最近見たもの、聴いたもの(19)



2000年5月31日アップロード


Mizutani, Kiyoshi. Works 1989-1991. Povertech Industries PVRCD5.

Cross Off; Guiters on M. T. L.; Character Assassination; Cemetery; Exfoliation 1; Variation 1.

しょっちゅう繰り返し聴くのはシンドいけれど、時々聴くかもしれないというCD。ノイズ・ミュージック(和製英語だそうだ)の人だそうだ。面白いのは、Cross Offのように、自然の音が電気的に加工されることで、緩やかに流れる音楽と、Guiters on M. T. L.(これは移調の限られた何とかというやつかな)のように、どんどん迫ってくるような音楽と、2つの表現があるように思えたこと。


2000.5.28.

Bliss, Arthur, Sir. A Colour Symphony. Ulster Orchestra; Vernon Handley, conductor. Chandos CHAN 8503.

冒頭や第1楽章の途中を聴きながら、ドビュッシー流の色彩への指向/意識というものを感じていた。しかし、解説にあるように、特定の色が考えられているとは思わなかった。

この1922年の「色彩交響曲」は、4つの楽章にそれぞれ一つの色が当てられているそうで、私はそれを知って、特定の音に固有の色を見るスクリャービン的なものを考えていた。

しかし、解説を読み進めてみると、これはブリスの個人的な色への愛着のようなものであると分かった。例えば第1楽章「紫」は、「アメジスト、ページェント、忠誠、死」の色であるとしている。つまり色そのものから派生する様々な事象・それらの性格といったものも「色」に含まれているという訳だ。なお第2楽章以下は「赤」、「青」、「緑」の色がそれぞれ当てられている。

冒頭で印象主義的なものを感じたと思っていたが、作品全体は、フランスの作曲家たちのような内省的なものではなく、時には感情がむき出しになることもあるし、高らかになる金管に、思わぬ色彩があったりすることもある。しかし一方で、この「色彩」という言葉にとらわれてしまうと、この作品のダイナミズムが理解できなくなるのかもしれない。ロマンティックな気質は残しながらも、驚くべき強靭さと近代性も持っている作品だと思う。


2000.5.29.

Schubert, Franz. Songs. Jan Opalach, bass-baritone; Irma Vallecillo, piano. Vox Unique VU 9003.

ピアノはもう少し、前面に出てきていいと思う。特に通作形式のドラマティックな「ガニメート」など、いろんな楽想を移り行く作品では、積極的なピアノの参加が効果的だと思う。もっともシューベルトやシューマンの「伴奏」の役割が難しいことは、充分承知しているつもりだが。歌に関していえば、例えば「ミューズの子」など、言葉をもう少したててリズムときっちり合わせるべきだと思う。子音の位置をあらかじめもう少し注意深く設定するだけで、結構変わってくると思うのだが(子音の位置については、他の作品にもあてはまるところがあると思う)。


2000.5.30.

Piazzolla, Astor. Tango: Zero Hour. Nonesuch 79469-2.

ピアソラと出会ったのは、NHKで「タンゴの歴史」を聴いた時。すでに7、8年くらいも前のことだろうか。しかし自分でCDを買ったことがなく、友人にカセットを作ってもらったりで、これが初めての自費購入。つくづくこれは、聴かせるタンゴだなあ、と思う。実用音楽が芸術音楽となる瞬間、これはジャズにはビーバップとなって現われた訳だが、それを一人のバンドネオン奏者が築き上げたというのは、やはり大きな貢献といえるのではないだろうか。しかし、アメリカではジャズに変わってロックが実用音楽の次世代を握ったといえるのだろうが、アルゼンチンではどうだったのだろう。ピアソラのタンゴが伝統を破壊しているとされたのは、その辺りの事情もあるのだろうか?

Tabuh-Tabuhan: Music of Colin McPhee. Esprit Orchestra; Alex Pauk, conductor. CBC Records SMCD5181.

Symphony No. 2 "Pastoral," Concerto for Wind Orchestra, Transitions, Tabuh-tabuhan, Nocturne.

きらびやかな音色と躍動感のある作品。「タブ・タブハン」のように、明確にインドネシアを感じる作品もあるが、交響曲第2番や「ノクターン」など、異国趣味では片付けられない魅力もあると思う。


2000.5.31.

友人から、オーディオ評論家の長岡鉄男さんが亡くなったとの知らせ。とてもショックである。私は、オーディオ・ファンというには程遠い存在だが、 「ステレオ」や「週刊FM」、「FM fan」の連載は欠かさず読んでいたし、彼の影響で、田舎者の私が近所のレコード屋で入手できない珍しい音楽に興味を持つことが出きた。また、彼のスパイスのきいたオーディオ時評も、評論家の在り方を知るなど、私にとっては大きな影響があったと思う。

ご冥福をお祈りいたします。


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