タン・ダンの音楽


"Bitter Love" from the Peony Pavilion.
 
イン・ホワン(ソプラノ)、ンチカ・オーケストラ、ニューヨーク・ヴィルトゥオーゾ・シンガーズ Sony Classical SK 61658

民族楽器と電子楽器の響き、ベルカントのソプラノとグレゴリオ聖歌風の斉唱。気分的にはエスニック系ニューエイジ路線プラスアルファといったところか。これを「クラシカル」の分類に入れるには抵抗を感じるが、作り手の方は、「ゲイジュツ」音楽のつもりだったのかもしれない。いや、確かに日常以上のものがあることは確かだが、それは別にゲイジュツ音楽でなくてもいい。わざわざこれを、ゲイジュツにする意味とは? クラシックのジャンルの枠組みを広げてくれているのだ、と好意的に解釈できなくもないけれど。東西の融合…か。

アメリカで現在、こういう音楽が芸術の新しい動きと認知されているのには、一体どういうメカニズムがあるのだろう? 調性音楽が政治的に排除されてきたことに対する反動なのだろうか? アカデミズムにおける「植民地主義終結」後の、上からの「世界音楽」の包容だろうか? ものすごいわざとらしいものを感じてしまうのは、どうしてだろう? 作曲家の方はものすごく真摯にやっているつもりなのだろうけれど。調性音楽の現代的な方向づけのために、ポピュラー音楽をいたずらに使うのはなぜだろう? 20世紀の調性音楽はクラシックにも豊かに花開いていたはずなのに。この作品を聴くのは、ポピュラー音楽の聴衆なのだろうか? いや、それならば「クラシカル」では発売しないはずだ(?)。分からない。(2001.1.26.)


交響曲1997年《天・地・人》
 
ヨー・ヨー・マ(チェロ)、タン・ダン指揮香港管弦楽団 他 Sony Classical

ニューヨーク在住の中国系の作曲家。様々な鐘、京劇の響き、太鼓など、中国的な要素が明確に現れている部分や、より近代の中国のクラシック音楽(メロウな旋律をつかった大オーケストラの作品を想像させるもの)、さらには彼がアメリカで習ったと思われる、前衛的な響きなどが混在している。一聴して感じたのは、この作品がどのような聴衆に向けてかかれたものであろうか、という疑問であった。「企画モノ」としての価値はあるのかもしれない。(1999.9.23.)



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