア・ブーランジェの伝記。なぜか本には手紙が挟み込
んであったが、なんとブーランジェの自筆のもある。うちの学校にい
た先生宛に書かれていたみたい。いいのかなあ、これ。

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