音楽雑記帳(23)



作曲界の流行?
1998年10月16日


いま、アメリカのクラシック音楽界ではどんな音楽が流行っているのか、というお問い合わせをいただきました。 アメリカはすっかりミニマル音楽に席巻されているという噂もあるようです。

私はフロリダの大学におりますが、あまりミニマルな作品は聞きません。 数年前、フィリップ・グラスが学校に来ましたが(彼はライヒよりもずっ と人気がある)、その時久しぶりにミニマルな曲を聴いたな、という印象 を持ちました。

#サキソフォーン四重奏のための協奏曲かなんかだったと思うのですが、
#退屈な作品でした。妙にクロマティックしてたなぁ。

友人に作曲科の学部生がいますが、彼は室内楽中心に書く、ショスタコ・ ファンなので、作風も、調性・無調を渡り歩くようなものです。先生は ジョン・ボダというのですが、その人は、生徒がどんな音楽語法で書いて もOKなんだそうですよ。先生自身は調性のある曲を昔から書いているみ たいですけれど。

先生には、他にラドニスラフ・クービックがいますが、彼は、前衛路線 じゃないかな。Col legnoからCDがでているはずですが。

今、アメリカで流行している音楽といいますと、私の印象では、グラスや アダムスといったミニマル、ポスト・ミニマル、コリグリアーノやハービ ソン(彼は今フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』を題材にし たオペラを作曲中)、ロックバーグといった、折衷主義・調性復活組でし ょうか。アメリカの20世紀音楽の教科書では、このあたりが、「ポスト・ モダン」と言われているようです。先日のラジオ放送では、「作曲家は再 び聴衆に向かって書き始めている」、などという発言もあり、おもわず考 えこんでしまいました。

その他、エレン・タッフェ・ツヴィリッヒとかトバイアス・ピッカー、マイケル・トーキーなどが、割とラジオに乗っていると思います。

ちなみに、この夏、ドミニク・アルジェントの<モロッコからの手紙> がうちの学校のオペラで演奏されます。これも、やっぱりネオ・ロマン かな。

ところで、日本でアメリカの現代音楽といいますと、ケージやライヒ、フェルドマン、という感じでしょうか。

アカデミックな世界でも、とりあえず、ケージはよく研究されています。 研究書もケンブリッジ大学出版からでてますしね。教科書でも、何かと 話題です。

しかしフェルドマンの扱いというと、驚くほど過小です。もちろん大都市 のCD屋に行けば、それなりに置いてありますが、アカデミズムの中では、 図形楽譜の人、とか、ケージ一派の一人、くらいの軽い言及です。

フェルドマンは、むしろドイツでの受容が盛んで、ケージと組んでやった ラジオ番組Radio Happeningsや、フェルドマンの文章をあつめたEssays も、すべてドイツの出版社からでていまして、アメリカでは入手困難なん です。ケージのメーリングリストでは、このあたり、話題になっていまし たが。

あ、そうそう。アメリカで出版されたフェルドマンの本も一冊ありました。 DeLioとかいう人の編集ですが、なんだか難しい分析ばかりで、面白くなか ったなぁ。

そもそもフェルドマンはアンチ・アカデミズムの人だったようですね。作 曲なんて教えられるもんじゃないと。それでも大学にはいたようですが。

(以上、20世紀の音楽(エンジョイ派)・英文メール 投稿記事の改訂、98.1.25.アップロード)



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