ガンサー・シュラー:2枚の絵

S. O.さんによる寄稿です。ありがとうございます

シュラー(1925- )は、もともとホルン奏者だったのですが、次第に 作曲を活動を中心にするようになりました。しかし、作曲は殆ど独学 だったのですが、その後の作曲活動は常に米国でも非常に重要なもの でありました。また、いろいろな大学で作曲の教鞭を執り、1967-1977 年の間はニューイングランド音楽院の院長を勤めています。そして、 指揮者の小沢征爾と協力して、長らくタングルウッド音楽祭を主催し ていますし、彼の薫陶を受けた作曲家は世界中に多数います。(例え ば、現在イギリスで最もめざましい活動をしているO.ナッセンやM.タ ーネイジといった人達も、シュラーの門下です。)なお、彼も1994年 度のピューリッツアー賞(作曲部門)を受賞するなど、現在でも旺盛 な創作活動をしている、米国で最も重要な作曲家の一人です。

彼の活動として有名なのが、芸術音楽とポピュラー音楽の垣根を取 り外した「The Third Stream(第3の流れ)」を提唱し、活動したこ とです。彼自身は、セリエルなどの前衛的なものに、ジャズを組み合 わせた作品が多いようですが、ガーシュインのような概念とはまた違 って、より現代音楽の中にジャズを盛り込もうとしたところに特長が あります。

ちなみに、シュラーはジャズの研究家としても非常に重要な人で、 ジャズ界にも隠然たる影響力を持っています。例えば、フリー・ジャ ズのオーネット・コールマンが世間に認められたのも、シュラー(と バーンスタイン)が熱烈に支持したことが重要であったと言われてい ます。

さて、シュラーと吹奏楽についてですが、現在までに8曲、他に彼の 初期の傑作「金管と打楽器のための交響曲」などがあります。そのな かで、1964年の作品、金管4重奏と吹奏楽のための「Diptic」をご紹 介します。タイトルの意味は「2枚の絵」という意味のようで、2つ の楽章からなる約8分の作品です。

第1曲は、木管の不協和音による妖しい雰囲気で開始され、ソロ (金管四重奏)「金管と打楽器のための交響曲」に良く似た点描的な 音形が加わってきます。このソロはマイルス・デイビスを意識してい るような感じもするのですが、ジャズは殆ど意識できません。一貫し て、非常に現代的で緊張感の高い音楽が繰り広げられます。そうして ソロの掛け合いが高揚し突然終わります。(約4分)

第2曲も、衝撃音に続いて第1曲の続きのような雰囲気で開始され ます。高い緊張感は変らないのですが、後半になって、ようやくジャ ズの断片が登場しエキサイトします。しかし、程なくまた現代的な曲 想に吸収されてしまいます。そして、後にも2度ジャズが戻ってくる のですが、それも長続きせず、最後にジャズが断ち切られ、壮絶な不 協和音とともに曲を閉じます。

全体に、非常に緊張感の高い無調作品ですが、それだけに強く印象 に残る作品でもあります。特に、トランペットに過酷な高音を絶えず 要求してきますので、奏者は非常に辛いのではないかと思います。な お、この作品は初演後程なく管弦楽版へも改編されました。  シュラーについては、他に「Meditation」「On Winged Flight」な ど、魅力的な作品がまだまだあります。(99.1.16.アップロード)



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