最近見たもの、聴いたもの(30)


2001年6月4日アップロード


01.5.5.

Pomp and Circumstance. Hollywood Bowl Symphony Orchestra; Capital Symphony Orchestra; Felix Slatkin, Earl Bernard Murray, Alfred Newman, Carmen Dragon, conductors. Capitol SP 8620.(LP)

The Stars and Stripes for Ever [sic.]; La Marseillaise; Procession of the Sardar; Procession of Bacchus, from "Sylvia"; Pomp and Circumstance No. 1; Rakoczy March from "The Damnation of Faust"; March of the Dwarsts, from Grieg's "Lyric Suite"; Entry of Boyards; Wedding March, from "Midsummer Night's Dream."

ハリウッド周辺のオーケストラによる楽しい行進曲集。《ラ・マルセイエーズ》は、最後がちょっとクサいが、面白い編曲になっている。編曲の趣味ということでは、ボストン・ポップスよりも、ずっとエンタテーメントしているという気持ちが伝わってくる。土地柄のせいなんだろうか? しかし《シルヴィア》を聴くのは高校以来だろうか。懐かしい(ニューマン/ハリウッド・ボウル)。

《威風堂々》第1番については、コリン・デイヴィス指揮によるプロムスの演奏が強烈に印象に残っており、「急」の部分がどれも速く聞こえてしまう。でも、中間部などは、それなりに聞かせてくれる(ドラゴン/キャピトル)。音色的には、ボストン・ポップスなんかよりも、ずっと普通のオケらしくていいなあ。録音は、ちょっと金管がうるさいような気がする。


01.5.6.

Chausson. Symphony in B-flat; Franck. Le Chasseur Maudit. Boston Symphony Orchestra; Charles Munch, conductor. RCA Victor LSC-2647.(LP) 

ショーソンの音楽についてはほとんど知らず、そのドイツ的でロマンティックな作風に驚く。また、師匠のフランクに比べると、音色的・和声的な艶かしさがややなくなり、その分ストレートな表現に聞こえる。演奏に関しては、オーケストラのアンサンブル、特に声部間のバランスに不満もないわけではないし、イントネーションのいま一つそろってないところもあるようではある。しかし、全体としては無難といった印象。本当は、もっとドラマティックに演奏できるのかもしれない。フランクの《呪われた狩人》は、狩音楽の定番楽器、ホルンが印象的な管弦楽の佳作。デュカの《魔法使いの弟子》よりは穏当な作風。

Strauss, Richard. Metamorphosen; Le Bourgeois Gentilhomme. Chamber Orchestra of Lausanne; Victor Desarzen, conductor. Westminster WST-17026(LP)

ウェストミンスターにステレオ盤があるのは知らなかった (^_^;; なるほどシュトラウスは哲学的な問答に窮するよりも、現実を楽しみ、それを表現するためのしっかりとした技巧を持っていたということか。確かに《変容》というのは、深遠で奥深そうだけれど、何かしら醒めたところが裏にあるのかもしれない。突き放したり近付けたり、自由にしながらも、しっかりとした歩みで進めたという感じがする。《町人貴族》の方は、交響詩やオペラの重いシュトラウスばかり知っていた私にとっては興味深い作品に聞こえた。音楽史的な激動の時代とともに生きたが、きっちりと自分のやりたいことを実行したのだろうな、という気がした。


01.5.8.

La Promessa: Italian Songs. Sumi Jo, soprano; Vincenzo Scalera, piano. Erato 3984-23300-2.

いわゆる「イタリア歌曲」である。声楽家を志す学生がこういった曲を必ず何曲か歌う。私にとっても懐かしい。ピアノ伴奏というのも、いまどき珍しいように思った(カレーラスもドニゼッティーとかベッリーニとか出してたっけ)。昔使った全音の楽譜、アメリカでもシャーマーのが同じなんだけれど、19世紀的なおどろおどろしい伴奏がついていたのを思い出す。最近アメリカは、もっとすっきりとした伴奏のを使うようになっているようで、私もそれを使ってレッスンを受けた記憶がある。なかなかフレッシュな気分が味わえた。この中に収録されている「Caro mio ben」なんかも、スミ・ジョーが適当に装飾を加えたりしていて面白い。ただ、歌唱法は、いわゆるベル・カントで通常のビブラートといった感じ。でも、昔私の先生に聞かせてもらったジーリなんかから見れば、大したことないなあ。あれを聴いた時はびっくりしたなあ。こんな風に歌っていいんだ、みたいな。やっぱり現代人というのは楽譜にかじり付きなんだろうか、と思ったものだ。

それにしても、トスティの《Non t'amo piu》なんかも、ここまで歌い込まれると感動するなあ。バカにできないですよ、こういうのって。久しぶりに声楽科だった自分が帰ってきたような気がするなあ。

Beethoven. Eroica Variations; 32 Variations in C Minor; 6 Variations in F Major. Claudio Arrau, piano. Philips SAL 3764(LP)

こういうピアノの演奏というのは、感想を書くのが難しい。これといって驚くほどのものがあるようにも聞こえなかったからだ。手元にある日本語のピアニストのガイド本には、盛んに「精神」という言葉でアラウが解説されている(「精神」性、「精神」的、「精神」面などと、2ページ中8回使われている)。この「精神」という言葉はどのように解釈したらいいんだろう。分からない。


01.5.9.

