ジョン・ウィリアムズ (John Williams) の音楽


チェロ協奏曲
ヨーヨー・マ(チェロ)、ジョン・ウィリアムズ指揮ロサンゼルス録音芸術管弦楽団
米Sony Classical 89670

Concerto for Cell and Orchestra; Elegy for Cello and Orchestra; Three Pieces for Solo Cello; Heartwood.

映画音楽を書くジョン・ウィリアムズが人気作曲家の一人であることは間違いないし、その作風はおおむね知られていると思う。しかし、そのもっとも親しみやすい方の作風を考えてこのCDを聴くと、驚かれるのではないだろうか。私の第一印象は、「彼は映画音楽ではああだが、実はアメリカのアカデミズムを継承したかった人だったのだろうか」ということであった。特にその傾向の強いのがチェロ協奏曲や3つの独奏チェロための小品の両端楽章。後者の第2楽章は、オスティナートや旋律的ひねりをきかせたもので、相対的に聴きやすい。 一方、無調の作品がほとんどとはいえ、オーケストラの音色の微妙な変化に対する鋭敏な感覚は、やはり映画音楽を手掛けてきた彼らしいところでもある。しかしガンサー・シュラーやジョセフ・シュワントナーを知る人には、ことさらウィリアムズが特別な存在でないことも明らかだろう。

映画音楽作曲家としての彼に親しんだ人にとっては、《哀歌》と《Heartwood》が馴染みやすいかもしれない。前者は多分に叙情的だし、後者は特に架空の映像が作れそうで、直線的に音を追っていくだけでも面白い(なおこの作品冒頭には《春の祭典》第2部のクラリネットが出てくるようだ)。

それにしても、ウィリアムズの無調作品に見る作風の作曲家はアメリカには少なくないはず。もしそういう人たちが聴かれずに、一方的にこのCDだけが売れるようであれば、それも理不尽ではないだろうか。ウィリアムズのシリアスミュージック的側面を知るための資料としては充分面白いのだが。(02.3.26.)


ベスト・オブ・ジョン・ウィリアムズ&ボストン・ポップス (By Request. . . : The Best of John Williams and the Boston Pops Orchestra.)
Boston Pops Orchestra; John Williams, conductor.
Philips 420 178-2.

Olympic Fanfare and Theme; The Cowboys Overture, Excerpts from Close Encouters of the Third Kind; March from Midway; Flying Theme from "E. T."; Luke and Leia Theme from Return of the Jedi; March from Superman; Liberty Fanfare; March from Raiders of the Lost Ark; Yoda's Theme from The Empire Strikes Back; March from "1941"; Theme from Jaws; Imperial March from The Empire Strikes Back; Mission Theme (Theme for NBC News); Main Theme from Star Wars.

筆者はかつてボストン・ポップスの指揮者だったジョン・ウィリアムズをあまり評価していないのだが、彼の映画音楽は大変素晴らしいと思う。その鮮やかな管弦楽法はもちろん、記憶に残る旋律線と、抜群の構成力には、やはり圧倒させられる。映画音楽史的には、オーケストラを映画音楽に復権させた功績が無視できないと聞くが、なるほど『スターウォーズ』成功の一つの要因があのサウンドトラックであったことに間違いはあるまい。実際このアルバムにも最後に『スターウォーズ』のメインテーマ収録されているところを見ると、プロデュース側の、あるいは「売り手」側の意図が見えようというものだ。

アメリカ音楽を研究している筆者だが、ジョン・ウィリアムズのCDはほとんど持っていない。かつてFM放送でエアチェックしたものを除けば、このCD以外には、『スーパーマン』と『スターウォーズ』の入ったものだけなのである。あとは『E. T.』のサウンドトラックのドーナツ盤(!)くらいか。そのうち仕事として聴く必要が、あるいは出てくるのかもしれないが、とりあえずこれも、《カウボーイ》序曲をラジオ番組で使おうと買ったものであった。

ウィリアムズ作品の素晴らしさは感じているつもりだが、一方で、自演であっても演奏が気にかかるというのも本音。このCDの場合も、《自由のファンファーレ》は、ティンパニーが落ちているようなところもあるし、編集を間違えているのではないかと思う箇所もある。演奏ならば、キース・ロックハートの振ったものの方が、しっかりとしており、安心できる。他の作品の演奏は、この《ファンファーレ》ほどではないし、それなりに楽しいのだが、心からの感動を味わうよりも、映画を思い出し、ゴージャスなオーケストラの響きを味わったという印象が強い。

クラシックの枠組から抜けだせない、筆者の視野の狭さが原因なのかもしれないが、例えばエルマー・バーンスタインの《荒野の七人》のテーマソングに聴く、爆発したエネルギーを知ってしまうと、やはり、演奏によってもっと作品の旨味(うまみ)が引き出せるのではないかという心のしこりのようなものが残ってしまうのも確かだ。ジョン・ウィリアムズというブランドがあるためか、それを余計に感じてしまうのかもしれない。(01.4.01)


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