最近見たもの、聴いたもの(18)


2000年5月25日アップロード


2000.5.18.

Rands, Bernard. Canti Lunatici (1990), Canti del Sole (1982), Obbligato (1983). Carop Plantamura, soprano; SONOR Ensemble of the University of California, San diego; Bernard Rands, conductor. CRI CD 591.

1934年、イギリス生まれのランズは、解説によると、ダラピッコラ、マデルナ、ベリオの3人の作曲家を、最も影響のあった先生と挙げているのだそうだ。でも、「Canti Lunatici」「Canti del Sole」を聞いた感じ、アメリカの大学の現代音楽コンサートというと、こういうのが多いんだよなあ、と思った。無調音楽にしがみついているという印象。声楽は、無調の旋律の他に笑ったりシュプレヒゲザングになったり。どれも、特に目新らしいものではなく、「伝統」の継承ということでしかない。作曲技術の確かさは、認めなければならないだろうけれど。

一方、「Obbligato」は、トロンボーンと弦楽四重奏のバトルロイヤルで、こちらは互いの自発性が思わぬ面白さにつながることもあり、楽しめた。


2000.5.19.

大友良英 サンプリング・ウィルス死滅前夜 Extreme XCD 021

時々ふと聴きたくなるCDの一つ。最初は取扱説明書にしたがっていろいろ遊んでいたが(さすがにディスクに油塗ったりはしなかったけど)、最近は面倒になって、CDをランダム・モードにして流している。でも、こうやってランダムにやってるつもりでも、全部のトラックを漏れなく再生しているCDという機械は、本当にすごいものだと感心。

Box of Pearls: Janis Joplin Collection. Columbia (Sony) C5K 65937.

久しぶりにロックのCD。コロンビアから発売された4枚のアルバム(それぞれにライブを中心とした未発売音源ボーナス・トラック付き)プラス特典CDという組み合わせ。ジョプリンについては、ドキュメンタリー映画やロック史ビデオで見て、一度ちゃんと聴いてみたいと思っていたが、ライブのノリはすごいものがあるなあ。今週聴いていた音楽が、みんな吹っ飛びそうだ。税込み43ドルは安い。

とりあえず聴いているアルバム『Cheap Thrills』は、ライブ録音も多く収録されていて、特に「Ball and Chain」には、息を飲む緊張感がある。未発売音源の1曲目「Roadblock」は、中間部でリズム・セクションが破綻しそうに。とりあえず最後まで通してるが、結構ヤケクソみたいなところがあって、面白い。いい時代だったんだなあ、この頃は。魂を感じる音楽。


2000.5.20.

Kurtag, Gyorgy (1926- ). Kafka-Fragments, Op. 24. Adrienne Csengery, soprano; Andras Keller, violin. Hungaroton HCD 31135

クルターク作品の代表的ジャンルは声楽曲だという。なるほど。しかし、このヴァイオリンと声楽という組み合わせはかわっている。ピアノよりも、なぜか絶対的な存在感がある。人間の声と同じように、線的な音提示が得意ということで(人間の重音というのは、ホーメイみたいな、共鳴を使ったものだからなあ)、お互いにぶつかりあう可能性も高いということからかもしれない。もちろん、アルペジオやピチカートによって和音を出すことは可能だが、それよりもずっと単音の方が弾きやすい。無調でいくには、便利なのかもしれない。それゆえ、声楽とヴァイオリンの絡み付きは、対位法的である場合も多いが、歌の方にシュプレッヒシュティンメをあてることで、ヴァイオリンの旋律的役割が増したり、歌と交互に出すことによって歌詞が生きてきたり、いろいろ工夫はされていると思う。声楽も、いろんな歌い方を要求されているが、決して技巧の遊びにならないところは評価できるだろう。

Bartok, Bela (1881-1945). Concerto, Violin, No. 2, in D Major, op. 19. David Oistrakh, violin; Moscow State Philharmonic; Gennady Rozhdestvensky, conductor. Period Showcase SHO-ST 233. LP.

オイストラフのヴァイオリンは、自然な力強さと流麗さが同居している(第1楽章のカデンツァは前者が火花を散らしている)。オケの反応もすこぶる積極的であり、決して無理せずとも、時に涼しく時に熱い、この協奏曲の良さが十分に発揮されている。

メモ

どんなにテクノロジーが発達しても、そのテクノロジーというのは、沈黙を作り出すことはできない。そして沈黙を聴くというのは、極めて人間的な行為に違いない。ケージの音楽で使われる、西洋の楽器の出す音は、沈黙と対比させるには、ちょっと大きいのかもしれない、おそらく日本人には。


2000.5.23.

Music in the Making: Shostakovich's Seventh Symphony. Bernstein Conducts a Rehearsal of the Boston Symphony Orchestra. The Center for Cassette Studies 010 6976 U. Cassette tape.

クーゼヴィツキー時代のボストン響による、タコ7第1楽章のリハーサル。主に第1楽章の、マーチとそれに続く部分が中心。若いバーンスタインはオケをしょっちゅう止め、テキパキと進める。叫びやうなりも並みではない。彼は、はっきりとした音をすでに頭の中で作り上げ、それをもとにオーケストラの問題点を直していく(これはどんな指揮者でもそうなのかもしれないけれど)。青少年オケ指導に見られるようなユーモアはあまりないけれど、耳のよさ、指摘の的確さには、驚かされる。音源の詳細は不明だが、オーリン・ダウンズが解説を入れている。おそらくラジオ放送だろう。


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