スーザ・オリジナル(ジョン・フィリップ・スーサ作品集)

米国海兵隊軍楽隊 (アメリカ海兵隊バンド)
Altissimo! 75442255582 (vol. 1)、75442255502 (vol.. 2)、
75442255662 (vol. 3)、75442255642 (vol. 4)
Naxos Music Library (vol. 1)→http://ml.naxos.jp/album/75442255582
Naxos Music Library (vol. 2)→http://ml.naxos.jp/album/75442255502
Naxos Music Library (vol. 3)→http://ml.naxos.jp/album/75442255662
Naxos Music Library (vol. 4)→http://ml.naxos.jp/album/75442255642


アメリカの軍楽隊は、おそらく全米でも最高レベルのアンサンブルであ り、隊員になるためには申し込みをして、「空き」ができるまで、数年間も待たされるという。

各軍楽隊の録音は、教育や公共福祉のためと名打たれており、基本的に「非売品」である。アメリカ国内では公立図書館や大学図書館にそういったCDが見つけられる。NHKのFM放送番組「ブラスのひびき」では、アメリカから持ち込まれた非売品のLPやCDが時折紹介されていた。海兵隊に限らず、空軍や陸軍、沿岸警備隊など、常にファンを魅了してきたが、とにかく入手が困難なのである(中古レコード店に流れることもあるが)。

しかし、ナッシュビル(といえば、ついカントリー・ミュージックなのだが)にあるAltissimo! という新鋭レーベルは非売品であった米国軍楽隊の録音の一般発売を始めた。その中でも、アメリカを代表する作曲家、スーサの作品を海兵隊軍楽隊が演奏した3枚のCDは、特に吹奏楽ファンならずとも、注目したい物の一つ。アルバムタイトルに「オリジナル」とあるのは、米国海兵隊が、まさにスーサを通してレベルのアップをはかり、全米をツアーし、スーサ自身も名行進曲を残したということに由来しているに違いない。スーサがマーチを作曲するときに描いていたオリジナルのバンドということなのだろう。

第1集と第2集のCDには指揮者がクレジットされていないのだが、ジョン・ブルジョワー時代の録音を中心に取られているような感じがする。CDになってからも、スーサ作品はかなり録音されてはずなので、それらを編集したのではないだろうか。または、LP18枚の全集から取られたということも考えられる。

内容は行進曲だけでなく、ポロネーズや組曲も入っており、ちょっと気のきいたスーサ選集となっている。第1集は海兵隊の公式マーチ「忠誠」(Semper fidelisというラテン語のタイトルだ!、これは「Uncommon Valor」というアルバムから取られたのかも)から始まり大半はマーチ。<キング・コットン>と<ワシントン・ポスト>以外はあまり知られていないが、演奏が優れており、聴き通すこと自体には何の問題もない。威厳があり重厚さもたっぷりある海兵隊の演奏を聴いてしまうと、他の団体の演奏がみんなヤワに聞こえてしまう。第1集の最後には、1890年録音の<ワシントン・ポスト>も収録されている。冒頭に曲目を告げる(スーサの?)声が入っているが、雑音の彼方から聞こえてくるその叫び声のようなものには、時代を感じる。この時代だと、やはり筒型のレコードなのだろうか。しかし1890年というのは、全録音史上でもかなり古いのではないだろうか。

第2集は、ライブ録音による<星条旗よ永遠なれ>からスタート。コンサートのアンコールの雰囲気で、拍手あり手拍子あり。どうしてこれからCDを始めるのかいささか疑問なのだが、とりあえず一番馴染みのものということか。最後の<雷鳴>(1896年録音)まで、あまり有名な曲はないが、選曲のバラエティーに富んでいるとは思う。オペレッタの抜粋、組曲も含まれている。おそらく第1集よりも冒険したものなのだろう。ドラムによるリズムの刻みが聞こえない時間も多い。ワルツもある。

第3集になると、アルバート・シェッパーという指揮者が明示されるようになったり、ライナーが充実してきたり、カタログ請求のハガキが入っていたり、Altissimo!も商売が乗ってきたのかな、という印象を受ける。それまではただジャケット付けてとりあえず売っていますという感じだったから。演奏としては、前2作に比べて、やや洗練さが欠けるきらいもあるが、やはり安定したアンサンブルであり、行進曲の醍醐味は充分だ。<美中の美>、<海を越える握手>、<士官候補生>、<自由の鐘>、<コーコランの候補生>など、こちらは聴いたことのある曲も多く収録されている。

近日、この選集に加えて、ベスト盤も発売されている。また、Altissimo!はオンラインでCDを直販している。URLは、http://www.militarymusic.com/。筆者も実はオンラインで3枚のCDを購入した。「会社が存続するのはお客様のお陰でございます」と肉筆サイン2つが書かれたオレンジの紙が入っていた。これからCDが売れて会社がもっと大きくなると、こういうのもきっと付いてこなくなるだろうな、と思う今日この頃である。(99.9.25. [執筆当時は4は未発売]、15.3.10. 音盤データ修正&リンク付加。)


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