Haydn. Symphony No. 44 in e "Trauersymphonie," No. 46 in C "Maria Theresa." Danish Radio Symphony Orchestra; Mogens Woldike, conductor. London LL-844. LP.

モダン楽器による古典派音楽には、どちらかと違和感を感じている。でも不思議と大丈夫なものもあって、身のいい加減さを知るところだが、交響曲48番《マリア・テレジア》などは割と大丈夫なのに、44番《悲しみ》は苦手。ビブラートもそうなのかもしれないけれど、リズム感も要因かもしれない。


01.5.10.

Bruckner, Anton. Symphony No. 5 in Bb. VPO; Heitink, cond. Philips 422 452-2.

ハイティンク/ウイーン・フィルとくれば、かなりのものが期待できそうなブランドではあるのだが、この演奏について言えば、日本のファンには評判が悪いようである(投稿系サイトを参照した)。クナで聴いたことがあったと思うのだが、どうも思い出せない。ウイーン・フィルの響きの美しさ、ダイナミックさに驚いたというのが、正直な感想なのだが。そんなにヒドい演奏なのかなあ。もっとも「標準的」な演奏を知らないのだけれど。ヴァント盤でも聴いてみるか(とかいいながら、予算の都合でティントナーになる可能性が (^_^;;)。

(01.5.23.追記)Amazon.comで調べたら、ヴァントは第4しか売ってないということが分かる。ま、いっか。そのうちどこかで入手できるでしょ(甘い?)。

陸上自衛隊 富士総合火力演習 1988年&1999年 キング KICS 2340

タイトルからして、物凄いストレートなCD。入っている音も、「そのまんま録音しただけやんけ」という中身。だが、この「そのまんま録音した」というのがミソ。こういうのがステレオなんだなと、認識を新たに。マイクの指向性もあるんだろうけど、タイトな音場が基本。しかしとんでもないところから音が聞こえてきたりする。友人に言わせれば「クリア過ぎて、水みたい」とのこと。確かに、こういう音の有り難さが分かりにくいということで、「水」というのは的を得た表現だと思う。最も、私の持っている安物ヘッドフォンでは、このCDの音の良さを堪能したとは、全く思っていない。


01.5.28.

戦没者追悼日の今日は、たいていアメリカ音楽をラジオでやってくれる。NPRの『Performance Today』はバーバーのヴァイオリン協奏曲をメインに。年代的には、真珠湾の前の作品なんだけど、あの緊迫した第3楽章のためなのか、戦争と結び付けられることもあるようだ。その他はアメリカン・ブラス・クインテットによる、19世紀アメリカ音楽、ピアノによるデューク・エリントン・メドレーなど。

夜は実家にあるCDからのダイジェストMDを聴く。ベームの《モツレク》(DG)は、古楽器に慣れた耳には、どうも重すぎる。悪くはないんだけど、どうも活気が欲しい。この演奏で、《モツレク》は退屈だなあと思っていたし。フリッツ・ヴンダーリヒのベートーヴェン歌曲が続く(DG)。《アデライーデ》は私の先生がこの演奏を気にいってたことを思い出す。私もすきな演奏だ。シューベルトのリートのイメージからすると、むしろアリア的な構成だけれど、それがまた劇的でいい。ちょうど良い具合に高音域に行くのも心地よい。続くシューベルト歌曲もディースカウから比べれば、す〜っと流れるようで、これもまた絶品だと思う。それに世の中の歌手の大半は、ちょっとフィッシャー=ディースカウみたいには歌えないような気がするし。でも、本当に声がきれいですよね〜。若くして亡くなったのは、誠に残念。

時代が下ってフランソワ・クープランのPieces de violesのホ短調の方(Astree)。サヴァールのは装飾をいれて、しっくりと弾き込む。とてつもない深みにはまってしまうような音楽。August Wenzingerの、古いアルヒーフLPも昔聴いた。もしかするとこのLPの演奏の方が軽くて聴きやすいということも、あるいはあるのかもしれない(踊りやすいのはこっちかも???)。作品の質まで変わりそうな演奏法の違いだ。

