最近見たもの、聴いたもの(34)


2001年9月15日アップロード


01.8.28.

指導教官の一人にあって、久しぶりに話す。論文に本格的にかかることを約束。いつも私のことをポジティヴに考えてくれていて、こちらとしても、本当に励まされる。


01.8.30.

バルトーク 交響詩《コシュート》 ジョルジ・レーヘル指揮ハンガリー放送交響楽団 Qualiton SLPX 1203(LP)

バルトークの出発点というか、離発点というか。予備知識がないと、ワーグナーの作風を継承した作曲家という印象を持つかもしれない。LPの裏に収録されているピアノと管弦楽のためのスケルツォなどは、リヒャルト・シュトラウスの面影もあるようだ。管弦楽法の確かな腕前は、その後の民族主義的なくすんだような音色への手がかりとなっているのだろうか。後半にちょっと顔を覗かせる、弦楽器の旋律のいくつかに、その後を感じさせるものを聞く。作品としてより感銘を受けたのは、《コシュート》の方かも。

ウラディミール・フォーゲル 《アルピアーデ》 ドリス・アミエ(ソプラノ)、フレッド・バース指揮アンサンブル、カンマーシュプレッヒコール・チューリッヒ Turicaphon CT-64-22(LP)

シュプレッヒシュティンメといえば、シェーンベルグの《ピエロ・リュネール》だが、合唱が行っているのは、もっと純粋に抑揚の聞いた言葉という印象(ドイツ語とフランス語)。リズムがきっちり規定されているので、それでもやはり話し言葉ではないのだが(拍節感もしっかりある)。ソプラノ独唱の方は、きっちり音程を歌っている。無調の作品だが、音の選び方はなめらかで自然だ。合唱のみの場合と、全体がアンサンブルになっている場合では、合唱の効果に微妙な違いがあって面白い。フォーゲルはブゾーニの弟子でもあったのか。


01.8.31.

ブルックナー 交響曲第7番 変ホ長調 オイゲン・ヨッフム指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 日Altus ALT-015/6

ヨッフム最後の来日のライブ録音。芯のある音をしっかり立ち上げながらも、豊かに響かせるコンセルトヘボウの力量に驚く一方、それを音楽的に持続させ、実りあるものにしているヨッフムに、はなはだ感動する。第2楽章のテンポがこれまた遅く、朗々とした音の中に身をゆだね、包み込まれるかのようだ(これはちょっと遅すぎるという人もいるかもしれないが)。後半楽章も遅めのテンポ設定だが、要所要所がしっかり弾き込まれているし、楽想が止まる恐れがないので、安心して聴ける。なお、ボーナスCDとして、同日演奏されたモーツァルトの交響曲が収められている。

なおこのCD、新宿のあるCD屋で待ち合わせをしている間に聞こえてきて、そのまま「買い」を決定したCD。でもその聞いたお店では「君が代のすべて」や「オラショ」(フォンテックの新録音!)や近藤譲や川島素晴のCDを買ってしまい、このCDは買いませんでした。お店の人、すいません。でも、他にもたくさんの人が買ったんではないだろうか。


01.9.2.

ワーグナー・コンサート フリッツ・ライナー指揮ピッツバーグ交響楽団 米コロンビア ML 4054(LP)

Die Meistersinger: Prelude; Siegfried: Forest Murmurs; Lohengrin: Prelude to Act I; Lohengrin: Prelude to Act III; Die Walkure: Ride of Valkyries.

テンポの揺れが少なめに感じられるし、やや素直すぎる嫌いもあるが、鳴りのよいオーケストラをきちんと統率したという印象を持った。テンポは速め。やや大衆向けの選曲だが、《ローエングリン》第1幕への前奏曲は、それなりに聴かせていると思った。


2001.9.7.

ブルックナー 交響曲第8番ハ短調(1882年のシャルク版) ハンス・クナッパーツブッシュ指揮バイエルン国立管弦楽団 米Music & Arts CD-266

これは驚き。ウェストミンスター盤のスタジオ録音とまるで違う。演奏速度もそうだが(12:44, 13:16, 22:14, 21:27)、その真に迫ったダイナミックスさと、まさに音楽がその場で生まれているという臨場感は、これが同じ指揮者のものかと思った。クナッパーツブッシュはリハーサルをしないことで有名らしいが、この演奏には、それが良い方向に出ているのではないかと思う。録音は時々気になる大きな雑音もあるし、金管楽器の歪みもあるが、想像力で補うべきものだろう(この「ボコッ」という接触不良か何かによる雑音は、確かにひどいと思うけれど)。1955年12月5日、ミュンヘンでのライブ録音。


2001.9.9.

ベートーヴェン 交響曲第2番・第8番 ウィレム・メンゲルベルグ指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 Tahra TAH 391-393

偶数番交響曲は、《田園》を除けばやや隠れた存在になりがちだが、なんのなんの。これほどドキドキさせてくれる2番はこれまで聴いたことがなかった。ずっしりと重いオーケストラの音響は、確かに歴史的には正しくないのかもしれないが、その真摯さには感動せずにはいられないのではないだろうか。


2001.9.11.

サン=サーンス 交響曲第3番(オルガンつき)ハ短調作品76 ポール・パレー指揮デトロイト交響楽団、マルセル・デュプレ(オルガン) 米Mercury SR90331(LP)

ミュンシュとは路線が逆の演奏。この作品の印刷譜を見ると、サン=サーンスの作曲の腕前の確かさが整ったスコアから見て取れるのだが、それを音にするとこうなるのだろうか、と感じさせる。個人的にはミュンシュの燃えるような音楽により強い感動を覚えるが、同じスコアから本当にいろんな音楽づくりができるものだと感心することになったのは確かだ。


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