スティーヴ・ライヒの音楽


初期作品集(アーリー・ワークス)
米Elektra-Nonesuch 9 79169-2
(筆者は日本語解説付きのを購入 ワーナー・パイオニア 32XC-84。
現在は番号が違うと思います。)
ナクソス・ミュージック・ライブラリー → https://ml.naxos.jp/album/603497092062

ミニマリズムを「最小限主義」と字義通りに解釈した時、それが最もうまくあてはまるのが、このCDに収録されたライヒの初期作品ではないだろうか。スピーチの断片や少ない音程で構成された短い動機が、反復という極めて単純な方法で展開されていくのがこれらの作品だ。しかし、彫刻のミニマリズムとは違うのは、その限定された素材と展開方法にも関わらず、結果として生まれた音楽表現に万華鏡のような味わいさえあるところだ。理論的に単純に見えるものが、極めて複雑な音響を生み出すことも興味深い。

扱われている主題について考えてみると、例えば《ピアノ・フェイズ》や《手拍子の音楽》については、極めて抽象的である一方、《イッツ・ゴナ・レイン》や《カム・アウト》になると、社会的・政治的メッセージも持っており、ジェフスキーなども、その威力に魅了されたようである。

後の編成のより大きな作品からみると、あるいは楽器法的な面白さには欠けるのかもしれない。しかしながら単純操作による音の交錯がこれほどまでに耳を引き付ける作品群も、そうそうないだろう。後の作品から入るか、あるいはこれらの初期作品から入るかによって、ライヒの捉えられ方は随分変わるのかもしれないが、ライヒの音楽経歴を知る上で、ミニマリズム表現の可能性を考える上で、このアルバムは、やはりはずすことができないのではないだろうか。歴史的名盤。(03.4.17.)


収録曲

Come Out; Piano Phase; Clapping Music; It's Gonna Rain.


ス リー・テイルズ
 米Nonesuch 7559-79662-2

ナクソス・ミュージック・ライブラリー → https://ml.naxos.jp/work/2371732
Reich 3 Tales このディスクについては、web-cri.comにレビューを書きましたので、ご覧下さい。トップページの左上のフレーム→「Disk Review」→「New Disk」の「09」と辿って行くと、読むことができます。(03.12.23.)


フェイズ・パターンズ、振り子の音楽、ピアノ・フェイズ、4台のオルガン
アンサンブル・アヴァンガルド
独Wergo WER 6630-2
単純な原理に則った初期作品は、近年の作品のように、すぐ親しめるようなタイプの音楽ではないかもしれない。しかし、《フェイズ・パターンズ》や《ピアノ・フェイズ》のように、音が時間を追って扱われる様子を追ったり、そのプロセスによって生み出される重なる音の組み合わせに思わぬ面白さがあることを、自ら発見したかのように思わせてくれるものもある(おそらくライヒが意識的に行ったであろうけれど)。

《振り子の音楽》は文字で指示がなされたコンセプチュアルな趣の強い作品だが、偶然性が入り込んでいるということでもライヒの他の作品とは一線を画している。マイクロフォンの口を下にしてぶら下げ、コードの一部を固定して上から吊るし、振り子のように左右に振らせるという仕掛け。当然振らせ始めの力の具合等によって、この振れが止まるまでにマイクロフォンがどのように振れるかは違うはずだ。さらにマイクロフォンの口付近にスピーカーを置くことによってハウリングが起きるので、それが結果として何度も繰り返されるようになっている。このCDでは3つのリアリゼーションが収録されており、それぞれ4分38秒、5分01秒、4分38秒という収録時間になっている。

《4つのオルガン》は2つの音発生源のずれとは違った仕掛けがなされている。ここではパルスに乗せて鳴らされる和音の移り行きを音の快楽とすることができるかどうかが、好みの分かれ目になるのかもしれない。

アンサンブル・アヴァンガルドの演奏は、どことなく、同時代的な緊迫感よりも、歴史的視点にたった客観性を感ずる。《ピアノ・フェイズ》は柔らかなタッチが美しい。(2005.9.13.、05.9.21. 誤字訂正・改訂)

作曲家リストに戻る
メインのページに戻る