エドワード・マクダウェル:組曲第2番作品48(<インディアン組曲>)

LP・CDの情報は本文の後にあります。

タイトルにもあるように、このオーケストラのための組曲は、アメリカ原住民(インディアン)の民謡を元に作られた標題音楽である。作曲者のマクダ ウェルは、この曲に使った民謡ををテオドール・ベーカー著の『北アメリカ土着の音楽』から採集した。同時代の作曲家ヘンリー・ギルバートによれば、マクダ ウェルはアメリカ原住民の民謡を「音楽的な美しさのために、しかしリジナルの旋律が紛れもなく野性味を充分に残している程度に」すべて変えてしまったとい う。

その甲斐あってか、作品が初演されたとき、ある批評家は「美しいがインディアン的ではない」と言い、別の批評家は「インディアン風だ、しかし美しくない」と言ったらしい。(98.5.23.改訂)

「インディアンの音楽」と聞くと、ハリウッドのウェスタン映画ででっち上げられた(「ドンドッドッド、ドンドッドッド」という)ドラミング や手を口に当てておたけびを上げるという音楽を想像してしまいそうだが、この作品は、そういう世界とは全く無縁である(そもそもまだ映画も無い時代 だ!)。使われる打楽器はティンパニーだけであり、オーケストレーションもきわめてオーソドックスだ。

レナード・バーンスタインは、青少年向けのコンサートのシリーズでアメリカ音楽を扱った時、ドヴォルザークの<新世界交響曲>の冒頭を取 り出し、<インディアン組曲>の冒頭がいかにそれと似ているかを指摘することによって、このマクダウェル作品がいかにアメリカ的でないかを述べた。しかし 彼の重要な誤りは、この作品がドヴォルザークの影響によって書かれたかの印象を与えたことである。なぜなら、この作品は初演こそ<新世界交響曲>よりも遅 くに行われたが(1896年1月23日ボストン交響楽団)、作品自体はドヴォルザークの9番以前(1891年から92年)に完成されていたからだ。

しかし、<インディアン組曲>にドヴォルザーク風の民族主義的な味わいを求めることは確かに可能であり、この作品がいかにインディアン的 なのかを実証するのは、ドヴォルザークの第9がいかにアメリカ的なのかというのと同様、それほど容易ではない。おそらく、マクダウェルの作品は、ヨーロッ パ音楽の語法を身につけたアメリカ人作曲家による、「インディアン幻想」というべきものなのだろう。より明からさまなバーバリズムを聞くには、もう少し後 の作曲家、ヘンリー・ギルバートを待たねばならないようだ。
 
(1)ディーン・ディクソン指揮アメリカ録音協会オーケストラ American Recording Society ARS-111 [LP]

モノラル録音。きびきびとしていて、オーケストラの反応もよい。第1楽章の叙情的部分が、若干速く感じられるかもしれないが、楽譜の指定に忠実に 行っているということのようだ。やや荒っぽいことは認めなければならないが、力強く、そして野性味があるという点では魅力的な演奏である。録音が古く、音 もそれほど良くないが、一聴の価値はある。

(2)ハワード・ハンソン指揮イーストマン・ロチェスター管弦楽団 Mercury MG 50082 [LP]

モノラル録音。おそらくハンソンは細かいところまで気をつかっているのかもしれないが、作品を遠い目に見ているようなところもある。もっと燃え上がる情熱が欲しいというリスナーも、あるいはいるかもしれない。(05.11.5.)

(3)ジークフリート・ランダウ指揮ウェストファリアン交響楽団 VoxBox CDX 5092→NML
現在のところ、この作品の唯一のCD。演奏にあまり生気がなく、面白さがやや半減してしまっている感じもあるが、多くの曲がカップリングされており、値段も安く入手できるという利点はある。

American Orchestral Musicというこの2枚組のCDには、上記作品の他、次の曲目が含まれている

 CD 1
Thomson, Louisiana Story (Suite)
Rorem, Symphony No. 3
William Schuman, Symphony No. 7
Hanson, Symphony No. 6
Schuller, Symphony 1965

音源は、以前TurnaboutのLPとして発売されていたもののようだ。

 (98.2.4、98.6.2.追記)


(4) 湯浅卓雄指揮アルスター管弦楽団 Naxos 8.559075→NML
(2014.12.10追加)



作曲家リストに戻る
メインのページに戻る