ウィリアム・シューマンは1930年代末頃から人気を得てきた作曲家である。彼のアメリカらしさというの は、露骨な民謡のアレンジなどではなく、独特のリズムをきかせたヴァイタリティー、そして無調和声と古典的形式の生真面目な融合でなされているように思 う。2楽章形式のヴァイオリン協奏曲の第1楽章は、不協和音による緊張感がうまく使用され、第2楽章ではフーガをつかった堅実さが見られるといったところ だ。CDを聴いた感じだと、爆発するような力強さ、息を飲むような展開の第1楽章は見事であるが、第2楽章のフーガの始まってからは、やや力尽きたという 感じもなくはない。しかし最後はなんとかねじ込んで終わらせたようで、かなり楽しんで聴くことができた。同時収録は《ニュー・イングランド三連画》とアイ ヴズの《「アメリカ」による変奏曲》。前者は、やはり作品にぐいぐいと聴き手を引っ張ってくる辺りが見事であり、アイヴズ作品は、からみ合う旋律がバラン スよく、見通しよい鳴らせ方。また曲の聞かせ所を分かっているという印象を持った(テンポは遅めの設定)。指揮者の貢献度が高いとは思うが、オーケストラ の機能性も抜群。ナクソスのアメリカ音楽シリーズでは出色の出来。推薦する。(01.6.10.) |
シューマンの出世作。ボストン交響楽団の音楽監督、セルゲイ・クーゼヴィツキーがアメリカ音楽を介したコンサートを開く時に委嘱され
た。冒頭の3つの音は、シューマンが子供の頃、公園でお互いに呼びあうときに使われたかけ声「ウィ・オー・キー」だという。古典的な作曲技法に長けていた
シューマンらしく、中間部はがっちりとしたフーガで書かれている。終始スピード感あふれる秀作である。 バーンスタインはこの元気いっぱいの管弦楽曲を、ものすごいテンションで演奏している。オーケストラのパワーも技術も不安定な要素がなく、そのキレっぷり に圧倒される。 同時収録曲は、コープランドの《アパラチアの春》(大オーケストラ版の、ちょっと重めの演奏)、バーバーの《弦楽のためのアダージョ》、自作の《キャン ディード》序曲である。(01.5.9.改訂) |
いわゆる「世界初録音」。1940年というから、作品が初演された次の年の録音ということになる(11月8日、RCA
18511、matrix
CS057502/3)。シューマンの《アメリカ祝典序曲》(ジャケットには《大学祝典序曲》とあるが)の他に、アメリカ音楽としては、チャドウィックの
<ノエル>(《シンフォニック・スケッチ》の第2楽章)などが入っている。詳細は以下。
Frescobaldi, Toccata; Two Dutch Tunes Of The Sixteenth Century; Handel, Prelude and Fugue in d; Weinberger, Czech Rhapsody; Liszt, Hungarian Rhapsody No.6; Mussorgsky, Love Music From 'Boris Godunov'; Scriabin Two Etudes (Op.2 No.1 in c#, Op.8 No.12 in d#); Lecuona, Andalucia; Chadwick, Symphonic Sketches: Noel; Lee, Prelude And Hula; Howe, Stars; American Festival Overture. シューマンの演奏は、特に最初の「急」の部分など、多少オケが頼りないところもないではないが、全体としては、タイトに仕上がっている と思う。筆者は以前、SPから編集したテープをラジオで聴いたが、編集したところがもろに分かって、このCDはどうかな、と思っていたのだが、うまくつな がっていた。ノイズも少なくなっている。ただ、この曲の頭だしを入れた場所が遅かったようなので、直接この曲のトラックから聴くと、曲の最初の一音が ちょっと欠ける。ちょっと戻して聴く必要がある。(02.1.26.) |
第3交響曲は1941年1月4日に、ニューヨーク州ラーチモントにあるシューマン宅において完成され、同年の12月17日に、献呈元であるセルゲ イ・クーゼヴィツキー指揮ボストン交響楽団によって初演されている。1941-42年シーズンに演奏された最も優れたアメリカの管弦楽作品として、ニュー ヨーク音楽評論サークル初の年間賞を受賞し、また1950年にはウォルター・W.ナウンバーグ財団によるアメリカ作曲家賞も受賞。
曲は2つの部分から成っていて、その各々が更に2つのセクションに分けられる。第1部は、パッサカリアとフーガ、第2部はコラールとトッカータである。 シューマンの古典的形式への関心、特にバロック時代の形式への回帰ということでは、20世紀前半の「新古典主義」の流れを組むともいえる。
もちろんこの作品におけるシューマンのバロック音楽形式は、文字通りの応用ではない。パッサカリアとフーガにおいては、どちらも冒頭に提示された主
題が様々な楽器により半音ずつ高い音で提示され、それらが堆積することによって曲が展開する。コラールとトッカータは、主題が変奏曲風に繰り返されるのが
メインとなっている。コラールやトッカータというジャンル名は、それらからイメージされる曲趣を表わしているのかもしれない。
(1)レナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルハーモニック
(a)独Grammophon 419 780-2
(b)米Sony Classical SMK 63163(1961年録音)
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バーンスタイン新旧の録音では、DGの方が旋律が堆積していくことによって構築される効果が見えてくるし、全体のドラマの組み立て方も 良く分かる。一方ソニー盤は、一部アンサンブル、特にリズムのかみ合いの悪さから、曲を決定づける推進力が少々欠けることがある(泳いでしまうという感じ だろうか)。しかしコラールの部分は比較的よく咀嚼(そしゃく)されているとは思う。ソニー盤の良さは、バーンスタイン指揮のシューマンがもう2曲聴ける こと。弦楽のための交響曲(第5番)(これも名曲!)と第8番だ。どちらの盤も、バーンスタインのドライヴの効いた演奏が楽しめるが、より洗練された解釈 を求めるならDG盤ということになるだろう。 |
バーンスタイン旧録のLP。作曲家シューマンが、生前、なかなかの影響
力を持っていたことを感じさせる。収録作品は交響曲の第3番と第5番。第8番は別のLPとしてリリースされた。(04.2.22.) |
(2)ユージン・オーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団 米Columbia ML 4413(LP)
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1951年3月11日録音の、モノラルLP。第3交響曲の商業録音としては、最初のもののようだ。しかし1960年に廃盤になって以 来、再発売もない。 LPの両面に同曲のみを収録した贅沢なカット。 実はこのLPを入手するまで、ずっと新旧のバーンスタイン盤で慣れてきたところがあって(シカゴ響Boxのスラトキンのは聴いていな い)、最初は彼の演奏 との違いばかりが耳に入ってきた。またオーケストラの技術もパワフルなニューヨーク・フィルほどなくて、シューマン作品には多少辛いものを感じたのも正直 なところ。しかし何回か聴いてみると、少しずつオーマンディの解釈が解きほぐされてくるようではある。バーンスタインの演奏をもっと忘れることができれ ば、より容易に受け入れることも、あるいは可能になるのかもしれない。(02.6.15) (02.7.5. 追記)だんだん耳が慣れてきたのか、この演奏も気に入るようになった。ライブでこのくらいの演奏が聴けたら、かなり満足すると思う。 |