最近見たもの、聴いたもの(31)


2001年6月25日アップロード


01.6.6.

Sibelius, Jean. Symphony No. 7 in C Major, Op. 105. Berlin Philharmoniker; Herbert Von Karajan, conductor. Deutsche Grammophon 415 107-2. CD.

シベリウスはフィンランド出身で、北欧だから寒い音楽、というのはあまりにも表面的すぎるような気がする。私はいつも暖かいものを感じているからだ。時にそれはナショナリスティックなものでもあるのだろうが、燃えるような熱さもあるのではないかと思う。チャイコフスキーも同様ではないだろうか。私も雪国の生まれなのだが、案外冬というのはストーブのたいてある室内にいることが多く、その中でぬくぬくとしていることも多い。確かに外は寒いのだが、人間の限界に達するような場所と違って、案外寒いことよりも、雪の多さや自動車の運転の恐さといったことの方が記憶にあるのではないかと思う。もちろん、そんなこと、音楽がどうのこうのというのとは、関係ないんだろうけど。

カラヤン/BPO、1968の録音。以前聞いたコリン・デイヴィス/BPOよりは、ずっと面白く聴ける。

Viva Verdi!: Arias, Duets, and Choruses. Carras, Domingo, Kraus. EMI Laser CDZ 7 62521 2.

ヴェルディ・オペラのハイライト集。なかなか選曲が良くて楽しい。こういうのはレーベル色が前面に出てくるので、歌手の質とか録音の音質が気になるものだ。やはりオペラを観る前に聴いておくと面白い。周りのお客の「待ってました!」の気持ちにも共感できるからだ。レナータ・スコット、アルフレッド・クラウスの録音が中心。音質の方はやや広がり間に欠けるものが多いか。カラス、ドミンゴはあまり出てこない。EMIのハイライト盤では、マリア・カラスとジュゼッペ・ディ・ステファノの歌唱を集めたものが好きだ。アリア周辺の音楽もたくさん入っている。ちなみにそっちのCDに入っている《清教徒》と《トスカ》が好きだ。


01.6.9.

Brahms, Johannes. Lieder. Jessye Norman, soprano; Geoffrey Parsons, piano. Philips 416 429-2

ブラームスの歌曲というのは、独特の転調があるし、メロディーがちょっと風変わりなんで、歌いにくいところがある。でも、その独特な味が面白いように思う。ノーマンとパーソンのCDは、反対にクセのない音楽。本当はもっとドラマがあるようにも思うんだけど、その辺、物足りないものを感じたのも確か。Die Melodien zieht es mirは、長く記憶に残りそうないい旋律だと思う(これも歌いやすいというと、ちょっと違うのかもしれないけど)。

Mozart, Wolfgan Amadeus. Sinfonia Concertante for Violin, Viola, and Orchestra in E flat Major, K. 364 (320d). Itzhak Perlman; Pinchas Zukerman, viola; Israle Philharmonic Orchestra; Zubin Mehta, conductor. Deutsche Grammophon 415 486-2.

「音楽が分からない」というのがどういう意味を持つのか、というのは難しい哲学的な論争になりそうだけれど、私は、この《シンフォニア・コンチェルタンテ》というのは、今一つ楽しみ方が分かってない曲の一つ。古楽で聴くと、印象も変わるかな?


01.6.10.

China. Red Army Men Brave All Difficulties of the Long March: Long March Song Cycle. 紅軍不怕遠征難 中国唱片(China Record)CCD-93/296

(抗日戦争時代の)日本軍と国民軍に対する、(共産党に支えられた)紅軍の強さを高らかに歌い上げる、西洋の管弦楽と民族楽器、合唱のための組曲。4人の作曲家による共作。大陸中国の人にとってはかなり有名な作品のようだ。こういう共産党、文化大革命時代の音楽というのは、どこで買えるんだろう。これは中国の人に借りたCDだけど。歌詞カードがないので、詳しい内容は分からないが、歴史的な出来事を描写したり、特定の場所の美しさを称えるもので、ナレーターとオーケストラが交互に入り、物語的に楽しめるものだろうと考えている。

うちの大学には、中国音楽をやる先生はいないけれど、こういう時代の中国音楽って、やっぱり知っておく必要があるんじゃないかなあ。ま、もっとも日本音楽だって伝統音楽中心なんだけど。(05.9.8. 訂正)


01.6.14.

昨日は、法学部の図書館に行って、ラジオの法律関係の調査をする。アメリカ政府の、ラジオに対する考え方を探るためだ。まさに国民的レベルにまで発展した当時のネットワーク放送網だが、一方で、それらすべてが民間放送であるところが、アメリカらしいところである(後に公共放送はできたが)。いわゆる「検閲」にはしないと明言する一方、ラジオの公共性を考えろというような文言もあり、間接的に内容に踏み込むことができるようにも見える。微妙なところだ。当時流行していたジャズの放送に影響したのは、間違いのないところだろう。

そして今日は、ニューヨーク州立大学図書館から電子メールが届く。ついにフィリップ・ジェームズの《放送局WGBZX》の楽譜が入手できるかもしれない。1932年、NBCによって行われたラジオのための作品コンクールで第1位を取った作品で、当時の額で5000ドルもの賞金が出たというシロモノ。一方では、後の雑誌記事を読んでいると、とんだお笑い草にもなっているともいう。はたしてどういう作品なのか、楽しみだ。

日本の方では、久しぶりに新聞記事を書くことになった。今自分がやっている論文の主題と、現在のアメリカの作曲界を絡めた内容だ。しかし、雑誌とは違い、時事性、社会性、シャープな文体が求められるので、新鮮な気持ちであった。いやいや、面白くなってきましたね〜。


01.6.24.

新聞記事の方は、タイムリーな話題をもっと盛り込んだものがいいとのことで、書き直すこととした。しかし、月一度の連載になる可能性もあり、忙しくなりそうだ。


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