ブルーグラスのフィドル奏者、マーク・オコーナーによるクラシック音楽家との共演。フィドル奏者の演奏法の特徴の一つに、弓を弦から離さないようにして細かいパッセージを切れ目なく奏するというのがある。この作品に、確かにそういう演奏法が見られないわけではないが、アクセントやリズムのせいか、とりたててフィドル風には響かない。どちらかと言えば、単純に、アクセスしやすい語法で書かれた現代のロマン派的ヴァイオリン協奏曲という趣である。もちろんカデンツァに時々みられるグリッサンドが、フィドル奏者を思い起こさせることはある。「フィドル」という言葉に囚われずに聴くべき作品だろう。約45分の大作である。
全体を通して、オコーナーの演奏技術は確かであり、終楽章に現われるヴィルトーゾ的な部分にも、全く不安はない。 カップリングは、コントラバスを含めた弦楽五重奏である(こちらもオコーナー作)。(98.6.24.)
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