最近見たもの、聴いたもの(12)


2000年4月5日アップロード


2000.3.25.

Orlando Di Lasso. Villanelle, Moresche e Altre Canzone. Concerto Italiano; Rinaldo Alessandrini, director. Opus 111.

久しぶりに取り出してみた。このCDの中では、「やまびこの歌」、「一日中」、「愛しのわが君(マトナの君よ)」、などを学部時代に歌ったことがあるので、懐かしい。でも、私がやったときは、こういう面白い演奏はなくて、なんだか、随分生真面目にやっていたようだ。人によっては、これは「ハメはずしすぎ」になるのかもしれないけれど、アプローチの一つとしては面白い。「愛しのわが君」の英訳が、なかなか気がきいていて、ナイス(これ、日本語版があるのかなぁ。訳が見てみたい!)。各パート2人ずつの演奏のようだが、イタリア語のディクションがしっかりしていて、ギャグの面白さも分かっているという印象を受けた。とても楽しいアルバムだ。ラッソも随分いろんな音楽を書いていたんだなぁ、と思う。私の好きな作曲家の一人だ。それにしても、「やまびこの歌」など、昔のアルヒーフの音楽史レコードとは、雲泥の差。「一日中」は指揮もしたので、歌詞を漠然と覚えていたのだが、このような演劇調な演奏には驚いた("canta, canta"のところ!)。


2000.3.30.

Tylman Susato. Twelve Dances from the "Danserye" (1551). The Early Music Consort of Lonson; David Munrow, director. Tastement SBT 1080.

私のようにブラス・アンサンブルをやった人間にとっては、金管五重奏の「ズサート組曲」が有名。その中に現われた曲も、もちろんすべて収録されている。ズサート舞踊音楽のコレクションの録音にはピケットのもあるが(オワゾリール)、あれはずいぶんパワフルでエキサイティングな大編成。マンロウのは、それよりも小さい編成で、気取っているというか、雰囲気を大切にしているというか、品が良いというか。選曲数としては、ピケットの方が圧倒的に多いけれど、でも、これだって好きな演奏である。テンポや太鼓の入れ方、楽器の選び方など、比較してみるのも面白い。曲によっては即興がもう少しあってもいいかな(すごい多い曲も、一方ではあるのだけれど)。それにしても、もうちょっと、ジャケは面白いデザインにしてほしい。別にマンローの写真が嫌な訳じゃないんだけど。

Felix Mendelssohn. Violin Concerto in E Minor, Op. 64. Jascha Heifetz, violin; Royal Philharmonic Orchestra; Sir Thomas Beecham, Bart., conductor. EMI Classics 5 65191 2.

私のクラシック音楽の原点とも言える録音。小さいころ祖父が骨董店で買ってきたこのメン・コンの3楽章のSP盤が妙に好きで(なぜか第3楽章しかなかったりする)、何度も聴いていた(もう時代は完全にドーナツ盤とLPだったけど)。ハイフェッツは、後にRCAにも入れているけれど、やはりこの駆け抜けるような演奏がはるかに素晴しい。全曲24分というのは、ちょっと速すぎる感じもあるけれど、このスリリングさは、他の演奏にはないもの。彼独特のノン・ビブラートによる音色的なアクセントのつけ方も絶妙。


2000.4.4.

「ExMusica」が日本から届く。自分の書いたところはおいといて(よいしょっと)、なかなか内容の濃い雑誌に感激。『音芸』よりは、ずっと現在という感じがするし、創作という視点が、より濃厚になっている。特集記事も、立派な論文ばかり。これで1800円は、はっきりいってお得だと思う。すごい!

Mahler, Gustav. Symphony No. 7. London Symphony Orchestra; Michael Tilson Thomas, conductor. RCA Victor 09026-63510-2.

ティルソン・トーマスのマーラーの第9を、昔サントリー・ホールで聴いたことがある。本当のことを言うと、この組み合わせはあまり期待していなかったのだが、恐るべき集中力の演奏は、MTTのイメージを変え、演奏会翌日の『朝日』の記事を見て評論家というものを疑うようになったという有様。アメリカに来てからも、シカゴ響との第1がラジオで放送され、またもやびっくり(前半のライヒ--Four Sections、だったかな?--は退屈だったけど)。そして、この第7だ。American Record Guideは、やはり賛辞の評。納得できる。日本では、なぜかイマイチという声が聞かれているのだが、どうして???

Dvorak, Antonin. String Quartet No. 12 "American." Julliard String Quartet. Sony Classical SBK 48170.

随分前に、スメタナ四重奏団の同曲のライブ演奏をラジオで聴いたことがあったのだが、なぜかつまらない曲だと思っていた。しかし、このCDを聞いて、イメージが一新。なんてエキサイティグで力溢れる作品なんだろうと思った。単に親しみやすい旋律ではなく、やはり見事な構築力が光っているのだと思う。そして、この生命力。のんびりとしたスメタナ四重奏団のは、どうも私の趣味には合わないようだ(また、改めて聴いてみたいと思うけれど)。同時収録のピアノ五重奏曲も、特に第2楽章のようなうっとりとした雰囲気と、独特の緊張感のある他の楽章とのコントラストがいい。チェコっぽくない? でも、チェコらしさってなんだろう??? のんびり聴きたい人には、ちょっとスリルがありすぎ??? 私は純粋に「すごい!」だ。


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