レオ・ソワビー 北国から:管弦楽のための組曲
オットー・リューニング ウィリアム・ビリングスの賛美歌による前奏曲
            2つの間奏曲


ディアン・ディクソン指揮ウイーン交響楽団
Desto DST-6429 (D-429 [モノラル]) (LP)

ソワビー作品は、題名からも察せられる通り、管弦楽法の妙技と和声の豊かさを生かした標題音楽。ハンソンの「北欧的」の響きに通づるところもあるが、音色は明るめで、第1楽章(「森の声」)など五音音階を使った箇所もあり、映画音楽の一部を聴くような雰囲気もある。第2楽章(「小滝」)は、神秘的な雰囲気。管弦楽の響きは、ラヴェルやストラヴィンスキーの影響も感じられる。第3楽章は「バーント・ロックの小さな池」と題されており、静的で幸福な情感を音楽的に表現したという。ゆったりとした旋律に、オブリガートや分散和音が柔らかく織り合わされる。第4楽章は「きらめく大海の水」。これまでの楽章に比べて、和声は19世紀的になるが、色彩の豊かさとスケールの大きさに圧倒される。作品全体としては、一般にも受け入れやすいだろうから、改めて、良いオーケストラが取り上げてくれたら、と思う。

カップリングは、オットー・リューニング作曲の<ウィリアム・ビリングスの賛美歌による前奏曲>と<2つの間奏曲>である。現在はもっぱら電子音楽のパイオニアとして知られているリューニングだが、アメリカ的な題材に根差した素朴な作品も書いている。<前奏曲>は、弦楽と木管楽器を中心の、こじんまりとした趣のある端正な音楽である。ビリングスの、どことなく素人臭い賛美歌が(会衆が、教会や外で愛着を持って歌ったもので、「芸術音楽」ではないのだろうが)、独特のアメリカ的哀愁を醸し出している。冒頭の木管合奏の部分などは、植民地時代のオーケストラの響きがうまくでている(模倣したのか?)。クライマックス近くには、フューギング・チューンならぬ、フゲッタも現われて、リューニングが伝統的な音楽語法に習熟していたことを示している。そして、冒頭に提示された賛美歌が簡素に、しかし印象深く曲を閉じている。アメリカオケの演奏会ならば、ちょっとしたアクセントにもなりそうな、愛国的で楽しい作品だろう。

<二つの間奏曲>(1935)の第1曲目は、前の作品に比べると、ややベートーヴェン風の「押し」がある作品。第2曲目は、それよりはモダンな響き、しかしこれにも、特別アメリカ的なものはない。

解説によると、録音は、もともとモノラルであったのを電気的にステレオにしたという。しかし、やたらと音が右に寄っているのはどうしてか。Destoのオリジナルは、おそらくAmerican Recording Societyの50年代のモノラルで、音質は良くないものばかりだ。レコードの盤を見ない限り、演奏者が分からないのも困る。(99.11.19.)



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