MDを入れ替える。LPから落としておいた1曲目の三善晃のヴァイオリン・ソナタを飛ばし (^_^;;、ローリー・ジョンソンの組曲《女王万歳》。高校生のころNHKの『ブラスのひびき』で感動したものだが、Viva Reginaという原題が分からず、楽譜入手ができなかったという作品。厳しくいえば祝典的な曲でしかないのかもしれないけれど、かっこいいですよね。このMDに入っているのはUnicorn-KanchanaのCDに入った演奏。でも、ラジオでやった演奏の方が、やっぱりよかったなあ。次はジェンキンスの《ニューアークの勝利》。そう、『ブラスのひびき』のオープニングがデュカスの《ペリ》のファンファーレだった頃のエンディング曲。原曲はヴィオールのために書かれているはずだから、このフィリップ・ジョーンズのとはかなり違うだろうなあ。そうそう、この『戦争』というアルバム、いいですねえ。クーナウの《ダヴィデとゴリアテの戦い》を知ったのも、このアルバムだったしなあ(その後レオンハルトのオルガン版を買いましたけれど)。LPもまだ持ってます。国内盤CDになってないですよね、これ。PJBE、ルネサンス音楽に私を導いてくれた団体ですね。中学・高校と、ブラス・アンサンブルは随分楽しんだなあ。

次はボザのホルン四重奏のために書かれた作品。おっとメモってなかった。ベルリン・ホルン四重奏団のCDに入っているやつです(たぶん組曲っていうんじゃないかな)。ボザっていうのは、結構演奏されているような気がする。昔新星日響のホルン奏者の方が新潟大学のオケにいらした時に、楽譜を持ってきてくれて、みんなで楽しんだものです。ベルリンのカルテットだと、ちょっと音色が硬質な感じがしますけど、テクは確かですよねえ。トロンボーン四重奏の組曲もいいですね(レニングラードのトロンボーン四重奏団のが、昔ビクターから出てました)。Overture for a Ceremonyという曲も、レスピーギの<アッピア街道>みたいに盛り上がってくるのでかっこいい(Locke Brass Consort; James Stobart, conductor. Unicorn RHS 349、LP)。ホルヘ・ボレット演奏によるリストのピアノ小品。やはりカーネギーホールでのライヴのすごさを知ってしまうと、これは面白くないなあ。

最後はDivoxレーベルに録音されたヴィヴァルディの《四季》から<春>と<夏>。うん、何度聴いてもスリルのある演奏だなあ。昔、広島からでていた『In Tune』という雑誌を購読していたんだけど、あれがなかったらこのCDは買ってなかったなあ。カルミニョーラは最近ソニーにも《四季》を入れたらしいけど、このDivoxのを買ったころは、まだあまり知られてなかったような気がする。古楽以外の演奏では私はファザーノ(でしたっけ?)のイタリア合奏団が好きなんです(確かEMIでしたか?)。イ・ムジチは好みにあいません。あつぼったくて、もっさりした感じなんで。パイヤールみたいのも、たぶんダメだろうな。さらっとしたのがいいんですよね。(イ・ムジチで好きなCDは、《アイネクライネ》とかパッヘルベルのカノンとか、アルビノーニのアダージョとか入っているPhilipsのです)。

昔、NHKの「朝のバロック」だったかで、皆川達夫さんが解説をやってらして、イタリアの夏というのは日本人が考える爽やかなイメージとは違うんですね、みたいなことをおっしゃっていたように記憶しています。私も短調の響きに驚いたものですが、まあ、暑ぅ〜という感じなんでしょうかね(南ですものね〜)。カルミニョーラの演奏、<秋>以降は、多少荒っぽさも目立ってしまうんですが、<夏>までは、本当にどきどきして、いいですね。強く推薦。


01.5.29.

引き続き、実家CDのダイジェストMD。レオンハルトの弾いたバッハの《イタリア協奏曲》。学部2年の時に弾いた曲なので、大変なつかしい。この演奏がいわばお手本演奏になっている。テンポはゆっくり目だけど、風格のある演奏。第2楽章の揺れも味わい深い。グレン・グールドのもあるけれど、あのジェットコースターのような演奏とはまるで違った趣き。好みとしてはやっぱりレオンハルトかな。


01.5.31.

Saint-Saens. Symphony No. 3 in C Minor. New York Philharmonic; Lenonard Bernstein, conductor. CBS.

ミュンシュのような切迫したテンポとリズムで進める演奏をしってしまうと、こういうのは、ひどくのんびりとした解釈に聴こえてしまう。あまり好きではない演奏(好きな人、ごめんなさい)。


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